第162話
「とりあえず読んで行くぞ?しっかり聞いとけよ?」
俺は巨大化を解除してから球体が表示している依頼を上から読み上げて行った。
万魔図書からの依頼
図書館内の清掃と整理。
図書館内に侵入した外来生物の駆除。
図書館内に不法滞在している者達の対処。
現在の世界の知識と文学の提供。
魔法技術の発展報告。
分断された種族のその後の情報提供。
伝えられている歴史の確認。
図書館維持の為の素材収集。
図書館の補修作業。
蔵書の補修。
紙の蔵書から魔導媒体への移し替え。
図書館の拡張工事。
通常図書との連絡回復。
以上
「ものすごく気になる内容が在るんですが・・・。」
「分断された種族って何ですの?」
「ここと普通の図書は連絡取れないんですか?」
「歴史の確認って事は僕達が知っている歴史と何か違うんでしょうか?」
「としょかんまだおおきくなるのー?」
次々に上がる疑問に球体のカメラレンズがキラリと輝いた気がした。
〔種族の分断はかつてあった種族戦争により起こりました。関連文献はD棟5階の戦争の歴史区画に収められています。同じくかつての歴史はF棟3階の歴史年間区画にて確認できます。万魔図書は常に知識を蓄える場所です。現在の面積では追加された情報を補完する事に不安がある為、拡張を検討しています。〕
あぁ、ここら辺は図書館って感じだな。教えるのは簡単だけど自分で調べる事に意義があると。詳しく知りたかったらその場所に行って調べなさいって事だぁな。じゃあ通常図書と連絡が取れなくなった原因は?
〔そちらについては情報も無く推測となりますがよろしいですか?畏まりました。通常図書との連絡途絶は500年前から続いております。この場所は万魔図書の最奥に位置しており通常では辿り着けません。何らかの原因により正規の入館証が失われ、連絡が取れなくなったと推察されます。〕
魔導王さんもハジンさんも図書館については何も言ってなかったもんな。つまり図書館のこの場所に関しての話がちゃんと伝えられてなくて、正規の許可証の話も何もかもが失われてしまっていたって事なのか。
「なるほど、ではなぜこの図書館を魔道国の皆さんは大魔導図書館として利用していたんでしょう?正規の入館証が無ければここには来れないんですよね?」
〔仮入館証で入れる区画には護身の為の魔法書が多く収められておりました。恐らくその影響でその名になったのだと推察されます。〕
3000年前からこの場所に在ったんでしょ?だったら首都をここにしたのも多分その魔導書を確保する為だったんだろうなぁ。この場所って魔道国誕生に関わってそうだなおい。
「まぁそんな事より受ける依頼を選ぶっすよ!!」
「我々は清掃と整理を受けましょうか。後は歴史の確認と知識の供与ですかね?」
「おう!!俺達は駆除を受けるぞ!!後は素材採取と図書館の補修だ。」
「僕達はどうしますルドさん?」
「1つは決まってるんだがなぁ。あと2つはどうするか・・・。」
正規の入館証を取得する為にはPTで3つの依頼を熟せばいいらしい。だから他のPTはそれぞれ3つずつ受けてるわけだな。
俺達も正規の入館証を人数分手に入れる為には3つ依頼を熟さないといけない。1つは拡張工事の手伝いで良いだろう。慣れてるし。
「私は蔵書の補修を受けたいですわ。」
「僕は通常図書との連絡の回復を受けたいです。」
「私は不法滞在者の対処ですかね。」
「しあはねぇ~。なんでもいい!!」
〔シア様は保護者であるルド様と一緒であれば問題ありません。こちらで絵本でもどうでしょう?〕
「よむ!!」
「あー、大人しくしとけよ?」
「はーい!!」
シアは任せとこう。PT内の希望は3つか。うーむどれにするか・・・・。
「通常図書との連絡回復ってどうするんだ?」
〔どのような形でも構いません。通常図書との連絡が取れれば回復したと判断します。〕
「それって俺が連絡係になるってのは駄目なのか?」
〔常に連絡が取れる手段が必要です。彼から頂いた情報では旅人は亜空に帰り長い時間不在になると聞きました。それでは条件に当て嵌まりません。〕
よく見ればメガネやノート達の傍にもう1つの球体が浮かび、色々情報を聴き取りし始めていた。おう、さすがだな。話をする目がめっちゃ輝いてるわ。
「ルドさん、僕思うんですが。この球体を通常の図書館に運べば依頼達成じゃないですか?」
「なるほど、そこん所どうなんだ?可能なのか?」
〔住民に通常図書を譲渡した際に我々を管理する魔導具は撤去されています。通常図書では活動出来ません。〕
「では撤去された魔道具を再設置するのはどうですの?」
〔撤去された際に不必要な物は全て別の魔道具に使われました。設置の為には新たに組み上げる必要がありますが。材料不足で不可能となっています。〕
「そう簡単には行きませんのね・・・・。」
「だったら決まりだな。」
俺達が受けるのは図書館の拡張工事と本の補修、それと不法滞在者の対応だ。
〔依頼の最中は自由に動けるように許可を出しておきます。仮入館証では蔵書の確認に変わらず制限が掛かりますのでご注意を。〕
球体が各自持っているドッグタグに何やら印を掘り込んだ。それを受け取ったメンバーはそれぞれのPTで依頼を熟す為に移動を始める。ストーリークエストのマーカーがマップに出てるから分かりやすいなぁ。まぁ肝心のマップが真っ黒なんですけどね!!
「そう言えばお前等の名前は?」
〔ライブラリアンと呼称されています。〕
「そのまま英語で司書ですわね。」
「解りやすくて良いよね。」
「長いし呼びにくいからリアンって呼ぶぞ。良いか?」
〔構いません。〕
「それじゃあリアン、依頼の場所まで案内してくれますか?」
〔畏まりました。〕
「いってらっしゃーい。」
シアはこの場所で絵本を読んで待ってるんだってさ。前に海底都市で手に入れた絵本の解読を別のリアンと一緒にやるらしい。そう言えばあの本今まで全然触れてこなかったな。もしかして読めなかったから放置してたのかな?
まぁ翻訳出来たらあの絵本の内容も解るでしょ。それより俺は土木工事に勤しみますよ!!
と意気込んで来たもののこの図書館の拡張工事は何やら普通のと違ったという落ちでござる。
「えっとつまり、土木作業で拡張するわけじゃなくて。呪いの本や不思議な魔本を使って空間を広げる工事だと?」
〔その通りでございます。この万魔図書には数多くの呪本や魔本が収められていますが、その中には我々では対処できない程力の大きくなってしまったものがございます。それをこちらの魔道具に入れて頂くと、この万魔図書館の空間が拡張される仕組みでございます。〕
「それは不具合を起こしたりはしませんの?」
〔ここ5000年不具合を起こしたことはございません。メンテナンスもきちんと行っております。この魔道具は呪力や魔力と言った力を抜き取り利用する物、本自体は傷付けません。〕
「力だけを抜き取るから呪いや不思議な効果は残ると。なんとも都合の良い装置だなぁ。」
「ルドさん、忘れてるかもしれませんがここはゲームですよ?」
「ご都合主義は今に始まった事じゃないです。」
「それもそうか。」
それで俺達がやる事と言えば、その暴走気味の呪本や魔本を集めて装置に突っ込む仕事。注意点としてはそれらの本を手に取ると死にかけるって事。
「あばばばばばば、HPが!!HPがみるみる減っていく!!」
「うひゃーーーーっ!!手足の感覚が上下左右別々になってます!!」
「これは面白いですわね。手と足が入れ替わりましたわ。」
「ありぇ~?みんにゃどこ~?にゃんかうごきにゅくいよぉ~?」
呪いにHPをグングン吸い取られる俺。手足を出鱈目に振り回すリダ。手と足が入れ替わってなおかつ上下も反転したクリーチャーと化したルゼダ。そしてなぜか5歳くらいになってしまったクリン。うんカオス。
「ぐおぉぉぉぉぉっ!!このままじゃ死ぬぅぅぅぅぅぅぅっ!!リアン早く魔道具持って来てくれぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
〔お待たせしました。ここにどうぞ。〕
「リアンちゃんこれ受け取ってください!」
〔了解です。〕
「あら元に戻りましたわ。」
〔呪本は回収しました。〕
「やっと元に戻れた・・・。」
〔魔本回収完了。変わった姿が可愛らしかったので記録しておきました。記念に写真集をどうぞ。〕
「消してくれないかな!?」
これ、まだまだ処理しないといけない本が山ほどあるんだぜ?なんせリアン達だと触れもしない状態だからな。どれだけため込んでたのやら・・・。
結局ログイン制限時間まで粘って何とか拡張工事は終わらせたよ。おかげで呪いが無効になったのは良かったけどもう2度とやりたくねぇ・・・・。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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