第174話
瘴気汚染の状態異常対策出来る様になってからは早かった。敵に浄化が直接作用する事で攻撃力もスリップダメージ量も下がり耐えられる様になったからだ。
味方に浄化と回復の作用を及ぼすルゼダの『女神の息吹』を攻撃として使い。後は俺が耐えている間に殲滅して遺跡前の戦闘は終了した。
「ふぃ~。かなりきついなこれ。」
「お疲れ様ですルドさん。大丈夫ですか?」
「おう、もうHPは万全だ。特に消耗した物も無いしな。」
「メガネさん助かりましたわ。まさか状態異常を治癒するのではなく。浄化しないと行けないとは。」
「治癒魔法と浄化は違いますからね。呪いなんかも治癒魔法で治ってしまいますし余計に解らなかったでしょう。」
多分瘴気汚染っていうのは負の感情を消し去らないと治らない状態異常なんだろう。だから怨霊や怨念何かの類に効果的な浄化で治療出来たんだろうな。
「すみませんルド様・・・。私役に立てなくて・・・。」
「しあがまもった!!」(`・∀・´)エッヘン!!
「偉いぞシア。ローズもそんなに気落ちするな。俺と違ってローズは一度死ぬと取り返しがつかないからな。」
「ルド様・・・そこまで私の事を・・・。」
「違うからな?そういう意味じゃないからな?だからすり寄って来ないで?」
「はーい、ローズさんはこっちに来ましょうねぇ。」
「あーん!!リダさんの意地悪!!」
ローズは戦闘中、俺が瘴気汚染の状態異常になった事を確認してから後方で待機して貰っていた。大きなメイスを手に先頭に出て戦うローズをそのままにしていたら絶対状態異常になっていただろうからな。仕方ない仕方ない。
「次から瘴気汚染の対策も取れるから、戦闘に参加してもらうぞ?」
「お任せください!!この身を盾にしてでもルド様を守ります!!」
「いや守るのは俺なんだが?攻撃に専念してくれればいいから。」
「はいっ!!」
HPやMPの回復をしていると、ドロップ品の回収に行っていたウケンやメガネ達が戻って来た。
「おうお疲れ。」
「そっちもお疲れ。すまんな1乙しちまった。」
「気にすんな。こっちもルドが粘ってる間に殲滅出来なかったんだからよ。」
「メガネも状態異常対策助かった。」
「いえ、偶然気が付いただけですので。それよりもこれを見て下さい。」
そう言ってメガネがインベントリから取り出したのは真珠みたいな白い球。
「なんだこれ?」
「浄化石っすか?」
「ララさん正解です。これは浄化石。砕けば一定範囲に浄化を施す消費アイテムです。」
「これがあの黒い狼のドロップなのか?なんかイメージと違うような・・・・。」
「そうですね。恐らく正規のドロップはこちら何でしょう。」
そういってメガネがもう1つのアイテムを取り出した。そちらは黒い球で先ほどの浄化石とは反対の気配を感じる。
「これは?」
「瘴気石。砕けば周囲に瘴気汚染を広げる消費アイテムですよ。」
「・・・・それってまずくないっすか?」
浄化石と瘴気石。相反する2つのアイテムが在るって事は、つまりは使い合う場面が在るって事か?
「もしかして、瘴気側にも旅人が居る?」
「恐らくは。そして先ほどSNSでこのような物を見つけました。」
そこには赤落ち達がイベントでどこかを襲撃するという話が続いていた。そこに、勝利条件を満たす為にあるアイテムを使わなければならないと画像付きで紹介されている。その画像がどう見ても目の前にある瘴気石だった。
「大規模レイドとか思ったら敵味方入り混じっての乱戦なのか?」
「あらら、赤落ち達盛り上がってるっすねぇ。イベントに向けてあの黒系統の魔物を倒したら経験値取得2倍っすか。ドロップも確定と。」
「こっちは何にもないのに卑怯じゃねぇかな?」
「その分人数だけは居ますわ。逆に向こうは少人数でしょうから・・・。」
「ゲリラ戦法や遅延行為なんかを警戒しないといけないわけか。」
「とりあえずはアイテムの効果と予想される被害をSNSに上げました。それと浄化でこの瘴気石が浄化石に変化する事も確認済みです。」
「逆も出来そうなのが腹立たしいですわね。」
向こうは瘴気を旗頭に赤落ちやそちらに着きたい旅人の連合軍だと。じゃあこっちの旗頭は一体だれがやるんだ?
「それはルドさんじゃないっすか?」
「それは違うと思うぞ?旅人でしかない俺がそんな事出来るわけ無いしな。」
「そんなに決まってるじゃありませんの。今回のこちらの旗頭、それは・・・。」
「「「「「それは?」」」」」
「ローズさんですわ。」
「えっ?へっ?私ですか?」
突然指名を受け、自分の事を指さしながら右往左往するローズさん。まぁ村の危機をどうにかしようとしたら世界大戦に巻き込まれて、しかもあんたが大将!!何て言われたら誰でも動揺するわ。
「私にはそんな事無理だ!!」
「心配しなくても大丈夫ですわ。あなたはその為にここまで来たのですから。それに心配なさらずとも墓地の奥に行けばあなたの使命が何かは解りますわよ。」
ルゼダさんや?何やら神託を受けた巫女っぽい事言ってるけどそれはフラグ的な意味ででしょ?もしくはプログラム的にはとも言えるけども。
「まぁローズの事は置いといて、ここで敵が出て来たって事は奥にボスが居るんだろうなぁ。」
「イベント進行で非戦闘地域が戦闘地域に変わる。あるあるですね。」
「ボスが倒せなかったら遺跡の崩壊まで考えられます。皆さん気を引き締めて下さい。」
「よっしゃ!!遺跡に乗り込むぞ!!」
遺跡の中は案の定、外にいた黒い狼に似た魔物で溢れかえっていた。
「そう言えばあの魔物に名前は無いのか?」
「ミアズマっていう名前っす。又そのままな名前っすねぇ。」
「ミアズマ:狼、ミアズマ:スネーク、ミアズマ:ゴブリン。全部瘴気で出来た魔物ですか。」
「瘴気汚染に注意しながら奥に進むぞ!!浄化を常に意識して慎重にな!!浄化石は極力使うな、この後が本番だからな!!」
「汚染対策出来るんなら何とかなるだろ。耐性取れるまで粘っちゃる!行くぞ!!『こっちだおらぁぁぁぁぁっ!!』」
まぁ口ではそんな事言いながらも、遺跡の中にいるミアズマはかなりの数でして・・・・。狼の噛みつき、蛇の巻き付き、ゴブリンの攻撃ですぐに瘴気汚染に染まる訳だわ。
「くっそ!!こいつら、特にゴブリンからの汚染がひでぇ!!スリップダメージと最大HP削りが段違いだ!!」
「体を構成する瘴気の量で汚染具合が違うのでしょう。ルドさんへの浄化を密に!!」
「早く耐性を獲得してくださいまし!!MPが持ちませんわよ!!」
「そんな事システムに言ってくれ!!」
意気揚々と乗り込んだ所で、数に押されてなかなか進めない。遺跡まで瘴気で汚染されているみたいで進む為に遺跡も浄化する事になり余計に進めなかった。
その中で僥倖だったのは浄化石が大量に手に入った事。害虫駆除よろしく、目につくミアズマの魔物を倒しまくったお陰だな。イベントに使うだろう浄化石を山ほどインベントリに入れられたよ。
「ルドさん、もしかしてこの場所もレイド戦なんじゃないですか?1PT2ギルドでクリアできる難易度じゃないと思うんですけど?」
「リダもそう思うか?俺も薄々そう思ってた所だよ。」
「僕達が攻略できるのはルドさんっていう、どんなヘイトも稼ぐ盾職が居るから、回復のリソースを1人に集中出来るからでしょうしねぇ。」
「ルドさんという壁が居なかったら即全滅してますわね・・・。」
2枚目の壁画の所に来るまでかなりの時間を使った。そろそろ俺達はログイン制限時間に引っかかる。
「おう、こっちで攻略に協力してくれそうなギルドに声掛けたぞ。」
「私達の方も心当たりに声を掛けました。」
「俺も前に手伝ったギルドにチャット送った所だよ。」
奥に行くほど魔物の密度が上がってるからな。この先は今のメンバーじゃかなり厳しいだろ。だから俺も知っているギルドに声を掛けた。
「しっかし、ウケン達がこんなテントまで持ってるとはな。」
「俺達が一旦調査や冒険に出かけると何か月も街に戻らないのが普通だからな。その間の家になるんだから快適性を求めるのは当たり前だろ?」
俺達の目の前には10人ぐらいが入れるテントが壁画に沿って並んでいる光景が。俺達も自前のテントを設置したけど、それよりもかなり大きい。中には風呂や炊事場用のテントなんてものが在ってテントのバリエーションの多さに吃驚している。
「うちらはまだログイン時間残ってるっすから、先にログアウトしても大丈夫っすよ。魔物も浄化してるうちはこっちに来ないみたいっす。」
「長期戦になりそうですね。」
「この場所でこうなら。ローズの村じゃ一体どうなる事やら・・・・。とりあえず俺達は一旦落ちる。休憩終わったら即ログインするから。」
「交代でこの場所を守っとくから気にすんな。」
「ローズの事頼むな。それじゃあログアウトっと。」
壁画を見ながら何やらぶつぶつ言っているローズにも声を掛けてログアウト。さてどれくらい攻略に時間かかるかな?休み丸々潰れるかなこれ・・・・。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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