第96話

坑道に入ってすぐ、俺達はミスリルアントと遭遇した。


『蟻って尻の部分を食べると甘いらしいぞ?』

「そんな無駄知識今いりませんから!!」

「それよりルドさん!!どんどん呼んじゃってください!!」

「早く呼ばないと倒す速度に追いつきませんわよ。」

(´~`)モグモグ (゚д゚)ウ-(゚Д゚)マー(゚A゚)イ-…ヽ(゚∀゚)ノ…ゾォォォォォ!!!!


「正確にはシアの食べる速度に間に合わないだろ?」

「せっかくミスリルがドロップするのですから沢山手に入れますわよ!!」

「僕の剣と鎧をミスリルで作りたいです!!」

「手甲と脚甲を作りますかね。」

「ミスリルは魔力補正が高いんですのよ?私は断然杖にします。」

「俺はやっぱり盾強化だなぁ。」

「ドロップしたミスリルは後で分けますね。」

「僕も渡します!!」

「私もですわ。」

「皆ありがとな。よっしゃそれじゃあもっと集めるぞ!!『こっち来いやーーーー!!』」

「「「うるさい!!」」」

ヽ(`Д´)ノウルサイゾ!


坑道で叫んだらそりゃ響きますわな。でも集めろって言ったのは自分等よ?だから我慢してくれ。


ミスリルアントの攻撃はルゼダのバフと回復で受けきれている。そしてなんと!!ミスリルアントの蟻酸攻撃もここで確認できた。通常の物より強力になってる気がする。まぁ無効化してるので唯の勘だけど。地面の溶ける速さが違う気がするんだよなぁ。


『酸は飛び散るから気を付けろよ。』

「そこはルドさんを信用します。『心通』」

「気を付けろと言いながら僕達の方に飛ばない様にしてますもんね。『光波』」

「私なんてルドさんの体で完全にガードされてますわ。『慈愛の光』」

『念の為だよ念の為。』


こちらの攻撃は相手にも通じてる。ダメージはちゃんと入ってるからね。情報通り魔法攻撃も使って来る。驚いたのは追尾式の魔法を多く使ってきてる事かな?まぁそれもヘイトを稼げる俺が居れば問題無い!!


「守護双壁流『守護者』『魔法御一行様ご案なーい。』」ガガガガガガガガガガガガガガ

「本当にチートですわね?『癒しの光』」

「この魔法、多分ランダムターゲットですよ?『心波』」

「『大回転光波』ルドさんと流派が凄い噛みあってますね!!」

『こればっかりは師匠に感謝だな。』

(´~`)モグモグ


その日1日で1000匹以上は倒しただろうか?半分以上はシアに食べられたがそれでも結構な量のミスリルが手に入った。手に入ったミスリルはPTメンバー(シアは除く)で最終日に均等に割り振る事が決定した。それまでは各自のインベントリで保管しておく。今までゲットしていた宝石はすでに分配済みだ。


「ふいー。結構減ったな。」

「まだ居そうですけどね。」

「一旦受付に報告してからログアウトでしょうか?」

「1時間後にまた潜りますわよ!!ミスリルを稼いでぼろ儲けですわ!!」

「お嬢様言葉で言う事じゃないよルゼダ・・・。」


受付さんに報告したら飛び上がって喜んでくれた。でもミスリルアントの総数は10万を超えると予想されているそうで、俺達が倒したのは微々たる数なんだと。


「増える原因を探さないとな。」

「崩落現場の奥が怪しいですね。」

「まだ見た事の無いお宝が眠っているはずですわ。ジュルリ」

「涎出てるよルゼダ。」

「うっしそれじゃあきちんと飯食ってやることやって休憩したら再度ログインだ!!それじゃあまあた後で!!」

「「「了解!!」」」


~・~・~・~・~

坑道の最奥。崩壊したその先にはとてつもなく広い空洞が広がっていた。そこに黒いローブで身を隠した2人が降り立つ。


「作戦は?」

「各部隊作戦行動を順調に消化中。敵対勢力の動きは緩慢。このまま制圧も可能かと。」

「戦力差は?」

「味方10万、敵1万、数の上でも圧倒しています。」

「気を抜くな。敵にどのような人物が居るか分からん。」

「失礼しました。」


黒ローブの男は地下空洞を見上げる様に視線を上げる。その視線の先、空洞の天井には無数の半透明な球体が付着していて。中で何かが蠢いている。少し視線を下げるとそこには巨大な腹部を有した巨大な蟻の姿があり、今もなお卵を産み続けている。


「材料は足りるのか?」

「特殊金属はまだ大量に確保してあります。しばらくは大丈夫かと。」

「敵の手に渡る可能性は?」

「もちろんありますが、貯蔵量は消費量を上回ります。心配は無いかと。」


報告を続ける部下に視線を戻し、何かを考える仕草をする男。そんな男に対して報告していた部下は質問をぶつける。


「なぜこのような回りくどい事を?我々が直接戦った方が早いのでは?」

「上からの指示だ。まったく、“仮想空間”だというのに命令に従わなければ行けない等難儀な物だ。」

「では今回の作戦の目的はやはり敵戦力の把握ですか?」

「その予想は当たっているだろう。」

「その為の“女王蟻”ですか。」

「そうだ。その為の“女王蟻”だ。」


2人が見上げる先、ミスリルと呼ばれる“この世界特有の”金属を捕食し、卵を産み続ける蟻の体はどうみても“機械”で出来ていた。


~・~・~・~・~

休憩終わって再度ログイン。おっ、今回は俺が最後か。


「ルドさん!!遅刻ですわよ!」

「すまんな、待ったか?」

「僕達も今来たところです。」

「ルゼダさんの気が急いているだけですよ。」

「さぁ早速潜りますわよ!!」

「管理事務所には行ったか?」

「先に行っておきました。坑道の中の様子は変わっていないそうです。」

「相変わらずミスリルアントが闊歩してるそうですよ。」


そっか、様子が変わらないならさっそく潜るか。数も増えてるだろうしな。


「よし!!じゃあ早速潜るぞ!!」

「「「オー!!」」」

(* ̄0 ̄)/ オゥッ!!


入り口付近にはさすがに敵は居なかった、前回潜った所よりもさらに奥に進んでようやくミスリルアントと遭遇する。


『ヘイト稼ぐから任せるぞー。』

「了解です!!『心波』!!」

「『大回転光波』今回も入れ食いですね!!」

「『回復結界』『亀甲陣』『チェンジフォーム』『急所突き』!!今回は私も戦いますわよ!!」

「大分ミスリルアントの対処にも慣れて来たな。急所が首の根元だと解ったし、殲滅速度が上がってる。安心して見てられるな。」


その時、坑道の脇に明かりが灯ったかと思えば炎の魔法がミスリルアントに向けて放たれた!!


「よっしゃ!!これでミスリルゲットだぜ!!」

「貴方達何者ですの!?」

「ずらかれ!!チャンスはまだあるぞ!!」

「こらっ!!待ちなさい!!」


逃げ出していく男達、どうやら旅人かな?赤落ちでは無いみたいだけど・・・。どこに隠れてた?感知に引っかからなかったな。


「きぃぃぃぃぃぃっ!!横殴りはマナー違反ですのよ!!」

「まぁまぁルゼダちゃん落ち着いて。」

「そうですよ。それにあいつ等にミスリルはドロップしませんよ。」

「まぁ火球程度じゃなぁ。」


さっき放たれたのはファイヤーボールの魔法だった。魔法と親和性の高いミスリルに対して魔法攻撃を撃った所で大したダメージはならない。モンスのドロップアイテムは一番ダメージを与えた人に行くからあいつらはミスリルをゲットする事は不可能なのだよ。


「まっ可能性を少しでも潰すんだったらこうするのが一番だしな。シア、食べちゃって。」

( ´ ▽ ` )ノ


シアは蔓を伸ばしてさっきの奴らから攻撃を受けたミスリルアントを捕食する。こうすれば経験値もアイテムも全てシアに吸収され手に入らない。


「それでも腹立たしいですわ!!」

「まぁ一番ダメージの出る近接攻撃が出来ないだろうし。同じことする奴が居たらシアに食って貰えばいい。何も問題は無いぞ。」

「それはそうなのですが・・・。」

「他所のPTを囮にするなんて立派なMPKでは?」

「僕も気分が悪いです。」

「まぁまぁ、こちらが被害を被ったわけじゃないし、それにそういう事をしてる奴らは最後に『『『『『『ギャーーーーーーッ。』』』』』』罰を受けるってな。」


そもそも今坑道の中はミスリルアントで溢れてる。そんな中完全に潜伏しながら行動するなんて不可能だよ。ご愁傷様。


「それよりどんどん倒してミスリル大量にゲットするんだろ?追加呼ぶぞ。」

「そうでした!!お願いしますわ!!」

「耳塞げよー『俺はここだぞーーーーーーー!!』」


さてどれくらい数が減らせるかね?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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