第146話

真っ暗になった視界に光が差し込んでくる。暗かったのは1秒くらいかな?そんでもって耳には鳥の囀りが聞こえ、鼻には濃い植物の匂いがしている。


「到着っスー。」

「植生的には熱帯雨林に近い物を感じますね。」

「みて下さい館長。あれが例の遺跡です。」

「THE遺跡!!とでも言いたくなるほどの遺跡ですね。」


ノートが指さした先には、半分緑に飲まれ、蔦や苔まみれになった石で出来た建造物が鎮座していた。


「おぉー。これは壮観だなぁ。」

「ワクワクして来ましたわ!!早く行きましょう!!」

「まぁ待て待て。帰還用のマーカー準備してからだ。ララ、出してくれ。」

「ハイっす!!」


ララさんが背負っているリュックサックから取り出したのは6角形に金属板。その中央に赤い球体が備え付けられている。


「それがマーカーなのか?」

「そうだぞ。これを地面に埋めれば完了だ。あっ技術的な事はなんも言えねぇぞ?うちのギルドの秘匿技術だ。だからノート片手にこっちに来ても何も教えん!!」

「駄目っすよ!!うちの技術班がかなり苦労して作ったんっすから!!」

「残念です・・・・・。」

「そのうち情報売ってやるから今は我慢しろ。」


ノートが本とペンを片手にメガネと一緒に詰め寄ろうとしたところで先にウケンが釘を刺した。まぁあのままだったら質問の嵐でこっちの姫が待ちきれなかっただろうからな。


「準備は出来ましたの?ならさっそく行きましょう!!ロマン!!ロマンですわ!!」

「はいはい落ち着けルゼダ。」

「ララが先頭に立つからルドはそのすぐ後ろに居てくれ。俺は最後尾に回るから残りは真ん中だ。」

「遺跡は地下に向かって伸びてるっすから足元注意っすよ。苔とかで滑りやすいっすから。調査の終わっている広間までは魔物も出ないっすからサクサク行きましょうっす!!」


ララの誘導で遺跡に入る俺達。警備をしている兵士達に何やら書状を見せてから遺跡に入った。


「さっきのは何だ?」

「国が認めた調査団だと証明する書状だ。あれが無いと今は遺跡に入れん。」

「この前見つけたばかりっすからね。危険が無いか。貴重な物は在るのか。調査が終わるまで一般公開はされないっす。盗掘に対する警戒でもあるっす。」

「旅人の中には死んでもデメリットが少ない事を良い事に無理に遺跡調査して遺跡自体を壊す馬鹿野郎も居るからな。貴重な遺産を壊さないよう措置を取らせたんだよ。」

「なるほど。さすがはプロですね。」

「ただの趣味だよ。」


遺跡の中は一本道で通路の壁にはスクショで見たような壁画がずっと続いていた。俺はいつでもララの前に出られるように盾を準備する。


「そう警戒しなくても大丈夫っすよ。」

「奥の広場までは罠も魔物も居ない事は調査済みだ。」

「そうか。けど何かあってからじゃ遅いからな。準備だけはしておこう。」

「それにしても『巨神墓所』という名前からしてこの壁画は巨神と人々の関りを描いているんでしょうか?」

「スクショで確認していましたけど、やはり生で見ると壮観ですね。いやゲームですけどここ。」

「こういう壁画には隠された情報が在ったりしますわ。壁画の後ろに本当の絵が隠れていたり、実は一部が抜けてパズルの様にずらせたりしますのよ?」

「奥は調査済みなんだよな?だったら壁画からじっくり調べていくか。」


と言う事でまず1枚目。そこには山の向こうからこちらを除く巨神であろう大きな人と、山のふもとで生活する人間であろう小さな人が描かれていた。縁取りには羽の生えた人(多分天使)や鳥、動物、植物なんかが描かれている。


「これだけ見ると巨神が人を発見した現場って思えるな。」

「巨神が獲物を見つけた瞬間とも思えるっす。」

「とりあえず何か無いか探してみましょう。ノート、記録をお願いします。」

「解りました。」


と言うことで1枚目の壁画を調査です!!と言っても貴重な遺産なのでそこまで無茶は出来ない。でもそんな時に便利なのがスキルってもんですよ!!


「『透視』・・・・。やっぱり壁画の後ろにはなんもねぇな。」

「スキル発動したままこちらを向かないで下さいます?ハラスメント行為で通報いたしますわよ?」

「『透視』は人に対して使えねぇよ!!人をスケベ親父みたいに言うな!!」

「隊長いつもそう言ってるっすけど、たまに女性に向かって使ってるっすよね?どうしてっすかねぇ?」

「大方スキルが変化して人に対しても使える様にならないか試しているんでしょう。」

「森の人のギルドマスターはスケベで変態っと・・・・。」

「持ち物に怪しいものが無いか検査してるだけだ!!お前もそんな事記録に残すな!!人に使っても体が黒く染まってボディラインすら見えないんだよ!!男にも使ってるだろうが!!ララも変な事ぬかすんじゃねぇ!!」

「ほらほら、騒いで内で調べないと終わらねぇぞ?」


と言ってもこの壁画に特段何か特別な事があるとは思えないな。一部が外れる事も無かった。軽く叩いてみても空洞音とかは特にせず。俺が触って変化も無かった。気になったのは壁画の巨神の表情がとても朗らかな事くらいか?


「何も見つかりませんね。」

「次に行きますわよ!!」

「ノート、記録は大丈夫ですか?」

「はい、ばっちりです!!」

「では次にいくっすー。」


2枚目は大きな手が小さな人が生活している場所を弄っている所だった。大きな二つの山の間からやっぱり巨大な顔が覗いている。額縁には1枚目と違い、1枚目で描かれていた動物や鳥、植物なんかが2足歩行を始める様子が描かれていた。天辺に居る天使は変わらず。


「これは・・・家の移設?」

「家を取り上げてるって事じゃないっすかね?」

「下に居る人が持ち上げられた家に向かって祈っていますね。」

「調査始めんぞー。記録は頼むな。」


1枚目と一緒でこの壁画にも特に何かが在る訳じゃなかった。うーん、良く見たら家の在ったであろう場所に水が流れてるから、水害から助けたって事なんだろうか?その後俺達はどんどん残りの壁画を調査をしていった。


3枚目は2つある山の天辺に人が集まり、顔に向かって祈りを捧げている風景、額縁には2足歩行の動物達の手足が段々と人になってきている。天使は杖を振り回している。


4枚目、額縁に書かれていた2足歩行の動物達が絵の中に入り、人を襲っている絵。大きな手が入り込もうとしている動物達を押しのけようとしている。額縁の方には押し出されたかの様な恰好の動物達が描かれている。天使がなにやら杖を絵の中に向けている。


5枚目、ここから唐突に大きな人の全身が書かれ、小さな人と一緒に動物達と相対している。額縁の方ではもやもやとした何かが描かれている。天使は絵を覗き込みながら笑っている。


6枚目、額縁に居た天使が絵の中に登場。ほとんど人になった動物達を引き連れて人と戦っている。人の側には巨神が立ち、一緒に戦っていた。額縁には天使の方にはもやもやが、巨神の方には人と動物が手を取る様子が描かれている。


7枚目、人と手を取り合った動物達が天使と戦っている。天使の方はと言えば残った動物達にもやもやを送り込むような絵が描かれていた。額縁には巨神側はさらに人に近付いた動物達が描かれ、逆に天使側は元の獣より獰猛になる様子が描かれていた。


8枚目、巨神が天使を掴み、人々が獣を倒していく様子が描かれている。額縁には天使を掴んだ巨神を崇める様に祈りを捧げる人々が描かれている。


9枚目、また2つの山とその間から覗く顔が描かれ。山の麓には元動物達が人と一緒に暮らす様子が描かれている。天使と言えば額縁の上の方で階段を上る様子が描かれている。


10枚目、これが最後だ。天使が居た場所に球体の模様が描かれ、額縁がもやもやで一杯になっている。そして絵の方はと言うと、巨神の胸に額縁から集まったもやもやが突き刺さり、人々が嘆き悲しんでいる様子が描かれていた。


どの壁画にも隠された物は特になく。俺が触っても反応する事は無かった。

 

毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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