第175話

再度のログイン。すると遺跡の中がさらに賑やかになっているのに気が付いた。


「ルドさんお久しぶりです。」

「やぁやぁ、ルド君。あの研究所の時以来だね。」

「おら来てやったぞ。殴り甲斐のある奴がわんさか居るんだって?」

「又レイドに誘って貰えるなんて嬉しいデース!!」

「ふふふ、私の鞭が唸りましてよ。」

「おう兄弟!!声かけてくれてありがとな!!」


『深淵の森』のイルセアさん、『銀翼の風』のシルバー、『拳戦の宴』のバルド、『ピエロの喝采』のマルデ、『女王様の庭園』のクイン、『夢幻の龍星会』のキリュウが集まってくれていた。


「おう皆!!来てくれてありがとな!!それでメガネ達は?」

「今ログアウト中デース。」

「全員の時間調整してからログアウトしてますね。もうすぐ戻って来ると思いますよ。」

「すいませんお待たせしました!!」


多分、俺達がログアウトした後に皆すぐにログアウトしたんだろう。それほど時間を置かずに『英知の図書』と『森の人』の面々がログインしてきた。


全員が揃った所で作戦会議。合流してくれたギルドには浄化を絶やさない様にこの場所を守って欲しいとしか伝えていなかったらしいしな。


「あんだぁ?つまりは前と一緒って事か?」

「ルドさんが攻撃を全部引き受け、その間に殲滅。ルドさんが倒れたら浄化と結界で復活まで耐えるですか。」

「攻撃の密度が上がりますから。我々攻撃組の殲滅速度が重要です。即座に倒さなければ壁役のルドさんが持ちません。」

「あら?もう1人盾役を呼べばよろしいんじゃなくて?」

「盾職は今や希少職っすよ?クインさんには心当たりあるっすか?」

「ランダムでしか盾職が出てこないデース!!そこら辺に要る訳ないデース!」

「あら知りませんの?盾職を派遣するギルドがございましてよ?」

「あぁっ!!テッタの所か!!」


確かカイトも所属してたな。一応声を掛けたんだが来てないって事は忙しいって事じゃないのか?返事は無いけど。


「すみません!!ルドさんはここに居ますか!?」


そこに、聞き覚えのある声が飛び込んで来た。


「おうこっちに居るぞ!!」

「お久しぶりです師匠。お呼びにより『乱数の悪戯』参上しました!!」

「チャットで連絡くれれば良かったのに。」

「慌てて駆け付けたんで忘れてましたぁ・・・。」


テッタの後ろでは苦笑しているカイトの姿もある。おうおうおう、2人共装備がかなり立派になってるな。レベルも相当上がってそうだ。


「ルドさんお久しぶりです。」

「おう、カイトも久しぶり。元気してたか?」

「はい!!今回は恩返しのつもりで来ました!!頑張りますよ!!」

「頼もしいなぁ。よろしく頼む。」

「これで盾職問題が解決しましたわね。」

「今後の戦い方を打ち合わせしましょう。」


人数が増えた所で前衛、中衛、後衛に別れる事になった。前衛はもちろん俺とテッタ、それと近接戦闘職の面々だ。


特にテッタは自前で浄化も使えるタンクとして、後ろの連中がMPや体力の回復を行う際に俺とスイッチしてもらう。まぁ俺の方がヘイト稼げちゃうから、スイッチ自体は大変だけどな。それでも盾職だから時間も掛からずにヘイトを奪えるだろ。


攻撃班は俺がヘイトを稼いでる間は全力攻撃。テッタに壁が変わったら回復に専念する事になった。これもヘイトの維持力の問題だな。


挟撃されないよう、後ろにもある程度戦える人に居て貰う。100名を超える人数だからな、細かい指示なんて出してられないよ。浄化石は基本的に温存する方向で話を進めた。


「よっしゃ!打ち合わせも終わったし早速行くぞ!!」

「ウケン、何でてめぇが音頭取ってやがるんだよ!!」

「うるせぇ!!イベント掘り起こしたのは俺達だ!!文句言うな!!」

「あの方達を見ていると調教したくなってきますわ・・・。」

「クインさん止めて下さいね?それじゃあルドさん先頭をお願いします。」

「任された!!イルセアさんも魔法で援護よろしく!!」


遺跡の奥に向かう俺達、やっぱり魔物の数が増えていて圧力が凄い。けれどこちらも回復と戦力が増えたから安定して戦えている。


「テッタスイッチ!!魔法職がMPの回復に入るぞ!!」

「了解です!!『誘引の歌』ららぁ~♪」


お?テッタの歌唱力が上がってる。前に聞いた時より綺麗な声だな。だからなのか敵のヘイトがすぐにテッタに移っていった。


「ヘイトスキル強くなったなぁ。」

「スキルのおかげです!!<歌姫の喉>ってスキルで僕のヘイトスキルが強くなったんですよ!!それに歌全般でヘイトが稼げるようになりました!!」

「ほらほらギルマス。前に集中しなきゃ。『渦潮海流槍』」


おう、カイトも凄いな。槍から迸った海流に魔物がどんどん飲み込まれて行く。


「浄化よろしく!!」

「『光の歌』らんららぁ~♪」


俺と後ろの連中が回復している間、テッタもその成長をまざまざと見せつけてくれた。俺も負けてられないな!!


「よっしゃ交代だ!!師匠のいい所も見せてやる!!『こっちだ雑魚共!!』」

「さすが師匠だなぁ・・・。声出すだけで一発でヘイト持ってかれちゃった・・・。」

「テッタも負けない様に努力しないとね。いつか師匠を越えるんでしょ?」

「そうだね!!僕負けないよ!!」


壁役のスイッチにも慣れ、攻撃と回復を安定して行えるようになったら進軍速度は上がった。あっという間に最後の壁画まで辿り着いた俺達は最後の休憩を行っている。なぜならば、広場に続いていた通路にいつの間にか黒い靄の壁が生まれていたからだ。明らかにボスでしょこれ。


「さてと、やっとここまで来れたな。」

「長かったですわ。」

「補給部隊が物資を運んで来たからアイテムの心配はないっすよ!!」

「この先何があんのかワクワクするな!!」

「記録が大量に取れて満足です。」

「こらこら、記録にばかり気を取られては駄目ですよ?」


今はクエスト発見者で固まって話をしている。なぜなら戦闘バカのバルドが我先にとあの靄に突っ込もうとして弾かれた。イベント進行の為には初期メンバーが必要ですってな。今その弾き飛ばされたバルドは他のギルドのメンバーにボコボコにされている。これからボス戦だからちゃんと回復しておけよ?


「恐らく最初は初期メンバーで中に入り。残りの人は後から入って来れる様になるのでしょう。」

「レトロゲームならムービーが入る所ですわ。」

「どんなボスが出て来るのかねぇ?それにすんなり残りの連中と合流できると良いんだが・・・。」

「隊長駄目っすよ。そんな事言ったらフラグになるっす。」

「・・・・・・。」


クエスト初期メンバー+ローズで集まっているが、ローズがさっきからずっと喋ってない。戦闘には参加してたけどな、壁画を見てはどんどん口数が減っていった感じだ。


「どうしたローズ?何か悩みか?」

「ルド様・・・。声が・・・聞こえるんです・・・。」

「声?」

「はい・・・。あの壁画を見た時からずっと、壁画の絵が進むごとにその声が大きくなっていまして・・・・・。」

「なんて言ってるんだ?」

「私の事を巫女だと・・・。それにこの先に使命が、運命が待っていると。」

「使命に運命か・・・。」


まぁストーリークエストに関わってきている住民だからな。何も無いはずは無いし、これでルゼダの言う通り、ローズがこのクエストの最重要人物で確定したな。


「ルゼダの予想通りだな。何だ?不安か?」

「いえ、そんな訳では・・・・。唯、声にだんだん違う物が混じって来ていて・・。」

「違う物?」

「地の底から響くような声で、命を奪え、世界を正せと・・・。」

「それは瘴気の声ですわね。他には何か言ってませんの?」

「巨神に関わる者は全て壊せと言っています。村の方が心配で・・・。」


おっと、それはまずい。多分ここに居る瘴気はローズを追ってここまで来た可能性が高い。村の方が壊滅的なダメージを受ける前に向かってやらないと。


「さっさとここを片付けて村に行くぞ。ここで心配してても始まらないからな。」

「ルドさんの言う通りですわ。さっさと片付けて戻れば良いんですのよ。」

「村にも守り手が居るんだろ?だったらしばらくは大丈夫なはずだ。」

「そうっすよ。だからまずはこっちに集中っす!!」

「巨人族の村へは調査隊を派遣していますから、状況はすぐに解ると思いますよ。」

「館長が先手を打ってくれています。安心して下さい。」

「皆さんありがとうございます!!行きましょう!!」

 

毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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