第57話

「ここら辺はどうかな?」

「そうですね、良いと思います。」


俺達は今荒れ地になっている場所まで移動して来ていた。武術大会2回戦の会場ってすごいのな。元々いた森のフィールドの他に砂漠や氷雪、溶岩に荒れ地と5つの環境が違うフィールドに別れてたよ。


各フィールドの状況を見ながら見つからない様にこそこそと移動して来て、奇襲を受けにくい荒野に陣取ったって訳。途中襲撃は無かったけど・・・。たぶん誰か暴れてるのかな?


「さてと、そろそろ戦わないと失格と言われても不思議じゃないね。」

「そうですね。私達が戦ったのは一組だけですから。それに仕留めたのは一人だけ。評価としては下がると思います。」

「だよね。」


にしても奇襲を受けずらい荒野だっていうのに誰も居ないのはなんでだ?遠距離攻撃や魔法を使う人なんかは居ても良さそうなもんだけど・・・・。


「あっ、ほいっと!!」ガンッ!!

「攻撃ですか?」

「うーん?人じゃないかなぁ?ほらこれ見てよ。どう見ても生物的な棘だよ。でも友魔って使えたっけ?」

「大会規定では友魔の使用は明言されていなかったと思いますよ?」

「ほむ、じゃあ違反ではないのかな?」


ならシア呼んじゃうか?あっ駄目だ、師匠から友魔の使用を禁止されて鈴預けてあるんだった。


「おっとあぶない!!」ガガガンッ!!

「どうして攻撃が分かるんですか?この棘半透明で目視しずらいのに。」

「ん?あーほら城壁有るじゃない?あれ使うのに空間把握する術を覚えなきゃいけなくて、それで常に自分の周りを把握する癖が付いちゃったんだよね。システム的に言えばMIND依存の感知結界みたいな?まぁスキルにはならない技なんだけどね。」

「このゲーム、スキルやステータスに出てこない物が多すぎますよね。」

「そうだね。」ガガガガガンッ!!「鑑定スキルなんかも」ガガガガガガガガガンッ!!「知識や技術が無いと扱いきれないみたいだしね。」ガガガガガガガガガガガガッ!!


えぇい鬱陶しいなぁ!!っていうかこんなに攻撃を繰り返してくるモンスってなんだ?開拓村付近で出るモンスじゃないだろ。


「で攻撃して来てる奴の正体分かる?」ドガンッ!!

「大丈夫なんですか?盾以外の場所にも当たっている様に見えますが。」

「あぁ平気平気、体感威力は一発500くらいかな?これくらいなら生身で受けてもダメージ無いよ。」

「そうですか。攻撃してきている人はあの岩の中ですね。」


リダさんが指さした先には大きめの岩が二つ、寄り添って鎮座している場所だった。丁度間に隙間が空いていて、人ひとりなら入れそうな場所がある。


「もう一人は居るかな?それとも一人だけかな?」

「ちょっと待ってくださいね・・・・。えっ?嘘?」

「どしたの?」

「もう一人、空に居ます。」


リダさんが指さした先、そこには小さな黒い点。あー、もしかして種族が鳥人族の人かな?種族選択リストには在ったけど見るの初めてだわ。


「多分鳥人族だね。空が飛べて、スピードは速いけど防御は脆い。そんな種族だったはず。」

「では1人がスナイパーでもう一人がスポットマンと言う感じですかね?」

「そうだろうねぇ。だから荒野に人が居なかったのか。空から偵察されたら丸見えだし、これだけの頻度で攻撃されるならそら逃げるわなぁ。」ガガガガガガンッ!!


さてさて、どうやって対処しますかねぇ。


「もうちょっとあの岩に近付けますか?」

「ん~。目算500mくらいかな?多分相手の攻撃はこの距離だから威力が下がってるんだと思う。近づいたら俺はともかくリダさんは一撃で沈む可能性があるけど大丈夫?」ガインッ!!

「そこはルドさんが守ってくれるんですよね?」

「まぁそれが盾職の仕事ですから。ではエスコートしますよお嬢さん。」

「ふふふ、ではお願いしますね。」


さてと、移動の間にMPは回復したから使っときますかね。


「守護双壁流『城壁』×5」


近付くためにバラバラに壁を配置。その壁を伝って近づきましょうかね。


バガンッ!!バガンッ!!バガンッ!!がらがらがら・・・


「おっと、一番近くに出した壁が壊されたか。」

「という事はルドさんのDEFを抜けるって事ですね。」

「そう言うこったねぇ。あっ次のも割られた。3枚目は・・・大丈夫そうか。あの距離が耐えられる限界って事か。」


奴さんの攻撃は結構強いみたいだね。多分友魔だし、テイムした主人もどっかに潜伏してる可能性もあるか。まぁまずは一番の脅威の排除を優先にっと。


「あそこまで行ければ何とかなると思います。任せてください。」

「おっけ、しっかし空飛んでる人は攻撃してこないんだな?奇襲警戒してるんだけど動く様子が無いね。」


さっきからずっと頭上をくるくる回ってるだけで降りても来ないんだよなぁ。


「・・・・。動かないんじゃなくて動けないみたいです。」

「ほえ?そりゃまたどうして?」

「すみません細かい所まではまだ読めなくて・・・。でも動きたくても動けず同じところをグルグル回るしかないみたいですよ。」

「誰かに風の魔法で閉じ込められたのかな?」


まぁだったら奇襲を警戒しなくていい分だいぶ楽だね。


「さてと3枚目まで来たけどどうする?」

「こうします。『心透』」


おぉ!!リダさんの姿が消えた!!隠密スキル何ていつの間に取ってたの?


「では行って来ます。」

「任せた、危なくなったらいつでも咆哮入れるよ。」

「お願いします。」


たぶん行ったかな?すごいねぇ、感知にも引っ掛からないとか強すぎじゃない?奥義と言っても差し支えないと思うよその技。


ドパンッ!!ドパンッ!!ドパンッ!!


「音が・・・変わった?」ビシッビキィ!!「やべっ!!『城壁』+3!!」


多分相手さん、連射だと埒が明かないと踏んで一発の威力を上げて来たな。危うく壁が壊される所だった。今は3枚追加で重ねる様に出したからもう少し時間が稼げると思うけど・・・。ちょっと下がるか?でもここから動いちゃうと咆哮の射程範囲外れちゃうんだよなぁ。


リダさん一人に負担を掛けるのも情けないし、ここで粘りますか。


リダ視点


「居た。」


居ましたね。岩の隙間にハリネズミの様な友魔とその友魔を抱えるプレイヤーです。あの友魔目がくりくりしていて可愛いですね。やっている事は結構えげつないですけど。自身の針を口に含んで吐き出しています。恐らく威力を上げる為にしているのでしょうね?この方法では先ほどの連射力はありませんから。


「くっそ!!あの壁固いな!!モグ!!威力最大だ!!」

「モグー!!」


あっ鳴き声もカワイイ・・・・。はっ!?こんなことをしている場合じゃありません!!速く仕留めないとルドさんが危険です。



相手にはまだ気付かれていない様子、でしたら最初の戦闘の反省を生かして静かに相手の後ろを取って。


「きゅっ?」

「あっかわいい。」

「誰だ!!」


はわわわわわ、やってしましました!!あまりにも可愛い仕草だったのでつい!!


「このっ!!やれモグ!!」

「モグーーッ!!」シュパパパパッ!!


あぁ、目をつむって拳を握って力を入れる姿もかわいいですねぇ・・・。って駄目です駄目です!!今は戦闘中!!心を落ち着けないと!!


「このっ!!糞っ!!当たれ!!」

「モグッ!!モグッ!!モグー!!」


駄目です!!可愛すぎて落ち着けません!!今日一番心を乱されてしまっています!!あぁなでなでしたい!!甘やかしたい!


「ちょっおまっ!目がやべぇぞ!!近づくなっ!!」

「も、もぐぅ~。」


しょんぼりした顔もキュートです!さぁその子を抱っこさせてください!!


「ひっ!!」

「モグッ!!」


あぁ!!逃げないで!!触らせてーーーー!!


「何やってんのリダさん。」

「グフゥ。」

「モグモグモグ!!」


はっ私は一体何を!?


「何をじゃないでしょう?なんか今違う意味で怖かったよ?そりゃこいつ等も逃げ出すって。」

「すみません、その子が可愛くてつい・・・。」

「まぁ確かに可愛いけどね?今は大会中だよ?気を抜かない様に。」

「すみません(´・ω・`)」

「ほらちゃっちゃと止め刺しちゃって。主人が居なくなれば友魔も一緒に消えるから。」

「その前にちょっと撫でても?」

「いい加減怒るよ?」

「はいっすぐやります。」


あとで絶対フレンド交換してもらいますからね!!そしたらその友魔をどこで捕まえたか吐いて貰います!!覚悟してなさい!!


「ヒィッ!!」((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

「もぐぅ~。」

「どうでもいいけどなんで鳴き声がモグ?」


シールドフィスト 撃破数 2(友魔+1)


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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