師匠と追放と弟子?
第118話
イベントが終了して俺達は城塞都市ルドに戻って来ていた。最近では都市に来る人も増えて開発が一気に進んでいる。
最初は地面がむき出しだった地面も石畳になり、掘立小屋同然だった建物もしっかりとしたレンガ造りの家に変化してきた。
その変化を支えているのが帝国技術の結晶であるゴーレムだった。リク市長(都市になって呼び名が変わった。)によって神器を使わなくても稼働できるゴーレムが作られ、もっぱら土木工事や高所作業に使われている。旅人達は重機みたいだと口を揃えて言ったとか言わなかったとか。
もちろん俺もシチート師匠の帰りを待つ傍らで発展クエストを受け続け、工事や建築に貢献している。
「おーい!!今日はここまでだー!!」
『あいよ。これ積んだら戻る。』
巨人になった時の最大身長が50mになったもんだから高所作業はもっぱら俺の仕事。人を手に乗せて移動させることもある。エレベーター代わりに使われちゃってるんだよ。まぁ実入りが良いから別に問題は無いけどな!!
「今日もお疲れさん。」
「ふぅ、しっかしここら辺も大分出来て来たな。」
工事していたのはゴーレムの残骸で作った城壁の傍、人やギルドが増えて住居や商業施設なんかを作る為に区画整理も入った。今やスカスカだった都市は人であふれ返っている。
「第2城壁の仕事も受けてるんだろ?そっちの進捗はどうなんだ?」
「神器の到着待ち。畑なんかは先行して移築したから後は神器を取り寄せて防御を固めるだけだとさ。壁は俺がサクッと作った。」
最初に開拓村にあった御神木だけだと今いるゴーレム城壁までしかカバーできない、広げるとなると新たに神器が4つ必要だった。この神器は普通のとは違ってそれ自体に何の力も無い。
だが親となる神器から力を受けると中継器の役割を果たす力はあった。正確には神器じゃないらしいがまぁ効果が一緒なら誰もそこまで考えない。その神器がまだ到着していない為、外に作った城壁まで開拓が出来ない現状と言うわけだ。
「さすがこの都市の守護神様だな!!」
「止めろよ恥ずかしい!!」
「だけどよ。この都市に住んでる連中はみんなそう思ってるぜ?都市を守る鉄壁の守護神!!旅人部隊の栄えある隊長様だってよ!!」
「だからそれが恥ずかしいってんだよ!何で市長も俺なんかを隊長にしたんだか・・・・、はぁ・・・。」
都市が大きくなると起こる問題とは何か?そう!!治安の悪化だ。良くも悪くもいろんな人がこの城塞都市に来た。そして、一部の連中が悪さを始めたんだ。
しばらくは自警団が率先して取り締まりをした。騎士団も協力してくれていたんだが何分流入してくる人が多すぎた。取り締まりの手が足りずに好き勝手される事を恐れた市長が守備隊の設立と団員募集を大々的に行った。
自警団はそのまま隊分けをされて守備隊に編入、職業として専任させて給料を出す事に。その最初期に俺達も声を掛けたって訳だな。あれは半分強制だったが・・・・。
でもって自由に動き回る旅人達のまとめ役になぜか俺がなったわけだ。城塞都市ルド第5守備隊通称【旅人部隊】、旅人だけで構成されたこの部隊の隊長を俺がしている。
「入隊してくる奴も増えてるんだろ?」
「あぁ、その分面接が大変だよ。」
城塞都市の守備隊に入れば特殊な職業に就ける!!何て噂が広まったもんだから募集もしてないのに入隊しようとする奴が後を絶たないんだよなぁ。
別に特殊な職業の旅人なんて一人も居ないんだよ。一部派生進化した職業はあるけれどそれは流派による派生であって別に守備隊が関係してるわけじゃないし。そもそも守備隊には流派は無いし。
勘違いした連中には皆ちゃんと説明してからお引き取り願っているんだけど、それでも情報を隠しているとか、俺達の悪評を広めてやるとか言う連中が大勢居て困ってるんだよなぁ。
まぁそういう時は我らが守備隊のトップにお越し願うんだけどね?
「おうルド、終わったか。」
「おう親父、終わったぞ。親父はこんな所で何してるんだ?」
「隊員がさぼってないかどうか視察だ。ったくなんで俺がこんな事を・・・。」
「文句は市長とカマーンさんに言ってくれ。」
そう、守備隊のトップは親父になった。元々自警団の隊長をしてたからそのまま守備隊の大隊長になった形だな。
これには市長とカマーンさんがタッグを組んでごり押した。店を続けたいという親父の意見を顔の所為で売り上げが上がっていないと捻じ伏せて、守備隊大隊長のポストに強引に押し込んだって訳だ。そしてそんな異動劇を繰り広げたカマーンさんがなぜか親父の店を切り盛りしている。
「ギルドの方は優秀な後任が来てくれたからそっちに任せたわ。私もそろそろ幸せを掴みたいのよ。」
なんて大分女らしくなった言葉遣いで言ってた。でも幸せを掴みたいのになんで親父の店で働くのかがいまだに分からん。
「それじゃあな、さぼってないで仕事しろよ?」
「今その仕事が終わった所なんだよ!!親父も気をつけろよ?」
「おう、じゃあな。」
手を振りながら歩いて行く親父。まぁあの人どうにかしようとしたら攻略組10組は必要だからな。聞く所によると市長が守備隊に親父を入れる時になんかの薬を渡したらしく、体の傷が治って戦闘力が全盛期に戻ったとかなんとか。俺の防御を簡単に抜いてくるあたり信憑性は高いと思ってる。パンチ一発でHP1割切るんだぜ?本当の化け物になったよ。
「それじゃあ俺はこれで、何かあったら詰所に来てくれな。」
「おう、依頼があったらギルドから詰所に送るよ。」
工事の現場監督であるゲンさんに別れを告げて、俺は守備隊の詰所に向かって歩き出す。皆もそろそろ戻って来ているはずだ。守備隊に所属したら守備隊クエストなる物が出て、街や都市の色々な問題を解決せにゃならんのよね。皆はそっちを解決しに行ってくれてる。
「・・・・・・・・~ん!!」
「ん?なんだ?」
なんか呼ばれたような気が?それに遠くから土埃撒き散らしながら何かが走って来る?
「・・・・きゅ~~~~ん!!」
「あの声は・・・まさか!!」
「ル~~~ド~~~~~きゅ~~~~~ん!!」どごぉっ!!
「ぶほぉっ!?」
俺の腹にヘッドダイビングをかましてくれやがったのはシチート師匠だった。
「ルドきゅんルドきゅんルドきゅんルドきゅん!!」
「止めろ馬鹿師匠!!俺の腹に顔を埋めてグリグリするな!!抱き着くな!!それで捕まったのを忘れたのか!?」
「ルドきゅんのにほひスーハースーハー。」
「止めろっちゅうに!!」ぺいっ!
「きゃんっ!!ルドきゅんのいけず!!久しぶりに再会なんだからちょっとぐらい良いじゃないの!!」
「それで長い事投獄されてましたよねぇ!?その所為で俺の修行も進んでないんだから止めるに決まってるだろうが!!」
度が過ぎる俺へのセクハラによって投獄されたシチート師匠。その所為で長い事牢屋暮らしをしていたはずなのに・・・・。なんで美人度が上がってるんだ?
「カマーンから差し入れが沢山頂いたのよ。」
「牢屋で自分磨きたぁいいご身分だな。弟子の修行ほっぽった何してんだよ!!」
「だってぇ、ルバートが中々出してくれないんだもん。あっ出すと言ってもあっちの方じゃないわよ?それはカマーンのし・ご・と♡」
「更生して無かったら俺でもそうするわ!!後なんて事言ってんだあんた!?」
ったくこの馬鹿師匠は全く変わって無いじゃないか!!
「あっルドさんお疲れ様です。大きな声が向こうの通りまで聞こえていましたよ?」
「ぱぱどうしたの?」
「あっリダとシアか。聞いてくれ、又この馬鹿師匠が「ちょっとルドきゅん!?」なんだよ阿保師匠。」
通りの向こうから走って来たリダとシアを指さしながら唇を震わせている色ボケ師匠。あっなんかこれ勘違いしてるな。
「いつの間に子供を作ったの!?私と言う物がありながらリダさんに手を出したのね!!くやしいぃ~~~~っ!?」
「あぁやっぱりそういう勘違いか・・・。」
「あの、シチートさん?これは違ってですね。」
「りだねぇちゃんがしあのままなの?そうだったらうれしいなぁ。」
「「違うからね!?」」
シアもさらにこの場を混沌に突き落とす発言するんじゃありません。ほら嫉妬に狂った悪魔が生まれそうだよ。っていうか投獄されてるうちに症状が悪化してないかこれ?
「きぃぃぃぃぃぃっ!!ルドきゅんの一番は私が貰うはずだったのにぃぃぃいぃ。」
「いやですから違うんです。シチートさん落ち着いて。」
「まぁいいわ。ルドきゅんの2番は私が貰いますから!!さぁ今から早速子作りしましょう!!リダさんとも作ったんだから良いですよね?いいに決まっています!!丁度良い事にこの先に宿もありますからそこに行きましょう!!さぁさぁさぁ!!」
「いやしねぇよ!?何言ってるのこの色魔師匠は!?ちょっ力強い!!引っ張るな!引き摺るな!!この子はシアだぞ!!種族進化してこうなったんだ!!」
「しちーとさんひさしぶり、しあだよー。」
その後暴走した師匠を宥めるのに時間が必要だった。まったく、本当に迷惑な師匠だよ。これじゃあやっと修行を再開出来るって喜べねぇよ・・・・。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
2022/5/18 いつも☆や♡、応援コメントや閲覧をありがとうございます!!今回は125話まで一気に上げますよ!!久しぶりに師匠を出したら常に暴走しているキャラになってしまった・・・・。でもこういう人を書いている時が一番楽しい(*'▽')
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます