第23話

そして運命の日、広場に多くの人が光と共に降り立った。


村長の命令で村人たちは普段の生活をするようにと言われていた。こっそりと旅人を見に行った連中(俺も含め)は無事に旅人が降り立つ事が出来た安心感を感じながら持ち場に戻った。


だが旅人に女子供が含まれている事に少なからず動揺していた。もし魔物に襲われればそれは命のやり取りだ。相手は確実にこちらを殺そうと狙って来る。熟練の兵でも気の病に陥るような殺意に耐えられるのだろうか?


だがそんな心配は杞憂だった。旅人たちは喜々として魔物に挑み、時には死に、時にはそれを打ち倒していった。旅人は本当の意味で死ぬことは無いと神託があったが、広場で復活する旅人を見てこう言う事かと納得する事になる。


そんな中でおかしい連中が居た。魔物を倒しに行かず、村をうろうろする連中だ。俺の店にも何人か来て、挨拶から始まり俺の事を根ほり葉ほり聞こうとしやがった。


商品も買わずに色々聞き出そうとする旅人に俺は我慢の限界だった。たとえ許されたとはいえ、家族の不幸を、あの苦い思いを語らせようとした旅人に思わず買わないなら出て行けと怒鳴り散らし、追い出した。


俺が期待するのは魔物を減らしてくれる旅人だ。だからこそさっさと魔物討伐に赴いて苦しむ人を助けて欲しかった。


そんなイライラした気持ちの時にそいつは現れた。筋肉が盛り上がり、いかつい顔をした大男が。そいつは何を思ったのか店の商品について次々に俺に質問してきた。


又この類かと追い返そうとしたが、そいつはお構いなしに商品について質問し、最後には全部の商品の説明を聞き終えて感謝しながら出て行った。


「なんだったんだあいつは・・・。」


自慢じゃないが俺の顔は怖い。元々がごつい顔をしていたのだが、度重なる魔物との戦闘でさらに凄みが増してしまった。旅人もまず店にきて俺の顔を見て腰が引け、怒鳴れば子ネズミの様に逃げ出していった、だがあいつはそんな事は無かった。終始笑顔で本当に楽しそうに商品について聞いて行った。


その後もちょくちょく店に顔を出すようになる。他の連中がさっさと街に行ってしまうにも関わらず、微々たる収入の村クエストを受けながらそいつはずっと村に居て、悩みや愚痴を俺に対して言い続けた。


それを聞いてやっていたら最初は店主と呼んでいたはずなのにいつの間にか親父と呼ばれるようになっていた。


人から見れば怖い顔をしているくせにやけに人懐っこいそいつが、あまり旅人もいつかない店に遊びに来てくれる。自分の弱い所をさらけ出し、俺のアドバイスで元気になって出かけていく。


それの繰り返しで情でも沸いていたのだろう。自分の子供が生まれていたらあれくらいの年で、もしかしたらこんな風に生活していたかも知れないと考えてしまった。


村の連中もあのお人好しの旅人が気に入り、いつの間にか村の一員として扱っていた。


そんなある日、世界の声が響いた。それはこの村の滅亡が決まった瞬間でもあった。


『ピンポンパンポーン⤴ この声は一部住民にも伝えられます。この度********************(販売1週記念と第2陣参入のお祝いとして。)『襲来』****(イベント)があります。旅人の皆様はこぞってご参加下さい。 ピンポンパンポーン⤵』


一部は聞き取れなかったが神から齎された魔物の襲来の予言。数日後、村には街から来た避難用の馬車が到着した。


次々に旅人は臨時の馬車で街に避難していく。中には条件を満たしていないのに街まで行ける何て幸運だ等と言い出す奴まで居た。


その言葉に憤りを覚える。この避難する旅人が全員残ってくれれば村の防衛は出来るかも知れなかった。ギルドで防衛戦の参加者を募集したのだ。


けれどどこかで示し合わせたのか防衛に参加する旅人は少なく、このままではどちらにしても村は滅びる事になると判断された。カマーンも苦渋の選択で避難を進める事に賛同した。


そんな旅人達を見送りながら街から来た使者は俺達の避難は出来ないと告げた。


「私達を見捨てるというのですね?」

「申し訳ありません・・・。物資が足りず受け入れが出来ないのです・・・。」

「旅人は戦力として確保しておくという事じゃの?」

「ひどいわぁ~。普通は逆ではないかしら?」

「本当に・・・申し訳ありません・・・・。」


使者も不本意であったのだろう、何度も何度も頭を下げていた。魔物が暴走した時用の備蓄を使いやっと呼び出せた旅人を保護したいという国の思惑も解らないではない。だが元々の住民を見捨てるというのはどういう了見なのか。


最後まで頭を下げながら旅人と共に馬車に乗り帰っていく使者。残された俺達は旅人が作ってくれた地下室に避難する事を決めた。戦い死ぬことも考えたが村長がそれを許さなかった。


そんな時、俺はあいつがまだ来ていない事に気が付いた。おそらく亜空から来ていないのだろう。どうせ潰れる村ならと、仕入れに使っていた小さな馬車を避難用に準備しておいた。


「っんで誰も避難してねぇぇぇぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


そして、あいつは店に来て騒いだ。避難しろとしつこく言って来るそいつに避難は出来ない事を伝えた。


その言葉を聞いて悲壮感に表情を歪めている。俺は馬車まで移動を促し、そして最後だからと口を滑らせてしまった。


「まぁなんだ。正直お前さんが来てから親父親父と呼ばれて、俺にもガキが居ればこんな感じかと色々と楽しませてもらった。だから・・・・だからこそだ。息子には生きていて欲しいっていうのが親心だ。」


驚きの表情で固まるそいつ・・・いやルド。そんなルドの肩に手を置きながら俺は馬車に乗るように促す。


「街に行っても元気でな。俺達の事忘れんじゃねぇぞ?そうしてくれりゃ、俺達が生きていた意味も在るってもんだ。」


丁度自警団の連中に呼んでもらった村の衆が全員揃った。皆お別れが言いたいだろうと声を掛けて貰っていたのだ。だがルドは何かを決意したかのような顔をして俺達に言う。


「だったら俺がこの村の盾になってやる!!」


必死で止めた。死なないとは言え、あの神器が壊されれば旅人は何処に行くか解らないという。だから避難して欲しかった。


だがルドの決意は固く。とうとうその時を迎えてしまった。


「皆はここに居てくれ!!大丈夫!!俺が絶対村を守るから!!」


そういって飛び出していくルド。一緒に行かせてくれと言ったが断られた。


そして戦闘が始まったのだろう。怒号と振動が地下室を揺らした。


「なぁ村長。」

「どうしました?」

「あんたは俺達に戦うなと言ってあいつ一人に任せちまったな。情けないと思わんか?」

「それは・・・。」

「おりゃ~あいつを村の一員だと思ってる。たとえ旅人だろうが今村の為に一生懸命に戦ってるあいつは村の仲間だ。そうだろう?」

「えぇ、そうですね。」

「だったらよう。仲間の窮地を助けるのも俺達の仕事じゃねぇか?」

「ですが私には住民を守る責任が・・・。」

「村長さんや、わしらは元々死ぬ覚悟は出来ておるんじゃ。元々そう言う条件で集まったわけじゃしの?元来わしらは戦人、死ぬならば戦って死にたいわい。」

「ルドちゃんが仲間だとしたらもう村の住民でしょう?なら助ける義務があるとは思わないかしら?」

「・・・・・皆さんも同じ意見ですか?」


地下室に居た村人が全員頷いて返した。


「・・・・そうですね。ルドさんは最後まで村に残って下さったんです。その御恩を返しましょうか。」

「あいつは残ったんじゃなくて他所に行けなかっただけなんだがな。」

「違いないわねぇ~。ミーニャちゃん、戦えない人と一緒に留守をお願いね。さぁて派手に行きましょうか!!」


笑いながら地下室を出て行く。全員の目には闘志が宿っていた。


その後、ルドと協力して村は救われた。亜空にルドが返った後、村人全員で集まり会議が行われた。その議題は“村の名前”。


この村をたった一人で救おうとした心優しくも頼もしい半巨人の旅人。その人の名前を貰い、優しくも大きく他者を助ける村になるようにと思いを込めた。


今日からこの村は“ルド村”だ。そう言えば俺達が子供の名前として考えていたのもルドだったな。奇妙なめぐりあわせだ。なぁそう思うだろう?


遠くの空で、一つの星が瞬いた気がした。


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited 


これにて1章終了でござる!!だぁはぁぁぁぁぁぁVR物書こうと思ってほぼ1ヵ月掛かった(;´・ω・)


今回は1話ずつ上げずに一気に上げましたので気になる方は1話からどうぞ!!うーんもうちょっと文章力欲しい、親父の気持ちや主人公の話とかもうちょい書き足したいような実力不足なような・・・・。


次の第2章にはまた1ヵ月くらい時間頂きたいので読んでもいいよ?って言う方はもう少々お待ちください!!ではでは

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