第163話

図書館の休憩室からログイン。前回拡張工事を終わらせて次は本の補修の為に作業部屋に案内された。そこには背表紙がボロボロの本だったり、括り紐がほどけてページがバラバラになったり、何かでインクが滲んで文字がかすれてしまった物まで多くの傷付いた本が置かれていた。


〔我々も補修を行っていたのですが何分手が足りずに困っておりました。手伝って頂き感謝します。〕

「それで、この本にもなんかあるんだろ?」

〔はい。補修する本の中に呪本や魔本が混じっております。本の形を失っている間は効果を発揮しませんが、修復した瞬間から本来の力を取り戻します。〕

「それはもう放置しておいても良いんじゃないですか?」

〔呪本も魔本も貴重な知識でございます。破棄する等もってのほかです。〕

「グダグダ行っても進みませんわよ?それより作業の仕方を教えて頂けるかしら?」

〔畏まりました。〕

「ミニゲームみたいで僕ワクワクして来ました!!」


クリンの行った通り、本の補修はミニゲームの様な物だった。バラバラになった本をページ数を確認しながら並べたり。破れたページを修復する為にパズルに挑戦したり。括り紐を通す為にタイミングよく穴に紐を入れたり。背表紙を真っ直ぐ張り付けるだったり。


そして完成した本からは雷が走ったり、火が噴き出したり、水が溢れたりとまぁまたカオスな状態に。そしてそんな攻撃でせっかく補修した本が又バラバラになったり焼け焦げたりとやり直しに・・・・。


「だぁぁぁぁぁぁっ!!やってられんぞこんなの!!」

「ルドさん落ち着いて、最初より3割進んでますから。」

「3割進む間に6割やり直しになってますけどねぇ。」


本の補修が終ったと思ったら周りを巻き込んで呪いや魔法を吐き出す状態に頭を抱える俺達。そんな中黙々と補修を行っていたルゼダが俺達に呆れた顔を向けた。


「ルドさんは何で『転痛』を使わないんですの?それを使えば補修した本を守る事は出来ますわよね?」

「「「あっ!?」」」

「気が着いていませんでしたの?時折ひどく抜けておりましてよ?」

「面目ない・・・。」


ルゼダの助言のおかげで本の修繕はすこぶる快調に進んだ。まぁダメージがでかいのもあるから回復結界を張って貰っての作業だったけど、それでも当初の3倍のスピードで進み、あっという間に修繕は終わった。


「これで終わりです!!」

「やっと終わりましたわね。」

「いやぁ、転痛使えば楽な仕事だったな。」

「ルドさんが流派を覚えていて本当に良かったと思いましたよ。」

「私に言われるまで使おうともしていませんでしたけど?」

「「「すみませんでした。」」」

〔次が最後の依頼となります。不法滞在者の対応をお願いします。〕


呆れた目線で俺達を、特に俺を見るルゼダに謝罪した後、次の依頼に向かう。不法滞在者が居る区画までは転移ポータルでの移動になった。本棚の後ろに隠し扉が在ってそこから転移するんだってさ。これ職員用の隠し通路らしい。依頼を受けたという事で使用の許可が出たんだとさ。


〔見えますでしょうか?彼らが対処して欲しい不法滞在者です。〕


場所は図書館に作られた噴水の在る中庭。花壇が在ったであろう場所は全部畑に変わっていて、公園だった場所には多くのテントが建てられている。中には肉を焼いている人も居て、結構しっかりと生活出来ている様子だった。


「あの物資はどっから来たんだろうなぁ?」

「図書館の中に入る様子がありませんわね・・・。でもあの大きなテントから物を持ち運んでいますわ。」

「あの中に何か秘密が在るんでしょうか?」

「僕が行って探って来ましょうか?」

「いや行くなら全員で行こう。」


見た感じ排他的な感じでも無いし、この場所のトップと話が出来たらここに住んでる理由もわかるでしょ。


と言う事で、武器なんかは抜かずに、それでも気を抜かない様に図書館のテント村になっている中庭に俺達は姿を現した。俺達の姿を見てテント村の人達がざわつく。


「さて、向こうはどう出て来るかな?」


そう思っている所にテント村から1人の老人が姿を現し、何やら同情的な目でこっちを見ていた。


「おぉぉぉぉぉ、外から人が来る何んぞ何年ぶりじゃろうか。お主らも遭難したんじゃろう。さぁこっちにおいで、ここには飯も飲み水も何でもあるぞ。」


突然そんな事を言われたもんだから俺達は困惑した表情でお互いの顔を見合っていた。


とりあえずその老人、村長と呼ばれている人だったけど、その人の案内でテントの1つに入って事情を聴いた。


「わしらはこの場所で管理をしとった者の末裔じゃ。先祖がなんぞ大事な物を失くし、帰る術を失って以降ずっとここで暮らしておる。時折似たような人が流れ着くでのう。皆で協力して生活しておるんじゃ。」

「外に出ようとは思いませんの?」

「出ようとした者もおったが、全て悪魔に連れ去られてしもうたんじゃ・・・。」

「悪魔ですか?」

「そうじゃ、あ奴らはわしらをここから消し刺さる為に動いておる。恐ろしい奴らなのじゃ・・・・。」

「そんなの居るのか?リアン?」

〔この付近に悪魔もしくは関連書籍の存在は確認されません。〕

「ひぃぃぃぃっ!!悪魔じゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」


何と村長さんの言う悪魔はリアン達の事だった。そんでもって村長のテントからそんな叫び声が聞こえたもんだから、テント村の人達が各々武器を持って突入してくるわけで・・・。


「貴様等!!村長に何をした・・・球体の悪魔!!」

「全員に知らせろ!!こいつ等悪魔の使いだ!!」

「殺せ!!悪魔は殺せ!!」


はい、何やら殺気立っておりますね。うん、どうすっかねぇこれ?


「とりあえず結界は張っておきますわ。『守護結界』」

「一応警告ですが、攻撃してきた場合私達は反撃しますよ。攻撃してこなければ反撃はしません。」

「僕達話し合いがしたいだけなんですよ。」

「リアンさぁ、とりあえず悪魔扱いされてるけどこの人達に何した?」

〔不法滞在者を万魔図書から追い出しただけです。どういう訳かこの人達は私達を見つけると追いかけて攻撃してきますので、転移魔法陣まで誘導して外に放り出しています。〕

「らしいけど、そっちはどういう事情でこいつらを追い回すんで?」

「悪魔はわしらを消し去るんじゃ!!わしの目の前で息子を消された事は忘れておらんぞ!!生きているというのならここに連れてこい!!」

〔追い出した後の足跡が辿れません。不可能です。〕

「やはり殺したんじゃろ!!息子の仇!!」


老人は傍に在った杖でリアンに殴りかかる。リアンはすいっと俺の陰に入り、俺の体を殴った杖はぼっきりと折れてしまった。


「まぁまぁ落ち着いて。息子さんを連れてきたら全員ここから退去してくれますか?」

「悪魔の使いの言う事など聞かん!!」


まいったねこりゃ。こっちの話をまったく聞きやしねぇ。そろそろまずいっぽいんだよなぁ。さっきから肌がビリビリして来てる。しゃーない、ちょっと強引に行くか。


「なぁリアン。転移魔法陣ってこの中庭に設置出来たりするか?」

〔可能です。〕

「どうしますの?」

「こういう時の行政のやり方を真似ようかなって。」

「それってどういうことです?」

「武力を使った強制退去。」

「それって遺恨が残りませんか?」

「まぁ残るだろうけどこの場合仕方なくないか?皆も気が付いてるだろ?このままじゃまずいってさ。それに話を聞く気も無いみたいだし、強制的に転移魔法陣で外に送り出して現実見せた方が早そうだしな。もともと遭難者の集まりみたいだし。」

〔転移魔法陣を噴水の傍に設置完了しました。〕


「さてと、それじゃあ村長、ちょっと手荒ですけど退去して貰いますね。恨むんなら話を聞かなかった自分達を恨んでください。こっちは穏便に済ませようとしたんですから。」

「なっ何をするつもりじゃ!!」

「巨大化」『こうするつもりですよ。』


体を大きくして村長と俺達を取り囲んでいたテント村の住民を掴んでは魔法陣に放り込む。


「うわぁぁぁぁぁぁ!!化け物だぁぁぁぁぁぁ!!」

「逃げろ!!女子供を先に逃がせ!!」

『図書館の中に逃げない様に結界頼むわ。』

「なんかこっちが悪者みたいですわね・・・。『守護結界』」

「一応声を掛けときますね。皆さーん!大丈夫ですよー!!図書館の外に出るだけですよー!!」

「僕達は絶対あなた達を傷付けませんよー!!ルドさんに掴まれるのが怖い人は自分から魔法陣に入って下さーい!!」


まぁパニックになっているテント村住民がそれで魔法陣に入るわけ無いわな。俺は次々住民を掴んで魔法陣に放り込む。本当に急がないと間に合いそうに無いんだよな・・・・・。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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