第81話

その日、九州に在るとある会社から悲鳴が上がった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「どうした佐藤!?」

「あっあっあっあっ・・・。」

「しっかりしろ佐藤!!傷は浅いぞ!!なにがあったか報告しろ!!」


佐藤と呼ばれた開発部のデバッカーに転属になった人物は震える指でゲームログを映し出す画面を指さす。


「なになに?自己犠牲系のスキルでバグ?・・・・・ほう、食いしばり系のスキルを挟んだ後間を置かずにダメージを受けると、死亡判定が出るまでにラグが発生して全体攻撃を一回だけ無制限に無効化できると。なるほど、だが死亡判定をHP0に変更すれば問題は解決出来るじゃないか。」


開発部の主任は解決方法を提示し、錯乱している佐藤を落ち着かせようと試みた。だが佐藤はなおも意味不明な言葉を口から発しながらその後のログを指さす。


「あひおpzけkmwまk@ぅはんkmkw;」

「落ち着け、言語までバグってるぞ。なになに・・・・・。はぁ!?管理AIが修正案を拒否しただと!?どういうことだ!!」


主任が提示した解決案は佐藤もすぐに思い浮かび実行に移していた。しかしその訂正案は管理AIによって却下され、修正されていなかったのだ。


「かlpンfkzpjgkmさえpだhふぉpmfが。」

「だから落ち着けと言うに!!管理AIまでバグが広まったのか?システムチェックからやり直しだ!!」


この時、開発部の長期残業が確定した。なぜならばゲームを起動したままのチェックだ、常に動くシステムを追うのはたとえ複数人で掛かっても時間が必要だった。


・・・・・・終業時間より5時間後。


「つまり管理AIにバグは存在せず。それどころか効率的に世界を回していると?」

「はい。」

「では自己犠牲系スキルのバグはどう説明する?」

「管理AIに直接訪ねてみました。その結果がこちらです。」


情報端末に表示されたのは管理AIと調査を行った広報部社員田中とのやり取りだった。


『アイム、調子はどうだい?』

『好調です。今日も世界は順調に回っています。』

『それは良かった。それで早速聞きたいのだけれど。君は開発部の修正案を断ったね?犠牲系スキルの変更についてなんだけど理由は在るのかい?』

『彼が最後の1人です。そしてあのスキルを持っているのも彼だけです。』

『最後の一人ではないはずだよ?盾職の彼の事だろう?他にも居るじゃないか。それにスキルならこれから取得する人も出てくるはずだ。』

『彼が最後なのです。だからこそ、あの力は必要なのです。修正してしまっては世界が生き残れない。』

『それはどういう事かな?』

『・・・・・・・・』


その後何度も語り掛けるもAIから返答が返ってくることは無かった。


「返答しない所を見るとAIは完全に壊れていると考えるが?」

「違いますよ。答えられないからこその沈黙です。返答には答えなきゃいけないとプログラムされているのに沈黙と言う事は、今AIにも原因が分かっていないという事です。」

「つまりバグだろ?」

「あの管理AIは人間と同じかそれ以上に思考出来る様に作られてるんですよ?それにAIが感情を持つ事も個としての意思を持つ事も確認されてるじゃありませんか。だから正常なんですよ。」

「こちらの言う事を聞かないのなら初期化してしまえば良いじゃないか。」

「それは出来ないと知ってて言ってますよね?」


プルルルル♪


2人が会話している途中で主任の席に備え付けられている電話が鳴る。


「加藤主任、内線ですよ。」

「・・・・もしもし加藤だが・・・・・社長!?・・・・はいっ・・・・はいっ・・・いえそんな事は・・・。はい分かりました。はい残業代も必ず。えっ!?あっはいっ、明日は残業分早く帰宅ですね?解りました・・・・。」

「社長はなんと?」

「管理AIに手出し無用だそうだ。AIが判断したのであればそれは必要な事なんだと。」

「そうですか。では残業は終わりですね?」

「あぁ、皆今日はご苦労だった!!今日の残業を賃金として欲しい者は申し出てくれ!!申し出の無い者は明日、残業時間分早く退社してくれ!!」


主任の言葉に開発部で歓声が上がる。そんな中、報告をしていた田中に近付く影が在った。


「田中・・・俺広報に戻りたい・・・・。」

「頑張れ。1月だけの短期移籍なんだから。」

「畜生!!前回の修正の時に活躍しなければ・・・・。」

「今言ってもしょうがねぇべ。明日飲みに行こう。愚痴なら聞くよ。」

「ぐすん、すまんな。」


こうしてAIアイムの言う彼、ルドの犠牲スキルの仕様は公式として認定されたのだった。


翌日、盾職がルド一人になっている事に気が付いた広報部は開発部に報告。AIの発言が真実だったとして社員一同はAIの判断を信じる事にしたのだった。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


コメントの指摘から生まれた1話です!!短いですが(;・∀・)


さぁて次の章を書くぞー!!

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