第21話

「どうすれば良いんだ!」

「あいつには火が有効なんだけどこの場にそれだけの火炎を生み出せる人は居ないのよねぇ。」

「雑貨屋には何か有用な道具は無いのですか?例えば油が大量に在ったりとか。」

「そんなもんねぇな。あって小さな灯用の魔石だけだ。」


村の人々が相談している中クイーンレイシアはどんどん村に近づいていた。


俺と言えば今だ押し寄せるモンスを丁度良いとばかりにレイシアの口に投げ入れていた。盾ではじいて一発でレイシアの口に入ればなんか気持ち良い。


「ルドちゃん?遊んでないでどう対処するか一緒に考えて!!」

「咆哮『あっすみませんなんかつい。』」


と言っても俺が出来る事なんて盾で防ぐくらいしか出来ないんだけどなぁ。おっと。


「GUO!?」ガンッ!!


おっ丁度ホールインワンしたな。


「んっ?クイーンレイシアの様子がおかしくありませんか?」


村長さんがそんな事を言うので様子を見て見ると、動きを止めて口を動かしていた。


「咀嚼してる?」

「口の中が一杯になったのかしら?」

「なぁカマーンよ。こいつは本能のままに動くと言ったな?」

「えぇそうよ。植物の魔物だから考える頭が無いの。好き勝手に動いて周辺に多大な被害をもたらすわ。」

「なら今回はなんで出てきたと思う?」

「それは・・・・。そうか!!そう言う事ね!!」


何かに納得したようなカマーンさん。そしてそのまま俺に向かって指示を出して来た。


「ルドちゃん、さっきの要領でクイーンレイシアの口の中に魔物を投げ入れて頂戴!!」

「咆哮『えっ良いんですか遊んでて?』」

「遊びじゃなくなったから良いのよ!あいつは今食欲で動いてる。お腹いっぱいになれば自分の縄張りに戻るわ!!だからどんどん投げ入れちゃって頂戴!!」

「解りました!!」


幸いまだまだモンスは大量にいる。もしお腹いっぱいにならなかったら最後は自分が食われれば量的には足りるだろう。なんせ自分半分とはいえ巨人ですし。まぁそうなったら腹の中で腹痛起こすまで暴れてやるけど。


動きを止めたクイーンレイシアの口にどんどんモンスを投げ入れていく。さっきまで動いていたけれど止まっているのであれば口が大きいから結構簡単に入るな。


時折咆哮を入れながら、クイーンレイシアに餌をやる事20分。そろそろこのイベントも終了だ。


モンスも粗方片づけ残りは森に逃げてしまった。攻撃していた人達もどこかほっとした様子を見せている。


「なんとかなりそうですね。」

「えぇ。後はクイーンレイシアが大人しく帰ってくれれば・・・。」

「カマーンよ、それってフラグと言わんか?」


親父の言った事が引き金だったのか、今まで動きを止めていたクイーンレイシアが突然こちらに向かって突進してきた!!


ドガァァァァァンッ!!「ぐぅっ!?」


慌てて盾を構え攻撃を受ける俺。でもその威力は強くかなりの距離を押し込まれてしまった。せっかく村から離れた場所に居たのにまたすぐ後ろに村が在る状況になってしまう。


「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」「RUOOOOOOON!!」


しかもこいつ!!村まで押し込もうと力を入れてくる!!


「ルドちゃん!!」

「踏ん張れ!!」


慌てた様子でカマーンさんと親父が駆けつけてくる。その時クイーンレイシアの触手が次々と俺の体に巻き付き始めた。


「ぬっ!?食べる気か!!なら俺喰ったら帰れ!!」

「RUOOOOOOOOOOON!!」

「よだればっちぃ!!そんでもって帰る気ないなお前!!」


大口を開けてこちらに唾液の様な物を飛ばすクイーンレイシア。そしてその足はなおも村に入ろうとしている。


そして現状大ピンチな俺!なんと蔓の締め付けでHPがゴリゴリ削れているのだ!!慌てて回復薬を使うけどこれもう幾分も持たないぞ!!


「ぐぎぎぎぎぎぎぎぎ!!」

「ルドちゃん!!」


何とか俺を拘束している蔓を切ろうとしているカマーンさん。だけど蔓が固いのか傷も入る様子はない。


くそっ!!最後の回復薬だ!!これで持ってくれ!!残り時間は3分を切った!!もう少し!!もう少しなんだ!!


そんな時、俺の視線の先に仁王立ちした雑貨屋の親父の姿が映った。そして何か武術の型の様な動きをし始める。


「こぉぉぉぉぉぉぉほぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


腰を落とし、両腕をゆっくりと前に突き出しながら深く呼吸をする親父。そしていつの間にか村の門に置かれていた孤児院の子供作成の人形が蔓に巻き込まれ“村の外に出た”。


「『人の物を勝手に取ったら泥棒!!』」


そう裂帛の気合で叫んだ親父。そして合わせた両手にあの謎の光が集まり今まで以上に輝く!!


「死ねい!!盗人撲滅!!『マネバザン!!』」ビビビビビビビビ!!

「名前あったのかよソレ!!」


何処かトゲトゲした光線がクイーンレイシアに命中し、ビクンッっとその動きを止める。そしてそのままゴリゴリとHPを削りだした!!


ビビビビビビビビ!!


なおも続く光線はHPを削り続け。ピコーンピコーンという謎の音が聞こえたと思ったら、クイーンレイシアはキュルキュルキュルと鳴きながらくるくる回って倒れ、ポリゴンになって消えて行った。


ピンポンパンポーン⤴ 既定の時間になりました。「襲来」イベントを終了いたします。防衛線の結果はゲーム内時間で30分後に発表しますのでしばらくお待ちください。皆さんお疲れさまでした。 ピンポンパンポーン⤵


「終わった・・・。」ドズゥーン。


イベント終了のアナウンスを聞き、村の皆が無事に生きている事を確認したら安心したのか俺はそのままその場に座りこんでしまった。


「つ・・・疲れた・・・・。」

「お疲れさん。良くやったな。」


巨人化したまま座りこむ俺の膝を親父がポンポンと叩く。


「まっお前さんにしては良くやったな。」

「親父、最後のあれなんだよ。最初からやってくれれば・・・。」

「そりゃ無理だ。ありゃ特別な条件の時に使える俺の必殺技だからな。お前さんが時間を稼いでくれたから出来た事でもある。」

「必殺技って・・・。それに条件って何だよ。」

「ん~、お前さんになら教えても良いか。俺が自分の領域だと思っている場所に置かれた商品を、料金を支払わずに手に入れさせてなおかつそれを俺が視認してなきゃならねぇ。」

「面倒くさい条件だ。それで村の門にあの人形を置いてたんだな。」

「そうだな。そんであいつはまんまとそれを蔓でつかみ取り、村の外、まぁつまり領域の外に持ち出したと。条件が厳しい分相手を確実に仕留められるから必殺技なんだよ。普段使ってるのは威力を落とした簡易版だ。」


にかっと笑う親父に俺も笑顔で返す。そこにカマーンさんと村長さんが来た。


「もうルドちゃん無茶し過ぎよ!!」

「ははは、でも皆さんが無事で本当に良かった。怪我とかしてないですか?」

「ルド君のおかげで住民に死傷者はいませんよ。その分君がボロボロになってしまいましたが。」

「まぁこれが盾職の仕事何で。」


守れた・・・。村の日常を、皆を守る事が出来た。俺盾職で良かったって初めて思ったよ。


「やり切った男の顔してんな。」

「そうかい?」

「おう、自慢の息子だ。」

「親父の最後の攻撃が無かったらやられてたからな。最後の最後で助けられちまって情け無い気持ちで一杯だ。」

「ふふふ、いつか超えて行けばいいのよ。」

「そうだぞ、いつか息子は父親を越えていく物だ。」

「そもそも2人は本当の親子では無かったはずでは?」

「ちげぇねぇ。」

「「「「「はははははは!!」」」」」


その後全員で村の損害状況を確認した。と言っても村の外で防衛線を行った為に被害を受けた家は無かった。牧場に飼われている動物たちがモンスの気配に驚いて怪我をしたぐらいだ。それもすぐに治せるほどの軽傷だった。


「それじゃあ私はこれで、ルド君は亜空(リアル)に帰るのかい?」

「もう少ししたら戻ります。」


色々やっていたら結構な時間が掛かった。もうすぐ深夜と言う時間帯だ。星が綺麗に瞬いている。


「そうかい、じゃあ次は6日後かな?」

「いえ明日また来れると思いますので。」


現実は土曜だからね。1時間休憩したらすぐログインできる。


「そうか、ではまた明日。」

「はいではまた明日。」

「私もそろそろギルドにもどるわぁん。ミーニャちゃん1人で御留守番させたから心配してると思うし♡」

「カマーンさんもお疲れ様でした。」

「んもう!一番疲れてるのはルドちゃんでしょう!!しっかり休むのよ。お姉さんとのや・く・そ・く!良いわね?」

「えぇゆっくり休ませてもらいます。」

「なら結構。それじゃあ失礼するわねぇーん。」


大剣を担ぎながらカマーンさんもギルドに戻って行った。他の住民たちも皆自分の家に帰り、残っているのは親父と俺だけだ。


「なぁ親父。」

「おん?なんだ?」


星を見上げながら親父に声を掛ける。親父の方も俺と一緒に星を見ていた。


「名前、教えてくれよ。」

「あぁ、良いぜ。俺の名前はルバードだ。」


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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