第173話

ローズの調べ物が終ったタイミングでウケン達の素材収集が終了した。戻って来たウケン達は全員万魔図書の入館証を手に入れたので、さっそく巨神墓地に向かう。


「埋めといた転移装置が役に立って良かったぜ。」

「もう一回埋めといたっすよ先輩!!」

「おうご苦労!!」

「しかし、ずいぶん素材収集クエストに時間が掛かったな?そんなに難しかったのか?」


簡易転移装置で巨神墓地に戻って来た俺達、ローズは突然の転移で目を回していて、リダ達が看病している。


「素材収取の為に婆の依頼を受けないと行けなくてな。それが又意地の悪い依頼ばっかりでよ。」

「あっちこっち行かされて大変だったっす。最後はどうしても依頼が達成できなくて店に戻ったらもう十分だとか言って素材を渡して来たんっすよ?それなら最初から渡して欲しかったっす!!」


あー、多分それはローズのイベントが進まないと先に行けない様に調整されていたんだろうなぁ。ご愁傷様です。


「ルド様、ご迷惑をお掛けしました。もう大丈夫です。」

「様は要らないって言ってるのに・・・。それより本当に大丈夫か?顔が真っ青だが?」

「慣れない転移で酔っただけです。すぐに落ち着きます。」


そうは見えんが本人が言ってるんだから良いだろう。後は自己責任って事で。


「よっしゃ!!とりあえず中に入るか!!」


俺達が巨神墓地の方に足を進めると、様子がおかしい事に気が付いた。まず墓地を守っていた兵士の姿が見えない。兵士が立っていた場所には何やら争った跡と血痕が残されていた。


「こりゃどうしたんだ?まさか盗掘か?」

「いえ、おそらく魔物です。これを見て下さい。あぁグロに耐性の無い方は見ない様に。」


メガネが居た場所には、体中を食い散らかされた兵士の遺体が横たわっていた。


「魔物の襲撃か・・・。こりゃ中にも居るな。」

「全隊員周囲警戒と戦闘準備!!戦闘パートの始まりだぞ!!」

「索敵系のスキルを持った人はすぐに使うっす!!もうここは安全地帯じゃないっすよ!!」

「どんな魔物が出るか記録してくださいませ。恐らくここで出てくる魔物は前哨戦ですがヒントでも在るはずですわ。」

「ノート、頼みますよ。私は戦闘に集中します。」

「任されました館長。」


俺達が周囲を警戒し始めたと同時に、森の中から真っ黒な狼が姿を現した。だけどその姿は何処かおぼろげで、体の一部からは黒い何かがゆっくりと空気中に溶けだしていた。


「ルド様あれです!!あれが禍の先兵です!!あれを見ておばばが私をこちらに寄越したんです!!」

「瘴気の魔物か!!何して来るか解らないから全員警戒しろよ!!巨大化ぁ!!」『おらこっちだ!!』


目から赤い光を放つ黒い狼が俺に向かって突っ込んでくる。俺は正面から襲って来た狼を盾で受け、側面から襲って来たものは体で受けた。


『げっ!?<瘴気汚染>の状態異常だと!!最大HPが減っちまった!!あとはスリップダメージだ!!』

「回復飛ばしますわ!!『清涼なる朝露』『女神の抱擁』バフも行きますわよ!!『亀甲陣』『守護結界』」


ルゼダが状態異常回復の魔法と体力回復の魔法を使った。減った体力は元に戻ったが、又HPがどんどん減っていくぅ!?それに最大HP減少も治ってないぞこれ!!瘴気汚染の状態異常は状態異常回復の魔法じゃ治らないのか?


『全員攻撃を喰らうな!!スリップダメージと最大HP量の減少は治癒魔法じゃ治らないぞ!!』

「そんな!!どんな状態異常も治るはずですわ!!」

「回復役はルドのフォローに回れ!!あいつが倒れたら俺達はおしまいだぞ!!一匹に集中して数を減らしていけ!!」

「情報収集を密に!!ですが攻撃の手は緩めてはいけませんよ!!瘴気汚染解除の方法を模索するのです!!」


唯一の希望として瘴気汚染で減る最大HP量は決まっているみたいで、一度状態異常になると何度攻撃を受けてもHP量は変わらなかった。だがスリップダメージの量は攻撃を受ける程に増え、がりがりとHPが持っていかれる。


『きっついぞこれ!!ダメージ量にDEFもMINDも関係無いみたいだ!!』

「『心与』!!駄目です!!HP量を増やしてもスリップダメージの方が大きい!!」

「何とか持ちこたえろ!!敵の数は減って来た!!」

「『大回転光波』!!こいつ等体の中に核があります!!そこを潰してください!」

「MP回復薬をくださいませ!!回復魔法に使う消費量が馬鹿になりませんわ!!」

「これを使って下さいっす!!」

「何とか突破口を・・・。しかし瘴気のサンプルが少なすぎて予測すら立てられない・・・。」


攻撃はすべて俺が受け止められているから仲間の被害は無い。けれど肝心の盾役の俺が全然役に立ってねぇ!!DEFでもMINDでも防げないHPを直接攻撃する敵にかなりの苦戦を強いられている!!


『くそっ!!すまん一回死ぬ!!ヘイトが分散するからルゼダは結界で防御してくれ!!』

「解りましたわ!!『聖域結界』!!皆さま結界の中に早く!!」

「くそっ!!すまねぇルド!!」

『こっちこそすまねぇ!!すぐ復活してヘイト稼ぐ!!それまで攻撃貰うなよ!!』


じわじわと減るスリップダメージに金剛巨人体の根性効果は意味が無い。俺はそのままHPが0になって死んだ。だがその死に方が通常とは違った。通常だとHPが0になった時点でその場で倒れ、復活のクールタイムが終るとポリゴンとなって消える。だが今回は体の端から黒く染まり、崩れる様に死んだ。まるで復活をさせない様に。


自分の死に際を確認して、無事復活出来るのか不安に思ったが俺の体はすぐに再生しその場で復活した。瘴気汚染の状態異常も死亡すれば治るみたいだな。


『それにしてもなんだ今の死に方は?』

「ルドさん無事ですの!?無事なら急いでくださいまし!!瘴気汚染は結界にも効果を及ぼしましてよ!!」

『マジか!!おらこっちだお前等!!』


ヘイトを稼ぎ、攻撃をこちらに向ける。するとまた瘴気汚染の状態異常に陥り、最大HPとスリップダメージが入る。敵の数が減っているがやはりこの攻撃は辛い!!


ルゼダの聖域結界を攻撃していた敵が全部こちらを攻撃し始めた。その時、結界を攻撃している敵を観察していたメガネがルゼダに何か提案しているのが聞こえた。


「ルゼダさん、『浄化』もしくはそれに近い技は使えますか?」

「突然なんですの?今使っている『聖域結界』も浄化に近い技の1つですわよ?」

「やはりそうですか・・・ではルドさんに『浄化』を掛けて貰っても良いでしょうか?」

「何か解りましたの?時間もありませんし早速使いますわよ!!『浄化』!!」


ルゼダが魔法を発動すると、俺の頭の上からきらきらとした白い光が降り注いだ。その光は俺の体に吸い込まれて行き、そして・・・・。


『『瘴気汚染』の状態異常が治ったぞ!!』

「どうやら正解の様ですね。」

「どういうことですの?」

「瘴気とは人の負の感情の塊です。ならば、その感情を拭い去る何かを使えば治るのではと思ったのですよ。まぁヒントは聖域結界に攻撃をして来たあの狼なんですがね。」

「結界を攻撃していた狼の牙が、結界に触れると崩れていました。恐らく身を削った攻撃だったのだと考察できます!!つまりは浄化が出来る魔法を使えば弱体化させられると考えた訳です!!これもバッチリ記録していますよ!!」


なるほどな、よくよく考えれば図書館にヒントは在ったのか。突然の戦闘と見慣れない状態異常でパニックに陥ってしまったんだな。冷静に分析していたメガネ達はさすがだ!!


『助かった!!これで耐えられる!!』

「ルドさんの鎧の効果でも若干の弱体化はされているはずです!!もう少しですから粘ってください!!」

『おう!!任せろ!!』

「おらっ!!あいつばっかりにいい所持って行かせるな!!俺達はどんどん殲滅するぞ!!」

「浄化を使える物はあの狼に直接使って下さい!!ダメージが入るようであればそのまま攻撃として使用。無いのであればルドさんの補助に使って下さい!!」

「浄化の効果確認!!浄化されると体積が減少する模様!!」

「記録と同時に攻撃にシフト!!森の人と協力して敵を叩きます!!」

「ルドさんは私が守りますわ!!3人は敵の殲滅に!!直接触れない様にして下さいまし!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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