第139話
「いいか?これはリンゴだ。言ってみ?」
「いんご?」
「リンゴだ。り~ん~ご。ゆっくりでいいぞ。」
「り~ん~ご?」
「そうだ、偉いぞー。物覚えが速いなぁ。」
『GRRRRRR。』
はい、現在地が分からず身動きの取れない俺です。現在俺はこの子に言葉を教えています。最初は声を出す事に苦戦してたけど、すぐに言葉を話すようになった。言葉の意味とかはまだつたない部分があるけどな。でも一応意思の疎通は取れる様になったよ。
えっ?早すぎないかって?まぁそこら辺はゲームだから。目の前になぜか言語学習ゲージってのが見えてるし。今30%くらいだな。ミニゲーム扱いかこれ?
後はYES・NOくらい意思表示が出来るようになった時に外に出してくれと言ったら断られました。今なら理由を教えてくれるかな?
「そろそろ俺を連れて来た理由を聞いても良いか?」
「あぶやい!!たしゅけた!!」
ん~。危ないから助けた?
「きらきら、あぶやい!!いちゃい、いちゃい!!」
「きらきらってこれか?」
『GAU!!』
うむ、リンゴを剥く時に使おうと思ってたナイフを取り出したら、飛び跳ねて俺から距離を取り唸り出した。多分きらきらって刃物の事なんだろうな。すっごい怖がっているので俺はナイフをインベントリに仕舞う。
「ほら無くなったぞ。さっきのきらきらが危ないから助けたのか?」
「ん~ん。きらきら、いちゃい。あぶやい!!」
ふむ、この子の境遇から推察すると刃物で切られて痛かったから警戒してるのは解る。だけど痛くて危ないから俺を助けるってのはなんでだ?俺関係なくない?
「うーん、分からん。だが俺はこれくらいじゃ傷付かんぞ?」
「?」
「見てろよ?ほいっと。」カキンッ
「おーっ!!」
まぁ攻撃力の無い俺が自分にナイフを刺したところで刺さらんのだが、俺の肌がナイフを跳ね返した事に驚いた声を出す少女。
「やってみ?」
「いちゃい、ない?」
「大丈夫だからやってみそ。」
『GYAU!!』ガキンッ!!
おっと、この子中々攻撃力高いな。いや、まぁ俺を担いで運んだ時点で力はかなりあるとは思ってたけどな。まぁそれでも俺の肌は傷付かなかった訳だが!!どうだこれが俺の唯一の自慢だ!!なんか悲しくなって来た・・・・。
「いちゃい?ごめちゃ・・・。」
「あー違う違う、良く見て見ろ。なっ?傷なんて付いて無いだろう?だから外に出してくれないか?大丈夫だからさ。なっ?」
「やっ!!」
いや、嫌って言われてもなぁ・・・・。困ったなぁ・・・・・。
【ぱぱ、みえてる?】
おっと、シアからチャットが飛んで来た。見えてるぞっと。
【じーじがもうすぐたすけにいくからまってろって。】
【あいよ。今あの少女も一緒に居るから刃物は持ってくるなって言っといて。】
【わかったって。】
なんで親父の事をシアがじーじと呼んでるかって?シアは俺の事をパパと呼ぶ、なら親父とカマーンさんの事はじーじとばーばと呼ぶようにとカマーンさんから強制されてる。まぁ2人共シアの事は好きみたいだし、シアもそう呼ぶ事は満更じゃないみたいだから特に言う事は無い。
さてさて、親父達が来るって言ったら多分すぐ来るんだろうな。彼女の事はどうするか・・・・。
「今から俺の仲間がこっちに来るけど攻撃しないでくれよ?」
「にかみゃ?いっちょ?」
「一緒とは?」
「おおきくなる。きえる。」
俺の事を指さした後、自分の事を指さして消えるという少女。つまり特殊な能力を持ってるかどうかって事か?
「あー、1人は一緒。後は普通の人。」
「つかまゆ!!あぶやい!!にげう!!」
「待て待て待て。危なくないから。大丈夫だから。ここに来るのは・・・あ~。なんか恥ずかしいな・・・・。俺の親みたいな人だ。だから大丈夫。」
「おや?おやにゃに?」
「そっか、お前は知らないのか。」
赤ん坊のころから材料扱いだったもんな。うーむ、これは一体どうしたら・・・・。
「まぁ俺の大事な人って事だ。だから安心しろ。もし怖かったら俺の後ろに隠れてたらいいから。だから攻撃したり逃げたりすんなよ?いいか?」
「む~。わかっちゃ。かくれう。」
短い時間だが一緒に居て、俺には大分慣れて来たみたいだ。俺の言う事は素直に聞くし、とてもいい子である。悪い大人に簡単に騙されそうで大変心配です。
言葉の練習を続けながら親父達の到着を待つ。すると下水の奥が何やら騒がしいと思ったら、シアが灯りを持ちながらこっちに歩いて来ていた。
「ぱぱみつけた!!」
「助けに来てくれてありがとうなシア。」
「おう、無事か?」
「あぁ大丈夫だよ。そっちは?」
「こっちも怪我は無いわ。でもちょっと問題があったのよねぇ。」
「ん?問題?そう言えば3人で良くここまで来れたな。案内とか頼まなかったのか?」
「案内は頼んだぞ。ほらそれだ。」
「これ!!」
よく見たらシアの蔓の先にボロ雑巾がくっついていた。いや違うわ、これ人だわ。
「ルドちゃん達の話声が聞こえた時にシアちゃんを人質にして私達を消そうとしたのよね。」
「無茶しやがって・・・・。」
「後を付けて来た連中も居てな。20人くらいか?まぁ全員今頃下水に沈んでるだろうよ。」
「沈めちゃ駄目だろ!?ちゃんと捕まえないと!!」
「沈めたっていうのは冗談よ。でも一気には運べないからそのまま放置してるのよ。」
シアの蔓を巻き付けて放流してるらしい。下水の水って結構汚いから体調崩す事確定じゃないかそれ・・・・。
「で、何か吐いた?」
「どうやら王都に居るやっかいな奴が蜥蜴少女に目を付けたらしい。」
ふむふむなるほど?王都にいるヤの付く人っぽい組が、どうやってか怪物卿の実験の元になっていたこの子の事を嗅ぎつけて自分の物にしようと動いたと?
で、この子の事を連れ帰って怪物卿の後継者を名乗って金儲けしようとしてるわけだ。ほーん、へーん、ほぉ~ん?
「よし、さっそくリダ達に連絡を取って」
「何をしようとしてるのかしら?」
「えっ?組潰し?」
「ふふふ、それなら私達だけで充分でしょ?」
そりゃそうだけど下水出る前に逃げられたら困るからね。念の為よ念のため。潔く〇ね!!そんな事より俺達の目の前では不可解な光景が作り出されていた。
「じ━(ㅍ_ㅍ)━・・・。」
「こやい・・・。」
「よしよし。」。・゚・(ノД`)ヾ(・ω・`)ナデナデ
「何してんの親父?この子がめっちゃ怖がってるんだけど?」
カマーンさんと話している俺、俺の後ろに隠れている蜥蜴少女、その少女の顔をじっと見つめる親父と怖がった少女を慰めるシア。そろそろやめて上げないとこの子泣いちゃうぞ?
「やっぱり似てんな・・・・。」
「似てるって誰によ?」
「俺の前のかみさんだ。」
「「はぁっ!?」」
「こやい・・・。」
「よしよし」ヾ(・ω・`)
とりあえずこの子の事はシアに任せて、俺達は親父から事情を聴く。
「ルドに見せて貰った動く絵の時から思っていたが、あの子は死んだかみさんにそっくりだ。だがなぜ・・・・。」
「他人の空似とかじゃなくてか?」
「見間違え・・・・だとは思えないがな。」
「そう言えばあなたの子供って死体は見つかって無いんでしょう?」
「あぁそうだな。妻の死体だけが在った。子供は食われたと言われたな。」
「なら可能性が無いわけじゃないわね・・・・。そういう時はジャジャーン!!これよ!!」
そう言ってカマーンさんが取り出したのは何やら黒い盃みたいな物。いま胸の谷間から取り出しましたね?やっぱりそこは異次元空間何ですか?
「だめよルドちゃん、これはダーリンの物よ。あっでもたまに甘えたいならいいわよ?」
「胸を見てたんじゃなくて、どっからそれ出したか気になっただけなんで遠慮します。」
「もう、ママ寂しい。」
「話が進まん。それよりいつの間に用意した?」
「こんな事もあろうかと。乙女には色々秘密があるのよ♡」
「ばーばそれなに~?」
「ぐっ、その鋭い返しシアちゃんやるわね・・・・。これはね、血縁関係を調べる魔道具なのよ。」
この盃の中に2人の体液を入れると、血縁ありだと盃は赤色に、血縁なしだと青色に変化するらしい。血縁が近いと色は濃くなり遠いと薄くなるそうだ。自分の子供だったら真っ赤になるらしいよ?
「体液は血か?刃物はこの子凄く怖がってるぞ?大丈夫か?」
「唾液でも良いのよ?」
「だってさ、唾液って解るか?」
『GR?』
ふむ、まぁまだ教えてない言葉でもあるし分からんのは仕方ない。こういう時は単純に行こう。
「じゃあこれ見ろ。」
「にく!!」
「ほいゲット。」
どうもこの子、お肉が大好物みたいで肉を見ると無意識に涎を大量に口からこぼす。だから俺は肉を取り出して彼女に見せて、涎をゲットした。
「手懐けてるわねぇ・・・・。」
「じゃあ俺も入れるぞ。」
親父が盃に一滴の血を入れると、盃が光出して中心部から色が染まっていく。その色は真っ赤な赤色だった。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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