第56話

どうも皆さんお久しぶりです。リダです。私は今武術大会に参加しています。


どうやらお爺さん達は私達が自分の実力をきちんと把握していないと思ったみたいでして。師匠命令で強制的に参加させられたんです。あっ私達と言ったのはルドさんと一緒にタッグ戦に参加しているからですよ?


この大会お爺さん達も参加するという事で私はしばらくルドさんと一緒にシチートさんの所で修行していました。シチートさんは線も細く執事なんかやるととても似合いそうな中性的な顔をしたイケメンさんでした。とても変わった人ですが・・・・。


最初は不安でしたが。ルドさんが関わらなければとても良い指導者だと思います。丁寧に指導もして頂き、MINDを使った攻撃にも精通していらっしゃったので、私の心義夢想流の腕前も飛躍的に上昇しました。


なぜかルドさんと絡むとポンコツになってしまい人様にお聞かせ出来ない言動を取る事が多いですが・・・・。


後でルドさんに聞いたら探していた唯一の旅人の弟子がルドさんで、その愛情が暴走してあのようになっているそうです。その証拠にルドさんが修行を始めると真面目にアドバイスしていますからね。


まぁその話は置いといて、そのおかげで私は二つの新たな技を授かりました。今回の大会はその技を実戦で使用する為の場所だと思っています。


「心義夢想流『心駆』(しんく)」


覚えた技の1つはこれ。全身に気持ちを行き渡らせ、現実に理想の動きを体現する技です。人って思った動きと実際の動きに差異が在るんですよ?だからこけたり何かにぶつかったりするんです。この技はその差異を失くして心のまま自由に動き回る技です。


「心義夢想流『心眼』(しんがん)」


この技はお馴染みですね。心の目で見て相手の動きを読む。心義夢想流ではその先を行きます。心の目を飛ばし、相手の動きと“心”まで読む。未来予知に近い能力になります。まぁ私はその力をまだ十全に使えていませんが・・・。せいぜい相手の位置と動くかどうかが分かるくらいですね。


「見つけた。」


ルドさんが用意してくれた壁を使い、目標の木に近づきます。対象はまだ木の上から動いていませんね。動く気も無いようです。


「さてルドさんが作ってくれた壁はここまでですか・・・。」


目標の木は今いる壁からさらに20mほど奥です。私が動けばすぐに矢を射かけて来るでしょう。


「ふぅ~。」


こういう時に焦ってはいけません。落ち着いて、自分の心を制御下に置いて・・・・。静かな水面の様に心を静めて・・・。そうですね、ここはあの技にも挑戦してみましょう。実戦で使う事が一番の修行だとお爺さんが言ってましたからね。


お婆さんに教わり、何度も挑戦した技ですが未だに成功した事はありませんが・・・。相手に気付かれずに近づくのでしたらこの技が一番適任でしょう。使えればですが。


落ち着けた心を体の外に・・・・。薄く広く広げていく・・・・。くっ難しいですね。もう一度最初から・・・、心を静めて薄く広げて・・・・自分の気配を広げた心に溶かし込んで希釈していく・・・。


「心義夢想流『心透』(しんとう)」スゥ・・・・


この技は自身の気配を周囲に溶け込ませて相手から隠れる技です。成功すればその場にいるのに相手には気付かれません。盗賊のスキル『ハイド』に近い技ですね。初めて成功しました。おっと感動に打ち震えて心を乱してはいけません。このまま相手に近づきましょう。


ゆっくりと静かに・・・心を落ち着けたまま・・・・焦らない様に・・・。うまく行っていますね。相手の姿はこちらに見えていますが、彼方からは見えていない様です。今も姿の見えない私を探しています。そんな時ルドさんが居た方から大きな声が聞こえてきました。


「貰った!!」


いけないルドさんが危ない!!っ!?しまった!!


「いつの間にこんな近くに!!死ねっ!!」


ルドさんが襲われていると知って心を乱してしまいました。まだまだ私も修行が足りませんね・・・。ですがこれだけ近付けば心透が無くても十分攻撃出来ます!!


「くそっなんで当たらないだ!!はぁっ!?樹を垂直に上るなんて化け物かよ!!」


これが心駆の力です。心のままに体を動かせるとこういう事も出来る様になるんです。飛んで来た矢を躱しながら、このまま相手が居座っている木の幹を駆け上って相手に近付きます!!


ルドさんなら大丈夫、今も何かを言い合っている声が聞こえるので無事でしょう。ならば今は目の前の敵を叩くのみ!!


「こんのっ!!近づくな!!」


射手がナイフを抜いて斬りかかって来ます。まだ防御の技は教えて貰っていないのでこれは躱す事で対処。大丈夫、相手に殺気を向けられても、怒りを向けられても落ち着いて対処出来る!!


「心義夢想流!!『心通』!!」とんっ

「( ゚θ゚)・∵. グハッ!!」


浅いっ!!攻撃されたことで焦ってしまいました!!十分に溜めが作れませんでした!!


「この野郎!!」

「くっ!!」


密着しているこの状況、しかも私は技を出した後の硬直でまだ動けません。相手のナイフは私の首を狙う軌道。どうにか対処を・・・。


「咆哮『こっちじゃ《゚Д゚》ゴラァァァァァァァァァァァァア!!』」


そんな時、私の目でギリギリ見える距離まで来ていたルドさんがヘイトスキルを使ってくれました。スキルを受けた射手のナイフの軌道は首を狙う軌道から大きく外れ私の肩を切り裂きます。ダメージが入りましたがまだ許容範囲内!!その隙に私の硬直が解けました。ここで確実に仕留めます!!


「ふっ!!」


今までは言葉をトリガーに発動していた心通をぶっつけ本番ですが思考で制御します。


言葉で発動していたら間に合わない!!


すでに相手はナイフをもう一度振り始めています。ルドさんがくれたチャンスを逃すわけには行きません!!想いを乗せ、拳を相手に叩き込みます!!


「せいっ!!」とんっ

「グフッ!!糞が!!」


ふぅ、何とかなりました。心通を受けた射手はポリゴンになって消えていきます。そこにルドさんが近づいて来ました。


「おっ仕留めたね。いやぁ咆哮が間に合ってよかったよ。遠くでリダさんに攻撃が迫ってるのが見えて咄嗟に放ったけど、役に立ったようで何よりだ。」

「危ない所でした、助けて頂きありがとうございました。」


ここに居るという事は襲撃者を撃退したのでしょう。レベルが上がらないというハンデを背負っているのに凄いと思います。大会に出場している選手はレベルが100に近い人が多いんですよ?それなのに見た所ダメージも受けずに撃退しています。


一緒に修行している最中いつも真剣に取り組んでいるルドさん。攻撃力が欲しいと言いながらも、盾職のスキルまでちゃんと鍛えていました。彼がレベル1でも戦える秘密がそこに有るのではないかと最近思う様になりました。


「それなら良かった。でもごめんね、襲ってきた奴を捕まえようとしたんだけど、足の速い奴で逃げられちゃった。」

「ルドさんはDEFとHP以外初期値なんですから仕方ないですよ。」


恐らくルドさんのレベルが上がっていたら、相手は何もさせて貰えずに倒されていたんでしょうね。そんな気がします。


「さて、さっきの咆哮を聞いて他のタッグがこちらに向かって来ているかもしれないから、今度こそ移動しよう。」

「賛成です、少しダメージを貰ったので態勢を立て直したいですね。」


この大会、最初は不安で一杯でしたがルドさんの盾と私の拳を合わせれば結構いい所まで行けるのではないかと今は思っています。そして最後にはお爺さん達相手に戦ってみたいです。だって師匠を越える事が弟子として最大の恩返しですもんね?


シールドフィスト 撃破数 1


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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