第119話

「それで師匠?早速修行してくれるんだろう?」


暴走した師匠を宥めてやっと落ち着いて話が出来る状況になった。まぁそれでも師匠は俺の腕に抱き着いてずっとニヤニヤしてるんだけどな。


「ルドきゅんの初めてはまだ私の物。ふふふ、いつ奪おうかしら・・・。」

「話聞いてる?修行の再開は何時になるんだよって言ってるんだけど?」

「それなんだけど・・・・、ごめんなさい。しばらく再開出来ないわ。」


ほえっ?それは一体どうして?


「どうしてなんですか?」

「王都の方から呼び出しが掛かっちゃったの。なんでも盾職の扱いが見直されて転職させたいんだけど、師範代が居ないせいで転職出来ないんですって。他の盾を使う職業の師範が皆雲隠れしちゃって残っているのは私だけなのよ。」

「それで声が掛かったって訳か。でも大丈夫なのか?一度は追い出した連中だろ?それに師匠性別まで変わってるし・・・・。」

「そ・こ・で!!ルドきゅんには私の弟子として一緒に同行して欲しいのよ。ボディーガードが居れば襲われる心配も無いでしょ?あっルドきゅんはいつでも襲ってくれていいわよ?」

「襲わねぇわ!!それに魔道具を使えば男に戻れるだろうが!!」

「それがねぇ、戻れなくなっちゃったのよ。」

「「はいっ!?」」


いや戻れなくなったって、それなら修業はどうするんだ?いつも修行する時は男に戻ってやってくれてただろう?


「このひとつかいすぎ、からだがいやがった。」

「あらシアちゃんには解るのね。」

「魔道具の使い過ぎで体が拒否反応を起こしたんですか?」

「そうなのよ。市長のお嫁さんが言うには劣化のコピー品を使いすぎた結果、体が変化しなくなっちゃったのよ。男で固定されなくて良かったのだけれどね。」

「いやいやいや、師匠女の時は弱くなってたよな?そこん所は大丈夫なのか?」

「それは大丈夫よ。今なら男の私より強いわ。ルドきゅんの応援があればさらに強くなるわ!!子種をくれたら「それは遠慮する。」もう恥ずかしがり屋さん♪」


隙があればぶっこんでくるんだから気が抜けねぇ。その所為で下手に返事も出来ない。


「まぁ弱くなってても師匠は強かったからな。その言葉を信じるよ。」

「あら?確認しなくていいの?」

「力に関して師匠は嘘を言わないからな。」

「じーん、これがカマーンの言っていた心が通じ合うという事なのね・・・・。なら次は体ね!!さぁ宿に行きましょう!!」

「行かないって言ったよな!?」

「話が進まないので止めて下さい。あとくっつきすぎです!!」

「ぱぱはしあのなの!!とったらめー!!」


リダとシアに師匠から引きはがされた。いやぁ助かったよ2人共。でもなんで2人はそのまま腕に引っ付いているのかな?


「あらあらあら、ライバルが多くて困っちゃうわ。」

「そんな戯言はもういいから。で何時から王都に行くんだ?」

「転移ポータルも出来たしすぐにでも。王様との謁見もあるから時間は掛かるでしょうね。」

「うーん、ならしばらく守備隊の仕事はリダに任せるよ。」

「解りました。」

「しあは?」

「シアは一緒に行くぞー。」

「わーい!!」ワァ───ヽ(*゚∀゚*)ノ───イ


ログイン時間もまだまだあるし、王都に言って落ち着くくらいなら問題無いだろう。ついでに師匠に修行して貰えないかなぁ。


「さぁそれじゃあ早速行くわよ!婚前旅行に!!」

「ちげぇわ!!欲望駄々洩れだわ!!」

「良いシアちゃん?パパの事しっかり守るのよ?」

「うんわかった!!」


こうして俺達は転移ポータルで王都へと向かった。


~・~・~・~・~・~・~

王都、ギルド『冥府への旅路』ギルド長室。


「お前はクビだ。」

「どうしてですか!?あなた達の方から誘って来たのに!!」

「役に立たないからだよこのノロマが!!」ガンッ!!


黒いローブに髑髏の仮面を被った男が机を殴る、その音に男の目の前に居る少女は肩をビクつかせる。


「盾職が強いと聞いて新人をスカウトしてみりゃ、とんだゴミだったな。」

「だからあたいは言ったんだ。盾なんて必要ないって。」


男の横に立っている幹部とみられる2人。片方は肩に大砲の様な物を背負った男、もう片方は白衣に身を包み、全身を包帯で巻いている女。それぞれが少女に向かって心無い言葉を掛ける。


一方的に罵詈雑言を受け続けている少女の手には、“木で出来た盾”と“棍棒”が握られていた。


「役に立たないって、それは貴方達が!!」

「なんだ?フォローしないからってか?誰かが居なきゃ経験値もろくに稼げない盾が良く言うよ。」

「寄生しないと強くなれないのならゴーレムを使った方がましよ。回復薬もタダじゃないんだし。」

「貴重な回復リソースを役立たずに使うはずが無いだろう?」


ゲラゲラと笑いながら少女を見下す3人、少女が何かを言い返そうとした所でこのギルドのマスター、キラーは目の前に浮かぶウインドウを操作し始めた。


「役に立たない奴は要らない。お前は追放だ。追放理由はギルドに不和を招いた事、投資に対して利益を生み出さなかった事。その補填をして貰う。」

「そんな一方的に!!それに盾職は育つのが遅いって解っていたはずでしょう!!」

「本当に成長が遅いのは職業の所為か?俺達の所為か?自分の努力不足を棚に上げて偉そうに言うんじゃねぇ!!」

「呆れた、役に立てないのを職業の所為にするなんて、これだから盾職は必要無いのよ。」


キラーと同じように何かを操作している2人。そしてキラーがおもむろに立ち上がり、少女に最後通告を告げる。


「『冥府への旅路』は旅人テッタをギルド規約違反を行ったとして追放刑に処す!!罰則は所持品と所持金の全没収。賛同する者はボタンを押せ。」

「賛成」

「賛成」

「賛成」

「賛成」

・・・・・

・・・・

・・・

・・


目の前に現れたウインドウにつらつらと表示される「賛成」の文字。それを見ながら少女、テッタはその顔に絶望を浮かべていた。


「賛成多数!!どうだこれがこのギルドの総意だ!!」

「さっさと目の前から消えなさい。役立たず。」

「あぁそうだ、王都中にお前の噂を流しておいてやる。他のギルドに入れると思うなよ?」

「そんなっ!?」

「部外者はさっさとギルドホームから退出しろ。あぁもう聞こえてないか。」

「「「ギャハハハハハハハ!!」」」


ギルドを追放された事でホームから自動的に転送されるテッタ。その姿を見ながら大笑いをする3人、テッタは最後まで目に涙を浮かべながら何も言い返せず消えていくしか無かった。


広場に転送されたテッタはすぐに動き出した。盾職が見直され始めたという噂を信じて王都のギルドを回り続けた。しかしどこもテッタを受け入れる事は無く、所持金も装備も無く途方に暮れるしかなかった。


「はぁ・・・・これからどうしよう・・・・・辞めちゃおうかなこのゲーム・・・。」


ログイン地点である王都の広場で黄昏るテッタ。その目の前で転送エフェクトが輝いた。


「到着っと、王都も久しぶりだなぁ。」

「ルドきゅんと王都デート。楽しみだわ!!」

「デートじゃねぇだろ!!そろそろ真面目にやれ!!」

「ぱぱ、しあおなかすいた!!」

「そうか、あとでなにかたべような。」

{のろけなら他所でやりなさいよ。}

目の前に現れた家族の様な連中、テッタが転移してきた人達に呆れた目線を向けた時、衝撃的な物を目撃した。


盾が2枚!?


男の背中にタワーシールドが2枚、ぶら下がっていたのだ。


「それで、先にどこに行くんだ?」

「まずは王城、その後は守備隊の訓練場ね。ちゃっちゃと行くわよー。」

「おー!!」(* ̄0 ̄)/ オゥッ!!


移動を始めた3人、テッタは慌てて後を追おうとしたが王城には入れず、訓練場で彼らが来るのを待つことにした。


盾使いの仲間として話を聞いてみたい。


始めて目撃した自分と同じ盾使い。その存在が自分を1流の盾職に育て上げてくれる等今のテッタは思っても居なかった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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