第176話
クエスト発見者全員が揃って扉の様になっている黒い靄に触れる。すると靄の中に体がズブズブと沈みこみ始め、全員が中に入る事が出来た。
靄の厚みはそこまで無く、入ったらすぐに広場に出た。変わっている事と言えば、広場の中心に黒い靄で出来た巨人が立っていた事だ。その巨人は上を見上げ、何かを剥がそうと必死になっている。だが、高さが足りずに天井に届いていない。
ミアズマ:ジャイアント HP 8千万
「うん、完全にレイドボスだね。」
「父上!!」
ボスの名前とHPを確認した所でローズさんが突然走り出したぁ!?咄嗟に止めようと手を出そうとしたんだけど体が一切動かねぇ。なんだこれ!?
「ルドさん落ち着いて下さいまし。多分これ演出ですわ。」
「いや、だからってほっとけないだろ。」
「私達も動けないんです。諦めるほかないかと。」
「ぼーっと見てるだけってのもつまらねぇ。お前はいつでもあの嬢ちゃん守れるように準備しとけ。」
「動ける様になったら即座に自分が確保しに走るっすよ。だから見守るっす。」
「記録が出来ないのが悔しい!!」
「ノートも落ち着きなさい。後で公式サイトでムービーとして確認出来ますから。」
ぐぬぬぬぬ!!だぁぁぁぁっ駄目だ動かねぇ!!とりあえず城壁と転痛の準備だ!!こうなると解ってたら最初から転痛だけでも使っとくんだったぜ・・・。
「父上!!私ですローズです!!お分かりになりませんか!!」
「UGAAAAAAAAA!!」
黒い巨人の足元にたどり着いたローズが声を掛けるが、巨人の方は全く其方に関心を向けず、天井に届かない事に苛ついているように見える。
「父上!!」
「GAU!?」
ローズが巨大化し、暴れる巨人を止める。突然自分と同じサイズになったローズに黒い巨人は驚くも、すぐに拘束を振り払おうと暴れ始める。
「落ち着いて下さい父上!!何故そのような姿に!!」
「GIIIGAAAAAAAAAAAAA!!」「きゃっ!!」
「GAAAAAAAAッ!!」
必死で止めようとしていたローズが力を込めた黒い巨人に振り払われる。倒れ伏したローズに向かって黒い巨人が拳を振り下ろした!!
「っ!?ここで動けるようになるとか運営は鬼畜かよ!!『城壁』『転痛』!!」
「すんませんっす!!巨人化してたら自分じゃ引っ張って来れないっす!!」
「戦闘組はあの黒い巨人の気を引け!!ルドがローズを連れて戻るまで回避優先でヘイトをこっちに向けるぞ!!攻撃貰うなよ!!」
ガゴンッ!!
城壁が砕かれその衝撃でローズがこっちに向かって吹っ飛んでくる。ってちょっと待て!?城壁が砕かれたんだったら俺のDEFじゃ耐えられないって事じゃないか!!
「巨大化」『うっしローズさんは確保した!!だけどあいつの攻撃俺じゃ耐えられない可能性が高いぞ!!』
「そこは装備の補正分に期待しましょう!!」
「バフを送っておきますわ!!『亀甲陣』『守護結界』」
「ひぃぃぃぃぃっ、急いでくださいっスーー!!このままじゃ持たないっすよー!!」
「くっそ!!体がでかい分逃げに徹しても当たりそうになる!!すまんが急いでくれ!!」
『こっちだこらぁっ!!』
がごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!
敵のヘイトを稼ぎ、殴りかかって来た黒い巨人の拳を真正面から受けずに横に逸らす。力を受け流したはずなのに盾からは鐘を突いたような音が響き、一撃でHPの半分が消し飛んだ。
『めっちゃいてぇっ!!しかも瘴気汚染のデバフ付きだ!!次の攻撃喰らったら死ぬ!!』
「『女神の抱擁』!!『浄化』!!」
「HP継続回復の薬っす!!うちらの虎の子っすから他言無用っす!!」
「馬鹿野郎!!戦闘もムービーになるから変わらねぇよ!!それよりルドのフォローもっと厚くしろ!!外の連中はまだ入って来れないのか!!」
「まだ無理みたいですわ!!」
「隊長がフラグ立てた所為っすよー!!」
出入り口にはまだ黒い靄が存在していて、うっすらと外に居る後続が何とか部屋に入ろうとしている様子が見える。だが彼方からでは入れないのか、1人もこちらに来ていない。
「何か条件が在るはずです!!ですが戦闘中では・・・。」
「館長!!あそこです!!あそこだけ前回来た時の記録と違います!!」
ノートが指さした先では、出入り口以外に何も無かった壁に、不自然に紋様が浮かんでいた。黒く輝くその紋様は前回来た時には無かった物だ。
「良く気が着きましたノート!!あれなら狙えます!!」
バン!!パリーン・・・・。
メガネが手に持った銃を紋様に撃ち込む。攻撃された紋様は砕け散り光が消えた。
「よしこれで「まだです!!館長まだあります。」なんですって!!」
最初の紋様が砕かれたのがトリガーだったのか、遺跡の壁に次々と黒い紋様が浮き上がり始めた。しかもその紋様は点いたり消えたりを繰り返している。
「この!!」バンバンバン!!
連続で銃を発射するメガネ。しかし光が消えた紋様には攻撃が通らないのか砕ける事無く光りを放ち始めた。
『光った奴から撃って行け!!消えてたら攻撃無効だ!!』
「ボス戦でミニゲームを仕込むなんてどういう神経してますの!?」
「ギミックボスの1つだったのでしょう。ルドさんもう少し耐えて下さい!!」
『ルゼダとララが回復してくれるから大丈夫だ!!しっかり狙え!!』
ガゴォン!!ガギィィン!!
相手の巨人が両手を使って殴って来る。同じ大きさになっている俺はその初動を見極めて盾で受け流しを繰り返していた。なんでかこれ以上デカくなれないんだよ!!あの紋様が原因だと思うがな!!
『クッソ!せめて瘴気汚染耐性が取れてれば・・・。』
「無い物を強請っても仕方ありませんわ!!『女神の抱擁』『浄化』!!MP回復薬をくださいまし!!」
「ハイっす!!あっまずいっすよ!!回復薬の在庫がもうほとんどないっす!!」
「あといくつだララ!!」
「後10本っす隊長!!」
なんてこったい。頼みの綱であるMP回復薬の枯渇が見えて来たってか。俺のダメージがそれだけデカいって事かよ。
「父上!!正気に戻って下さい!!」バガンッ!!
「GUUUUUUUUU!!」
ローズとウケンが懸命に巨人に攻撃するけど、やっぱりレイド用ボスだけあって全然削れていない。
『ウケン!!ローズ!!攻撃の初動で肩や腰に攻撃してくれ!!それで威力が下がるはずだ!!被弾しない様に気を付けろよ!!最悪浄化石を持ってる分使うぞ!!』
「あいよ!!」
「了解ですルド様!!」
このままダメージを受け続けたら後続が入って来る前にこっちがやられる!!その前に攻撃班には俺が耐えられる様に攻撃の邪魔をする事にシフトして貰った。
『そっちはまだかメガネ!!』
「もう少し時間をください!!数が減るごとに点滅速度が変わってタイミングを取るのが難しいのです!!」バンッバンッバンッ!!
「『火の矢』『光の矢』『氷の矢』数は減ってきています!!もう少し粘ってください!!」
粘れっつったって限度があるぞ!!まぁやるしか無いんだけどな!!
ガインッ!!ゴギンッ!!
クッソ!!相手も学習しているのか受け流しに対応してき始めている!!ウケンとローズのおかげでダメージが減っていたのにこれじゃ元通りだ!!
バガンッ!!バキィィィィィィィン!!
『しまった!!』
「ルドさんの盾が!!」
敵の攻撃を受け損ない、右手の盾が吹っ飛んでいってしまった。盾1枚分のDEFが下がり、受けるダメージ量が上がる!!
『ふんぬっ!!』バガンッ!!ガゴンッ!!
「回復が間に合いませんわ!!」
「薬もほとんど使い切ったっす!!」
一度死んでも大丈夫だが、この後の事を考えると保険として残しておきたい。根性スキルのおかげで即死ダメージを何度も耐えているがもうそろそろ限界だ!!
「GUAAAAAAAAAAA!!」ガキィィィィィィィィン!!
『くそっ!!ここまでか!!』
「ルドさん!!今浄化石を!!」
左手の盾も吹き飛ばされ、俺の武器は無くなった。俺に向かって黒い巨人が拳を振り下ろしながらニヤリと笑う。復活出来るとはいえ、盾が無い状態でこの後を乗り切る事は出来ないだろう。
ルゼダが浄化石を使おうとしているが間に合いそうにない。クエスト失敗、その文字が頭に浮かんだその時、俺の目の前に白い影が飛び込んで来た。
「師匠はやらせません!!」ガキンッ!!
「ルドさん間に合いました!!」
「さぁノート、私達も戦線に復帰しますよ!!」
周りを見回すと俺のピンチを見ていち早く駆け付けたテッタ。そして紋様を全て打ち壊したノートとメガネ。出入り口からこちらに向かって走って来る仲間の姿が見えた。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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