ペット?相棒?大暴走!?
第35話
『Another Life Online』が発売されそろそろ2週間が経とうとしていた。ここは九州にあるセカンドライフ社の社内。『Another Life Online』の生みの親たちが日夜戦いを繰り広げている戦場である。
「斎藤さーん!!修正パッチ上がったよー!!」
「ありがとうございます!!メンテ必要ですかぁ?」
「サイレントで修正入れれるから大丈夫~。告知だけ出しといてー。」
「了解ですー。」
「こっちまだ修正ファイル来てないぞー。」
「すみませーん、俺の所で止まってまーす。今流しまーす。」
「管理AIの拡張どうなってる!」
「いま6割です!夕方には出来ます!!」
「急げ!!プレイヤーの行動力が予想を上回っているぞ!!」
「昼には上げます!!」
そんな戦場の隣、開発部と共同で使っている部屋に広報部が在った。そこで2人の男が戦場を見ながらのんびり休憩していた。
「開発部はいつも大忙しだなぁ。」
「そりゃそうでしょ。今だに細かいバグや仕様の変更を続けているんですから。それにあの世界は常時動いている世界です。メンテなんてしたら何年経過しているか分からないんですよ?」
「難儀な物作ったよなぁ開発部。」
話している2人は広報部の田中と佐藤。2人は『Another Life Online』の世界を監視し、宣伝に使える素材が無いかを常に探す仕事をしていた。もちろん異常やバグを発見したら報告する義務もある。
そしてセカンドライフ社の総力をもって作り上げた『Another Life Online』は開発部曰く、本当にもう一つの世界を作り上げてしまったと豪語する物だった。その為安易にメンテナンスが出来ず、細かい修正をリアルタイムで管理AIに送り適用してもらうという方法を取っている。つまりじっくりとデバックや問題点の洗い出しが出来ず、自転車操業が続いていた。
「いつか誰か倒れるんじゃないか?」
「管理AIが大まかに修正掛けてくれるそうでそこまで負担じゃないそうですよ?」
「あのAIも謎だよなぁ。突然社長が持って来て使う様にって鶴の一言だもんな。」
「まぁそのおかげでこのゲームが出来ましたし。出所ははっきりしてるんでしょう?」
「軍部の開発部が試験的に作った失敗作だとよ。元々は国防用のロボ制作に使うつもりだったらしいぜ?まぁ自国を防衛するのに徴兵してない日本からしたら欲しい戦力だわな。」
「まぁ最後はどうしても人の手が居るってんでお蔵入りですもんね。」
「まぁそう言うこった。おかげで俺達は御飯食えてるわけだけど。」
「お前等いつまで休憩してるんだぁ。そろそろ仕事に戻れー。」
「あっすみません主任。すぐ戻ります。」
「半年したら公式PV出すからな、いい場面とかあったら欲しいからちゃんと見ててくれよー。」
「了解です。」
休憩から戻った2人は監視業務に戻る。ゲームの中では3ヵ月が経とうとしていた。
「しっかし開拓村がほとんど全滅するとはな。」
「当初の予定では8割残る計算でしたよね。」
「あぁ、PK(プレイヤーキラーの略)達の動きを読み切れなかったからなぁ。」
「田中さん、PKじゃなくて赤落ちもしくはレッドネームかレッドプレイヤーですよ。間違えたら開発部がカンカンに起こるんですから気を付けてください。」
「おっとすまんすまん。で何の話だっけ?」
「開拓村の話ですよ。」
「あぁ、ほとんどの開拓村が滅ぼされて一部のイベントに支障が出た話か。」
「本当なら順番に襲撃イベントを起こして徐々に開拓村を減らす予定だったんですから。」
「で、最後は超強力な魔物が街を襲い一致団結して街を守るだったか?」
「そうですそうです。でその最後に出てくる魔物の素材を使って開拓村を再建。各村に特色を着けてシークレットクエストを仕込み、特殊転職の条件を満たす予定だったんです。」
「それが全部おじゃんか。」
「それどころか超強力な魔物が一部狩られちゃいましたから。」
「ルド村だっけか?なんであそこにあんなに戦力が集まってんだか。」
「村長が継承権がないとはいえ王族の血筋ですからね。恐らく護衛の役目もあったんでしょう。そこら辺は我々が干渉できませんから。」
「全てはAIのお導きってか。」
「あの世界ですと神ですけどねぇ。」
「しっかしあのルドってプレイヤーも良く続けられるよな?攻撃力0でレベルも上がらないんだろ?」
「そっすよ。スキルの熟練度は上がりますけどレベルがあがらないからSPも確保出来なくてスキルの取得が出来ません。なんで続けてるのか不思議なくらいです。」
「その分村の住人の好感度は高いけどな。レベルも高いし。」
「そうなんすよねぇ。まさか住人の仕様にこんなに早く気付かれるとは思わないでしょう。開発部も嘆いてましたよ。次のイベントルド村は余裕で切り抜けるでしょうね。」
「むしろ全部かっさらわれないか不安でしかねぇよ。」
ゲームの画面に目を向けながら雑談を続ける2人。そんな時佐藤が何かを発見する。
「噂をすればルドさんですね。今日も村の発展クエスト受けてますね。まぁ採取がほとんどですが。」
「ATKもMGKも0なのは開発部のお遊びだったか。」
「そうですね。ランダムを選ぶくらいならこういうのも楽しめるだろう!!っていうノリと勢いで追加した仕様らしいです。可愛そうですよねぇ。」
「そんな状態でも楽しんでるんだから俺は尊敬するね。盾職もほとんど居なんだろ?」
「全プレイヤー人口の1割です。双盾使いに至ってはルドさん一人ですね。」
「火力職でも盾の代わりが出来ちまうんだから仕方ねぇよな。」
「双盾使いなんて本当は2次職ですからね。1次職である程度攻撃スキルを揃えてから転職する物ですから余計に苦しいでしょう。」
「ほんと良くやるよ。」
その時突然広報に大きな声が響き渡る。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!それはまだ開放する予定無いんだよ!!フラグ踏むんじゃないよってうわぁぁぁぁ!!なんでそのアイテム持ってるのぉぉぉぉぉ!!」
「どうした小鳥遊っ!!」
「主任!!まずいっす!!『魔女』が友魔システムのフラグ踏みました!!」
「なにぃっ!!それは発売1ヵ月の目玉企画だからしっかり隠してたはずだぞ!!」
「それが『魔女』が魔法使いだったら使い魔が必ずいるはずと王都を隅から隅まで探しまして・・・・。フラグアイテムを王都所属の魔女から貰ってたみたいで・・・。」
「友魔の鈴をか!?なんでそんな事になるんだ!!あの魔女は誰にも心を開かないはずだろ!?」
「先行特典の魔女の帽子とそれに合わせてローブなんかを揃えて、バッチリ魔女の恰好をしていたから仲間だと思われたみたいです。ログにも出てます。」
「かぁーっ!!だからイベントに関係しそうなアイテムを配布するなって開発部に行ったんだ!!どうするんだこれ!!」
「すでにシステムが走り始めてます。あっ管理AIがワールドアナウンス出しましたね。」
「こら開発部!!これどうするんだ!!目玉企画無くなったぞ!!」
「こっちはそれ所じゃねぇんだよ!!あぁ畜生!!これじゃボスまで友魔に出来ちまう!!次の襲来イベントが来る前に急いで修正するぞ!!襲来のボスクラスがテイムされたら洒落にならん!!」
「記念イベントも新しく作ってくれるんだろうな!!もう告知は出しちまって変更できないんだぞ!!」
「それなら腹案でなんとかする!!とりあえず広報もこっち手伝え!!」
「おう広報部全員開発部の補助に入れ!この窮地を全員で乗り切るぞ!!」
「「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」」」
『Another Life Online』に関わる部署に平和なんてものは無いのである。なんせもう一つの世界、何が起こるかは誰にも分からない。それでも関わった人間は誰一人投げ出そうとしない。なぜならば、彼らはこの世界を愛しているからだ。そこに居るプレイヤーも含めて。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
運営側をちらっとお目見え。セカンドライフ社は和気あいあいとしたホワイト企業です。ホントダヨ?
コメント貰ったから急いで書き上げたわけじゃないんだからね!!
2022/4/7 SFカテゴリー週間ランキング20位に入りました!!(*’ω’ノノ゙☆パチパチ
それもこれも☆や♥️、コメントで応援してくださる皆さんのお陰です。ありがとうございます!!
さぁ続き書くぞー!書くことが恩返しだ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます