第65話

えー最寄りの街までエンヤさんの馬車で4日掛かります。途中ログインはテントの中もしくは馬車の中であれば行える仕様なんですなぁ。えっ?なんで突然その話をしたかって?今丁度1日の移動が終って野営するからです。道中のモンス?シアのおやつになりました。


「馬車に乗ってログアウトすれば馬車と一緒に移動できますけどね。」

「大体が馬車の中でログアウトするんでしょ?」

「そうですね。緊急で動かないといけない場合置いて行かれますから。」

「こらそこっ!喋ってないで手伝え!!」

「「「はーい。」」」


今回の野営、魔物の襲撃に限って言えば心配ない。魔物避けの魔導具何てものも持ち込んでいるからね。


えっ?置いてかれたらどうするんだって?護衛依頼や移動中何かであれば馬車がリスポンポイントに登録できるんだよ。馬車が無ければ出来ないけどね。


置いて行かれる状況って命の危機がある場面が多くて、プレイヤーは村の外でログアウトすると体が残っちゃう。まぁつまりほぼ死んじゃっているから馬車でリスポーンするって訳。


「問題は人相手なんだよなぁ。」

「ここら辺の赤落ちは一掃されていますから心配無いと思いますよ?」

「でも今一応戦争状態だろ?隣国が何か仕掛けて来てもおかしくないからなぁ。」

「人相手だったらルゼダが対処できますよ?」

「任せてください。『聖域結界』」


おぉ!!馬車とテントを囲って光の結界が張られた!!いや逆にこれ目立たねぇ?


「PTメンバーにしか見えませんから大丈夫ですよ。」

「あれ?口に出してた?」

「ルドさんは顔に出やすいですから。」

「はっきり書いてありましたね!!」


うーむ?このいかつい顔の表情を読める皆の方が凄いと思うんだが?


「ルド坊ちゃん。安心して下さい。賊が来ても私が対処いたしますので。」

「いや今結界張って貰ったから大丈夫。到着まであと3日で良いんだよね?」

「はい、間違いありません。むしろ今日はホース達の調子が良く予定より進んでいます。」


ほむ、それは良い事だ。早く着く事に越したことは無いからね!!


「坊ちゃんも良い仲間に恵まれたようですね。」

「どゆこと?」

「いえいえこちらの話です。」


エンヤさんがリダさんとルゼダさんに笑顔を向けている。2人は・・・・なぜ視線を逸らす?


「どうしたの2人共?」

「いっいえ別に?」

「えぇ、どうもしませんよ?」


ははぁん?移動中世話になりっぱなしも嫌だからって何かしたな?


「ありがとな2人共。」

「私は何も知りませんよぉ~?」

「私もなんのことやら?」

「どうして2人共目を逸らしてるの?どうして顔が赤いの?なんで?」


クリンだけが状況が分からなくて混乱してる。さてさて無事夜を抜けられるかねぇ?


ルドたちが眠りに付いてしばらく、もうすぐ夜が明けるというその時に森の中で動く影が在った。


「状況は?」

「村からの行商。人5魔5。見張り無。」

「のんきなものだな、見張りも立てないとは。奪取は?」

「不可。友魔。」

「ちっ。」


黒ずくめ達は森の中から野営をしている商人の姿を観察していた。


「仕方ない、物資を強奪して離脱だ。」

「要警戒。結界有。」

「ふん、これが在る。」


男の手には杭の様な物が握られていた。その杭には紫色の光が走っている。


「本国から送られて来た最新型だ。結界に掛からず通り抜けられる。では行くぞ!!」

「了」


話していた2人から遅れて10名の襲撃者が馬車に向かって走り始めた。一瞬結界が光り輝き、襲撃者を押し止めようとするが、持っていた杭から怪しい光が放たれると沈黙する。


「よし、1人1匹ずつ確実に仕留めろ。」


静かにナイフを抜いた襲撃者達は寝ているルドたちに近付いていく。そして命令を出していた男がルドにナイフを突き立てた瞬間。


ガギンッ!!


「なっ!?」


男のナイフは特製で、MINDに由来する攻撃をする物だった。その威力は20,000にも及び、大抵の獲物は一撃で屠れる武器として重宝していった。だがいまそのナイフは音と共に弾かれ、折れてしまった。


「あーやっぱり来たのかぁ~。はぁ、面倒くさいなぁ。」


ナイフが折れた事にショックを受け固まっていた襲撃者の耳に、寝ていたはずの男の声が届く。


よく見れば他の獲物を狙った奴等もその手に持っている武器が通じていなかった。


「気付いていたのか!!」

「そりゃもう、バッチリ感知に引っかかってましたし?」


そういうルドも実は内心バクバクの状態だった。


あっあぶねぇ!!もう少しログインが遅かったらやられてた!!明かりがもったいないからって早めに寝てよかったぁ。


「くっ!!」


襲撃が失敗し逃げ出そうとする襲撃者。しかしルドに近寄ったのは間違いだった。


「ほいっ『城壁』っと。」

「なっ何だと!!」


いつの間にか壁に囲まれ身動きが取れなくなる襲撃者。しかしまだ襲撃者は落ち着いていた。驚く事の連続だが彼にはまだ仲間が居るのだ。


「今すぐ解放しないと仲間がどうなっても知らんぞ!!」

「いやそれあんたが言う?こっちの台詞なんだけど。」


唯一開いている空に向かって視線を上げるとそこには蔓に捕まった仲間の姿が。


「はぁっ!?」


おかしい、連れてきた連中は自分が選りすぐって集めた者達だったはず。それがなぜこうも簡単に捕まるのか?


「不思議そうやね?」

「なっ!?巨人!!」


見上げていた空から先ほど相対していた男の顔が覗く。再度訪れた驚きの連続で襲撃者はとうとう冷静さを失っていた。


「残念、半が付くんだなぁ。んで襲撃を退けた理由ね?おれは優しいから語ってやろう!!」


それはログインしてすぐ、いつも発動している感知に集団で動く連中の影が映ったのだよ。だから俺はすぐにPTチャットを使って仲間に連絡を取った。


【皆インしてる?あっ動かないでね。】

【今入りました。どうしました?】

【事件ですか?】

【今来ましたー。】


丁度全員ログインしていたからシアにはエンヤさんの所に行って貰って、俺達は襲撃者を誘い込む餌になる事にしたのさ。


【という事で寝たままでお願い。】

【でも大丈夫なんですか?僕達無防備ですよ?】

【それに結界もありますし、襲ってこないのでは?】

【いや、これは襲ってきますね。敵意が増してます。】


リダさんの言葉で襲撃が確実な物になったのを知った俺達はまず身を守る事にした。


【一撃だけですが相手の攻撃を無効化する結界があります。それを使いますね。】

【あっ俺の分要らないよ。自力で何とか出来る。】

【シアちゃんとかホースバトラーにも結界をお願いします。】

【僕襲撃何て初めてです!!ドキドキしてきました!!】


これこれクリンや落ち着きなされ。動いたらバレちゃうってば。


【じゃあ相手が攻撃してきたら俺は一人捕まえるから他の人は殲滅しちゃって。】

【人を倒すのはちょっと・・・。】

【僕も苦手です・・・。】

【あぁ、だったらシアの所に誘導したら捕まえてくれるよ。】

【それが良いかもしれませんね。情報源は多い方が良いでしょう。】

【そうしてください!!】

【お願いします!!】


そう言う事ならシアー?そっちに敵誘導するから蔓を地面に這わせといて。あっ全員捕獲で、暴れたら食べちゃっていいよ。

(`・ω・´)ゞ


「と言うわけだな。」

「聞いても何一つ分からん・・・。」


まぁ情報全部話すわけ無いし?俺達のステータスの情報が抜けてるんだから分からなくても仕方あるめぇ。


「さてと、ニノヒ帝国の間者さん?情報をキリキリ吐いて貰おうか。じゃないとこうなるよ?」

「きゃーーーーーっ!!止めてーーー!!」


悲鳴が上がった方を見ると襲撃者の1人が徐々に齧られて花に飲み込まれて行くところだった。


とかだったら良かったんだけどねぇ?えっ?違うのかって?ただシアが蔓を使って全身くすぐってるだけですよ?でもシアの蔓って自在に細かい毛みたいなのが生やせるからそりゃもうくすぐり地獄よ。ほらやられてる人も全身から汁噴き出して悶えてる。


「ひぃぃぃぃたしゅけてぇぇぇ!!あんっ♡そこはらめぇぇぇぇ♡」

「・・・・ちょっとエロいですね。」

「何言ってんのクリン君?あれは拷問だから、いいね?」

「でもあの捕まっている人女性ですよ?」

「ルドさん最低です。」

「ルドさん?狙ってやりましたね?」

「選んだのはシアだから!!俺は無実だ!!」

「ルド坊ちゃん、私はどんな性癖でも坊ちゃんの事を慕っていますよ?」

「その慰めが一番心に来るからぁぁぁぁっ!!てか本当に無実なんだぁぁぁぁぁ!!」


城壁に捕まった襲撃者が俺達のやり取りをポカーンとしながら見てる。いや見てるだけじゃなくてさっさと情報吐けや!!もういいシアちゃん!全員くすぐりの刑に処してやりなさい!!


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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