第147話

「壁画には特に謎はありませんでしたわね。」

「となるとだ、やっぱり謎は最後の広場に在るって事だな。」

「その広場は近いんですか?」

「このすぐ先だ。」

「しかし巨神も酷いっすよねぇ。人を恐怖で縛り付けるとか。」

「ん?どういうことだ?」


俺が見た限りじゃ巨神は最後まで人と一緒に戦い、そして敵さえ仲間にしてたはずだが?恐怖で縛るより頼られて立ち上がった感じだったが?


「どうもこうも壁画に描かれてるじゃないっすか。最後は天使の槍に胸を貫かれて死んで、人々が喜んでるっすよ?」

「はっ?胸を貫かれたのは変なもやもやで、人々はその光景を見て悲しみに涙を流している絵だろ?」

「何を言ってますのルドさん?」

「そんな絵どこに在るんだよ?」

「私達には見えませんが・・・・。」

「記録にもありませんよ?」


はいぃ? おかしいな。何回見ても10枚目の絵はもやもやに巨神が貫かれ、その様子を見て人々が悲観に暮れる様子何だが?これってもしや俺だけしか見えない?


「ちょっと待ってろ。」


おれは1枚目の壁画に戻りスクショを撮る。スクショには俺の見た壁画が描かれている。順番に別の壁画も同じようにスクショ。こちらもちゃんと表示されるな。


「俺が見た壁画はこれだ。そんで最後がこれ。見えるか?」

「そんな馬鹿な!?」

「ルドさんが編集した・・・と言うわけでは無いですわね。」

「内容が全然違いますよこれ。」

「これは一度すべての壁画をすり合わせた方がよさそうですね。」

「すべて記録し直します!!」


と言うことで1枚目から再度チェックのし直し。違う物が見えたのは俺だけみたいで、他の皆は同じものが見えていた。1枚目からおかしい事言ってるなぁとは思ってたんだよなぁ。


皆が見た壁画は巨神が人を恐怖で縛り付け、それを助ける為に天使が動物を人に変え、戦うという壁画。ウケンがSNSに上げたのは巨神と天使が戦う場面だな。祈りを捧げる人達と巨神に苦しめられる人が額縁に描かれている。これも俺が見た奴とは全然違う。


「どちらが真実なのでしょう?」

「これはルドさんの見た壁画が本物と見るべきですわね。」

「根拠は?」

「ルドさんのオリジンスキルには巨神に至る鍵と言う記載がありますの。つまりルドさんが巨神の血族である可能性が高いですわ。その血によってこの遺跡が本来の姿を現したとしたら?」

「つまり俺達が見ていたのは偽物の歴史だったと?」

「恐らくは。」

「でもでも!!だったらなんで本当の歴史を隠したっすか?最初から本物を見せてても良いと思うっす!!」

「こういう場合は隠したい相手が居た。もしくは壁画を残す際、真実の歴史を曲げなければいけなかった理由があると推察されますね。」

「壁画を作った人々がその理由を掻い潜ってどうにか本来の歴史を残そうとした結果がこれと言うわけですか・・・。」


うーむ、理由は一体何だったんだろうなぁ。天使の場所にある球体がそのヒントな気がするけど、あれだけじゃ何も分からんな。


「とりあえずはルドを連れて来たのは正解だったわけだ。じゃないとこんな隠し要素見つけられるわけがねぇ。」

「それは同感ですね。他の種族でも同じような遺跡があるかもしれません。」

「メンバー増やさないとっすね。と言うことルドさん、森の人に入らないっすか?」

「すまんね、俺は城塞都市でやる事あるからギルドに入る気は無いよ。協力のお誘いなら行くけどな。」

「勧誘失敗したっす。」


凄く軽くギルドに誘われたが断るよ。俺の拠点は城塞都市だし、ギルドに入る気が無いからな。ララもそんなに本気な誘いじゃなかったしな。


「ルドさんは城塞都市の隊長していますわ。大事な隊長を取らないで下さいまし。」

「おやおやおや~?そう言う事ですか?記録しますよ?」

「違いますわよ?そういうのはリダさんの役目ですの。隊長を引き抜かれたらうちの副隊長が悲しみますわ。」

「本人のいない所で好き勝手言うんじゃありません!話が進まんから切り替えるぞ?まずは最奥を目指すのが良いと思うがどうだ?」

「そうだな、こんな隠し要素があったんだ。広場でも何か見つかるかもしれん。」

「と言う事でサクッと行くっす!!広場はすぐそこっすよ!!」


通路の先にはとても大きな広場があった。広場って言うか街1つ入りそうな規模なんだが?これもう広場とは言わなくねぇか?


「ここっす!!端っこは全て壁になってて通れないっす!!唯一出入りできるのは今入って来た所っすね。」

「俺の透視を使っても発見できなかった。どうだルド?何か解るか?」

「うーん?やけに天井も高いな?見えないぞ?」


上を見上げると俺達が持っている灯では照らせないのか真っ暗な闇が広がっている。


「そこそこ地下に潜って来ましたっすからね。」

「天井が気になりますの?」

「ここって巨神墓地なんだろ?でだ、この広さって巨神が居ても大丈夫な広さって事じゃないかなと。」


そも巨神が死んだとしてその骸とかはどうなってるんだろうな?巨神墓地って話なら骨くらいあっても良いもんだが見当たらんし・・・・。安置されてるとしたここくらい広い場所だと思うんだがな。


「とりあえず天上見てくるか。そう言えば前回の調査では天上確認したのか?」

「いや出来なかった。壁に取っ掛かりも無くて登れなかったからな。スキルを使っても天井を見る事は出来なかったぞ。」

「おう、なら全員俺の手に乗せて上がるか?少し大きくなってから乗ったら大丈夫だろ。」

「ぜひお願いします!!天井の記録も取りたいので!!」


俺は全員を手のひらに乗せて最大サイズまで巨大化した。最大サイズになってもこの空間は動き回れる程広い場所だったよ。そして俺達の目の前には天井画が広がっていた。


「凄いなこれは。」

「ルドさんはスクショをお願いします。また見ている物が違う可能性がありますので。」

『おう解った。皆にはどう見えている?』

「天使が沢山居て、その周りを人々が囲んでいますわ。」

『じゃあやっぱり見てる者が違うな。俺に見えてるのは文字だから。』

「「「「「文字!?」」」」」


絵もちょっとは在るんだけどね。それはローブを纏った人たちが巨神の亡骸をこの遺跡に収める風景。そんでもってその絵の横には文字がつらつらを書かれている。内容?考古学とか持ってないから分からん!!


「スクショを!!早くスクショを見せて下さい!!」

「お願いします!!すぐに解読したいです!!」

『落ち着け2人共、今見せるから。』


おれは片手でメニューを操作して今しがた撮影したスクショを表示する。


『読めるかノート?俺には全然読めなかったんだ。』

「少々お待ちください。ふむふむ・・・・ここがこうなって・・・・これはおそらく数字・・・。それでここは・・・ブツブツブツ。なんとこれはっ!?」

『何か分かったか?』

「はいっ!!全く読めない事が解りました!!」

「「「「『ズコーッ!!』」」」」


おっと危ない危ない、巨大化したまんまずっこけたから皆を落とすところだった。


「ちょっと気を付けて下さいまし!!」

「死ぬかと思ったぜ・・・・。」

『すまんすまん。』

「あれ?あそこで1人死んで無いっすか?」

「「「「『えっ?』」」」」


いや全員居るよな?ルゼダ、居る。メガネ、居る。ノート、居る。ウケン、居る。ララ。居る。最後は俺。もちろん居る。


『誰だあれ?』

「まさか盗掘者か!!」

「あっ消えていくっす。」


何であんなところで死んでたんだ?


~・~・~・~・~

俺様の名前はアシッド。職業はトレジャーハンターだ。


俺様は隠された遺跡や墓地を巡ってお宝を手に入れていた。今回も巨神墓地なる遺跡が発見されたという情報をSNSで掴んで意気揚々とやって来たわけだ。


警備が厳重だったが俺様には通用しねぇ。気配や姿を消すスキルの準備は万端だ!!この遺跡に在るお宝は全部俺様が頂いてやるぜ!!


そう思っていた時期が俺にも在りました。この遺跡なんもお宝がねぇ!!ただ壁画と広場があるだけで何一つ金目のものが無かった!!


何も手に入らなかった俺様はそのまま帰ろうとした所で入り口から入って来る旅人に気が付いた。そいつらは遺跡の調査を行うってんで壁画から調べ始めた。


こいつらに付いて行けばお宝にたどり着けるかもしれねぇ。そう思った俺様は姿を消したままそいつらの後を着けた。どうやら何か新しい発見をしたらしい。


遺跡に入り込んだ旅人の1人が突然巨大化しやがったのにはびっくりしたが。天上に何かあると踏んでの行動だった様だ。この広場の天井はロープを使ってもたどり着けなかった場所。お宝の匂いがプンプンするぜぇ~。


巨大化しやがった野郎の肩に隠れて乗り込み、天井まで運んで貰うとするか!!


天井にあったのは絵だけだった。畜生!!俺様のお宝センサーも鈍ったもんだぜ!!手に乗っている奴等が何やら話しているが隠れている俺には聞こえねぇ。その時突然巨人の野郎がずっこけやがった!!


おれはかなりの高さを滑り落ち、落下ダメージでそのまま死ぬことになった。デスペナいてぇ・・・・。復活した俺様はなぜか牢獄に居た。名前が赤く染まっている。なになに罪状は・・・盗掘?無許可で遺跡を荒らした罰だって?なぜばれた!!あっすんませんすんません、もう2度としません、ちょっとインディーさんに憧れただけなんす。だからその鞭を仕舞ってください。えっだめ?罰は受けて貰う?あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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