第104話

「ほぇ~、ここがイベント限定ダンジョンか。」

「そうみたいですね。奥には海底都市に抜ける道もあるという噂ですよ?」

「さっきかかりのおじさんがいってた!!」


目の前にあるのは海岸にぽっかりと口を開けた洞窟だ。洞窟の前には結構多くの旅人が居て、次々に中に入っていく。洞窟の横にはゴーレムを貸し出す小屋が建てられてるな。


「あれがレンタルゴーレムか。」

「囮としてしか使えないので戦闘には参加できないそうですね。」

「難儀なもんだよなぁ。安くないんだろ?」

「ダンジョンのドロップを売った半分の金額が請求されるみたいですよ?帝国技術の応用ですからそう簡単には貸し出せないとか。」


まっ多分データ集めの一環でやってるんだろうけどな。


「まっ私達には関係ありませんね。」

「そうだなぁ。そういえばクリン達に声掛けなくていいのか?」

「まだアトラクションの方を回りたいみたいですよ?先行して様子を見てきて欲しいとも言われています。」

「それならまぁ良いか。」


まだイベント始まって初日だしな。明後日には俺もメガネさん達とダンジョン潜るし、下見には丁度良いか。


ぐぅ~「ぱぱ、おなかすいた・・・・。」

「おっと、それじゃあ早速潜るか。」

「何が出て来るか楽しみです。」


装備の方は水着のレンタル屋に寄って元に戻した。まぁそこで水着の購入を進められたので買っちゃったけどね。


「灯付けるぞー。」

「しあが!!しあがもつの!!」

「はいはい、頼むぞ。」

「うん!!」

「シアちゃんはいつも元気一杯ですね。」

「喋れるようになってさらに賑やかになったなぁ。」


ほんわかとした雰囲気が漂うがここはダンジョンの中だ、さっそく敵が前方から現れた!!


「“ダツ”かよ!!」ガンッ!!

「結構数が居ますよ。大丈夫ですか?」

「多分突撃しかしてこないだろうから大丈夫だと思う。」バチバチバチッ

「おさかなぴかぴかしてる。」

「あっ名前出ました。『雷突ダツ』だそうです。」

「わっかりやすい名前ですね!!『こっちじゃぁぁぁぁぁぁ!!』」


30匹くらいいるだろうか?すべての雷突ダツが全部こっちに向かって来る。


ガガガガガガガガガッ!!バリバリバリバリ!!


「盾に弾かれると地面に落ちるんですねぇ。雷は大丈夫ですか?」

「気絶してるのかもな。ダメージは無いぞ?盾が魔法にも強くなったから受け切れてるよ。シア食べていいぞ。」

「わーい!!いただきまーす!!」


服の下から蔓が出てきたと思えば、雷突ダツを捕まえて頭の花に放り込んでいく。


バリバリムシャムシャ


「骨ごと食べてるなぁ。」ガガガガガッ!!バリバリバリバリッ!!

「頭の花って大きくなるんですねぇ。ちょっとクリオネを思い出しました。」

「おいしーーーーーーい!!」


後は作業みたいなもんだ。雷突ダツの攻撃を俺が受けてシアが食べる。あっという間にダツは居なくなった。


「どうだシア?お腹いっぱいになったか?」

「ん~。たりなーい。」

「ならもっと奥に行きましょうか。」

「そうだな。」


その後は逃げ足の速いアジ、体が爆発するハリセンボン、なぜか女性しか狙わないタコ、逆に男しか狙わないイカなんかに襲われた。たまに別PTとすれ違うが、全員囮ゴーレムが壊れると探索を断念して帰っていく。


「やっぱりルドさんが居ると楽ですね。」

「今までの魔物って確かランダムターゲットなんだっけ?」

「公式だとそうなってますね。全部ルドさんがヘイト取ってましたが。」

「師匠が教えてくれた『守護者』の性能が良すぎるんだよなぁ。修正されないか心配だ。」

「ぜんぶおいしいよ?」


うん、今までの魔物は全部シアが食べちゃってる。つまり経験値もアイテムも全部シアの腹の中なんだよな。


「ちょっとはドロップ集めて帰るか。お腹の具合はどうだシア?」

「うーん、もうちょっとたべれるよ?」

「お腹いっぱいになったら私が倒しますね。」

「しあもおてつだいするー。」

「あぁそっか、シアも食べるだけじゃ無くなったもんな。ん?食べるだけじゃない?・・・・・・あっ!?あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「急に大声出してどうしたんですか!?ビックリしたじゃないですかもう。」

「どうしたのぱぱ?」

「シアは俺の友魔な訳だし、捕食以外でモンス倒す手段を手に入れたんだから俺もドロップ貰えるじゃないか!!」

「あっ確かに。」


これで諦めていたレアドロップの盾という可能性も見えて来たぞ!!攻撃出来る盾がどこかにあるって話だからな!!(使わないし売れないからって捨てられたみたいだけど。)


「ぱぱ?しあやくにたつ?」

「俺の友魔がシアで良かったよー。これからもよろしくな!!」

「うん!!」

「うれしいのは分かりましたが魔物が来ましたよ!!」


今はダンジョンの10階層を越えた所。潜っていた旅人の数が徐々に少なくなった場所になる。旅人の少ない分魔物と遭遇する確率は上がった。


「次は蟹か!!」

「ほわ~、おっきいねぱぱ。」

「ジャイアントクラブだそうですよ。親戚ですか?」

「蟹に親戚は居ねぇ!!そして何よりも『美味しそうだから、カニ鍋食いてぇ!!』」

「しあもたべたい!!」

「それじゃあ捕食以外で倒しましょうか。ジャイアントクラブの足がドロップするみたいですよ?」

「はーい!!しあがんばる!!」

「えぇ、頑張りましょう!!」


ハサミによる物理攻撃と、口から泡や水を出す攻撃を繰り出すジャイアントクラブ。だが残念な事に全部俺に完封され、シアとリダさんの攻撃で泡となって消えていきましたとさ。


「かにさんのあしでたー!!」

「おっ結構大きいな。」

「後で茹でて食べましょう!!身が詰まってて美味しそうです!!」

「焼くのも良いな。じゅるり、いかん、涎が。」

「しあも・・・(๑º﹃º๑)ジュル」

「これだけじゃ足りないのでもっと狩りましょう!!」

「そうだな!!今日は蟹パーティーして解散するか!!」

「かにさんいっぱいでておいでー!!」


その後は3人で蟹を探しながらダンジョンを練り歩き。沢山のジャイアントクラブの足をゲットした!!驚いたのはレアドロップ枠にジャイアントクラブの体があった事だ。つまり蟹味噌が手に入ったのだ!!


「日本酒どっかに売って無いかなぁ。」

「さすがに無いでしょう。そんなに美味しいんですか?」

「あー、苦手な人は苦手かな?匂いや苦みがあったりするし。でもこいつは新鮮そうだから大丈夫だろ。」

「はやく!!はやくたべよぱぱ!!」

「地上に帰ってからな。確か海岸にバーベキュー会場があったよね?」

「ありますね。じゃあ戻ってそこで蟹パーティーしましょう!!」

「「わーい!!」」


ダンジョンからの脱出は係の人に渡される帰還用のアイテムを使えばいい。戻り鰹のヒレっていうアイテムなんだけどね。良く捕れるから配ってるんだと。


あえて購入した水着に着替えてバーベキュー会場に赴く俺達!!結構利用してる人が多いな。


「ぱぱはやく!!こっちだよ!!」

「こらこらシア、走ってるとこけるぞ?ほら手を繋いでやるから。」

「かにさんたのしみ!」

「そうですね。楽しみです。」

「他にも材料購入したからな。蟹だけじゃないぞ?シアは野菜も食べる事。いいな?」

「しあなんでもたべるよ?」

「そうでしたね。」


俺達が借り受けた場所は海の近くの場所だった。木製のベンチと机、その机の中央に火を焚くコンロが備え付けられている。


「火を点けますね。」

「頼んだ。こっちは材料切っとくよ。シア手伝ってくれるか?」

「おてつだいします!!」


手早く野菜や肉をカットしていく。ジャイアントクラブの足には一本包丁を入れて殻をむきやすくして、茹でる方は殻を取って膜を外してっと。


「手馴れてますね?」

「一人暮らしが長いからね。人付き合いで貰った事もあるし一応ね。」

「そうなんですねぇ。あのっ、もし御不快でしたら答えて頂かなくても大丈夫なんですが、結婚はされてるんですか?」

「ん?別に良いよそれくらい。出会いが無くてね。結婚なんかは夢の又夢かなぁ。したいとは思うんだけど中々ね。そっちは?」

「あっ私まだ学生なんです。通信ですが。」

「おっそうなのか。年下だったかぁ。落ち着いてるから年上だと思ったよ。」

「あっそれでさん付けだったんですね。」


話をしながらもバーベキューの準備は進んでいく。シアもお手伝いとして切った材料をコンロの近くに運んでるよ。


「それじゃあ今度からはリダって呼び捨てでいい?俺の方もルドって呼び捨てで良いからさ。」

「えっでも年上の人に呼び捨て何て・・・。」

「せっかくのゲームだし、こっちじゃ年齢関係ないからね。気にしなくても良いんじゃないかな?」

「えっと、それじゃあ・・・ルド・・・さん!!やっぱり駄目です!!ルドさんって呼ばせてください!!」

「あははははは、無理しなくて良いよ。そっちの方が呼びやすいならそっちで良いから。それじゃあリダ。シアが待ちきれないみたいだから先に焼き始めちゃって。もう少しで下拵え終わるからさ。」

「じ━(ㅍ_ㅍ)━・・・」

「体全部使って伝えて来ますね。」

「元々シアのコミュニケーションは蔓ありきだったからね。」


さてさて、家の腹ペコ姫は満足するんだろうか?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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