第172話
ローズさん話によると、巨神の亡くなった場所には今も巨神の血で出来た池があり、巨人たちはそこを聖地として守っているんだそうな。
「我々大地の民はその池から生まれたと言われているのです。そこに他の種族が入り込み、独占しようとしました。我らはその独裁者と戦う為に一致団結し、追い払ったのです。」
「それは最近の話なのか?」
「いえ、かなり昔の話だと聞いております。その時からお山は我々巨人族の住居となりました。とても平和で、落ち着いた場所なんですよ?」
なるほど、その時に巨人族が一か所に集まったから他の場所では見なくなったのか。聖地を守るっていう使命の為に一致団結してりゃ、同一種族で争いは起き難いし平和にもなるわな。
「でもそんな平和な場所に今禍が降りかかろうとしていると?」
「はっ!?そうでした!!早く図書館に行かなくては!!」
「待て待て待て!!行ったって何について調べるのかわからねぇとどうしようもねぇだろうが!!」
「それはおばばから聞かされております!!怨念もしくは邪気についてです!!」
怨念と邪気?誰かに呪われてるとか、恨みを買ってるとかなのか?
「私は急いで調べて戻らないといけないのです!!あっもし何か調べ物をするなら一緒にどうです?万魔図書館は大地の民にしか入れない秘密の図書館なんですよ!!」
「すまん、そこはもう入った。」
「さすが巨人様です!!」
なるほど、本来であればここから一緒に図書館に入って調べ物をするんだな。
「ちょっとよろしいですか?」
「なんでしょう?」
「先ほど調べる物は怨念や邪気と言ってましたが、瘴気じゃないんですか?」
「へっ?」
突然のリダの発言に驚いて固まるローズさん。傍で聞いて居た俺もなんでその結果に至ったのかが全然分からん!!聞いてみよ。
「ちょっと待てリダ。なんでそう思ったんだ?」
「これってストーリークエストですよね?それでルドさんが巨人だったから色々イベントをスキップしたと思うんですよ。」
「そうなのか?」
「恐らく?」
お互い頭に疑問符を浮かべて首を捻っていると、さっきまで話を聞きながら何かを考えていたルゼダが、顎に手を当てたまま俺達の前に出た。
「リダさんが言っている事は間違いないと思いますわ。フラグの観点から言わせて頂くと。まずはこの女性を助けて万魔図書に赴き、図書館からの依頼を熟して正規の入館証を入手。そして盗難に遭った絵本の捜索と絵本の解読が流れだと思いますの。」
なるほど、確かに言われてみれば確かに。ストーリークエストっていわばお使いクエストでも在る訳で、色々な所を回らされるってのはあるだろうな。
「でも私達はすでに絵本は入手済み。正規の入館証もルドさんがすぐに入手。ストーリークエストの目標も巨神墓地に行くことに変わっていますわ。ではその中で新たに判明した事と考えると巨神伝説ですわよね?」
「まぁ関係してそうな大きな事って言えばそうだな?」
「このストーリークエストに大きく関わっている巨神伝説。その中で巨神は何に倒されたか覚えておりまして?」
「あの絵本と壁画を合わせて考えると瘴気の槍か?・・・・あぁなるほど。」
「つかぬ事をお尋ねしますが。ローズさんの村に襲い掛かる禍は、巨神が亡くなった聖地で起こるのではありませんか?」
「そうです!!なんで解ったんですか?」
確か大地の民は血に記憶を残せる。そんでもってその御先祖様の巨神も同じ事が出来たと考えるのが普通だ。そして巨神の血で出来た池は聖地として半巨人の村で守られている。
もしそんな特殊な力を持った血の中に、かつて巨神に止めを刺した瘴気が溶け込んでいたとしたら?記憶を保持する血の力を使って生き延び、かつて成そうとした生命の根絶を狙っていたとしたら?そりゃ村が滅びる禍になるわな。
「つまり、ローズさんの「ローズと呼んでください!!」・・・ごほんっ!!ローズの目的は俺達と一緒で巨神墓地に行くことか?」
「そうなりますわ。」
フラグ推理が出来て上機嫌なルゼダ。凄いドヤッておられますなこのお嬢様はよ。
「さすがルゼダだね。それじゃあこの後起こる事は解る?」
「恐らく巨神墓地で瘴気に対する何かを取得して、半巨人の村に赴き瘴気と敵対ですわね。」
「もしやボス戦か?」
「そうなると思いますわ。ですが・・・。」
「何か懸念でもあるのルゼダ?」
「このストーリークエストはワールドクエストの一部ですわ。つまりボス戦の規模はワールドクエスト基準。大レイド戦と予想されますわ。」
「あのぅ~?さっきからなんの話をされているんですか?」
「おっと悪い悪い、ローズの目的の話と予想される危険についてだよ。」
ゲーム用語で言われたって解る訳ないわな。ローズに解るように世界規模で危険な敵が村の近くに現れて襲って来ると説明しといた。なんか蒼褪めてプルプル震えてるよ。まぁそんなに規模の大きい話だと聞かされたらそうなるわな。
「本当にそんなに大勢必要だと思うか?」
「はっきりとは断言できませんわ。でも高確率で当たっているはず・・・。」
「ルゼダのフラグ予想は結構当たる確率高いですからね。そう思って準備しておいた方が僕は良いと思います。」
「無駄にはなりませんからね。」
「だんだんと大きな話になって来たなぁ。」
「みんながいればだいじょうぶ!!」
さてさて、とりあえずローズを万魔図書に連れて行って、怨念や瘴気について調べて貰おうか。もしかしたら全然見当違いな事を言ってるかもしれないからな。
万魔図書にローズを連れて戻り、メガネ達の協力を得て邪気や怨念について調べた。まぁ大方の予想通り、ローズが調べなきゃいけないのはそんな物では無く、怨念や邪気何かの負の感情が凝り固まったもの。つまりは瘴気という結論に至った。
「予想通りでしたわね。」
「あっ、調べた中に海底都市に絵本が持ち込まれた可能性があるというメモが挟まってました。」
「僕が調べた方には海底都市を作った賢者の秘密研究室の存在が仄めかされてますね。」
あの場所は本当ならここでヒントを得てから行く場所だったのか・・・。そんな場所のカギをイベントの景品にしておくなよ!!フラグスキップ所の話じゃないぞ!!
「こうなると海底都市も開拓村と一緒で一度壊滅する予定だったのではと考えてしまいますわね。」
「滅びた都市を解放して秘密研究室を捜索か。そうならなかったのはカイトの大手柄じゃねぇか。」
「そうですね。あのままだと白魚病で海底都市は全滅していたかもしれませんし。」
「情けは人の為ならずって事ですかね?今度お礼に僕達で何か手伝ってあげましょうよ。」
「かいとにいちゃんすごい!!」
さて、このクエストの中心人物であるローズはというと、シアが持っている絵本を熱心に読みふけっていた。そして今、最後の部分を呼んだところで顔を上げる。
「不躾なお願いなのは百も承知なのですが。この地に巨神を祀った墓地はありませんか?」
「あぁ、それならあるぞ。巨神墓地って名前だな。これはその墓地に描かれている壁画の写真だ。」
「なるほど、間違いありませんね。この場所に一緒に行って頂けないでしょうか?そこに、瘴気に対抗するための試練があるかもしれません。」
何やら不安を感じている様子だけども、何を不安に思う事が在るんだろうね?俺達だってクエストをクリアしたいんだから返事は一択でしょ。
「安心しろよ。ここで放り出したりはしないから。俺達も行くところだったからな。ついでだし一緒に行こうぜ。」
「よろしくお願いします。」
これはストーリークエストの部分なんだろうな。だってローズの前で何度も巨神墓地の名前を出していたのに反応していなかった、今はその墓地の事を話すときちんと反応する。フラグを踏むまでローズにはその部分は聞こえなかったらしい。
さてさて、案の定と言うかなんと言うかルゼダの予想の裏取りが出来てしまった。調べた資料は結局シアが持っていた絵本を見た後で巨神墓地に先に進めと示唆している。つまりは最終的に行く場所は半巨人の村だって事で、レイド戦は決定的って訳だ。勘違いで合って欲しかったなぁ・・・・。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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