第20話
イベント開始まで残り30秒を切った。あの後親父達はどうにか俺を街まで送り出そうとしたけれど、俺の意思が固いと知って諦めた。
俺は今村の外に1人で出ている。今回のイベント「襲来」は一方方向からのモンスの襲来であると明言されていた。それは強力な個体に追い立てられたモンス達が逃げる為に人の生活圏まで出てくるという設定だからだ。
そして俺が考えているのは村を襲撃するモンスのヘイトを集め、一匹残らず引き付ける事。時間経過でイベントは終わる事になっていてゲーム内時間で3時間耐えれば防衛成功となる。
「そろそろ時間だ。」
住民は皆地下室に避難して貰っている。もしも俺が抜かれてしまっても時間は稼げるだろう。俺は両手にいつも使っている盾を構え、襲来するモンスに備える。親父は最後まで一緒に居る何て言ってくれていた。その気持ちで胸がいっぱいになったけどそれだと意味ないんだ。
「さぁ気張って行こう!!」ガンガンッ!
盾を打ち鳴らし気合を入れる。村から離れた場所に陣取っているからモンスの速度によっては一度死んでも立て直せる。絶対に村を守るぞ!!
ヴィーゥン!!ヴィーゥン!!ヴィーゥン!! モンスターの集団暴走が確認されました!!プレイヤーは防衛作戦に参加をお願いします!!
ヴィーゥン!!ヴィーゥン!!ヴィーゥン!! 繰り返します!!モンスターの集団暴走が確認されました!!プレイヤーの皆様は防衛作戦に参加してください!!
ワールドアナウンスが警告音を発すると同時に、視界に表示されているミニマップに赤い点が次々に生まれる。目の前のフィールドに大量のモンスターが現れ始め、森の中からも次々に溢れ出して瞬く間に草原をモンスターで埋め尽くしていく。
「絶対にここから先には通さねぇ!!巨人化からの咆哮『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!かかって来いやぁぁぁぁぁぁぁ!!』」
巨人化の不思議なところは装備している物も巨大化する所だ。最大まで巨大化した俺の盾はまさに防壁の様に巨大な壁となった。そしてモンスターの群れが襲い掛かって来る。
ドッゴーーンンッ!!
モンスの第1陣を盾で受け止め、村に行かないよう道場の様に森に向かってモンスを飛ばしていく!!
投げ飛ばされたモンスは森に落ちるがすぐに体制を立て直してこちらに向かって来る。巨人化のおかげで飲み込まれる事も無いが気を抜けばあっという間に取り囲まれて村に抜けられてしまうだろう。
「ふんがぁぁぁぁぁ!!」
ログを確認している暇なんてない!!地面を抉るようにして盾を振り回す。何匹かのモンスが巻き込まれ森に落下していった。
「こなくそぉぉぉぉぉ!!」
右に左に盾を巧みに使いモンスを放り投げる。ダメージの蓄積は雑貨屋に在った回復薬を手持ちのお金で買えるだけ買い、それを使って回復する。装備の耐久値は全て初心者装備なので気にする必要は無い、耐久は無限だ!!
「ふんぬらばぁぁぁぁ!!」
飛び出して来たジャイアントラビットをそのままカウンターの要領で弾き飛ばす。畜生!!かなりHPを持ってかれた!!それにどんどんモンスターの圧力が上がってじりじりと後ろに下がってる!!
「どっせぇぇぇぇぇぇぇい!!」
シールドバッシュでモンスの群れを押し返そうと試みるも、若干押し返しただけですぐに元の位置に戻ってしまった。
「咆哮『うぉぉぉぉぉぉぉ!!』」
ヘイトが剥がれないように時たま咆哮を混ぜる。危うくモンスが村に行くところだった。
「まだまだぁぁぁぁぁぁ!!」
いくら巨人化したとしても、さすがに1000匹以上のモンスの攻撃は重い。ヘイトは今の所取り切れているが、集中力が切れたらそうも行かないだろう。攻撃力が無いのが本当に悔やまれる。
「咆哮!!『それでも守るって決めたんだぁぁぁぁぁぁぁあ!!』」
叫びながらがむしゃらに盾を振り回す。腕に、脚に、体に、無数に傷が増えていき、回復薬や体力自動回復の効果で治癒していく。
毒や麻痺、睡眠などの状態異常も状態異常耐性を上げていたおかげで問題なく対処出来ている。
どれくらい時間が経っただろうか?だんだん集中力が途切れ意識が朦朧としてきた・・・・。今の所モンスターの足止めは出来ている・・・はずだ。だがやはり一番の問題は・・・。
「くっそ!!又押し込まれた!!」
倒せない、だからこそ数は増え続ける。そして圧力に負けて押し込まれる。いつの間にか自分のすぐ後ろには村が在る状態になっていた。
どうにかして数を減らさないと!!でもどうやって!!このままじゃイベント終了前に村にモンスターが侵入する!!
ヒュンッ グサッ 「GUAAAAAAAAA!?」
どうにか押し返そうと盾に力を込めた瞬間、村の中から一本の矢が飛び立ち先頭にいたホーンラビットに命中した。
「咆哮『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』」
矢を受けたモンスターが村の中に走り出そうとした所で咆哮を入れる。今のは危なかった!!でもいったい誰が!!
「ルドに続けぇ!!自警団の意地みせてやれ!!」
「「「「「自警団の名に懸けて!!」」」」」
「皆の衆私に続けぇ!!この村は私たちの村だ!!私達で守るぞー!!」
「「「「「「「「「フロンティア魂舐めんなよ!!」」」」」」」」」
「咆哮『何してんだよ皆!!』」
自警団は弓や槍を投げてモンスを攻撃している。住民も石を投げて応戦してくれている。
そんな皆にヘイトが向かない様に咆哮を入れながら問いただした。
「なぁに、お前さんに全部任せる程落ちぶれちゃいねぇってこった。」
「先ほども言いましたがこの村は私たちの村です。私達も守りたい。」
「ふふふ、ルドちゃんにばっかり任せてたらギルドマスターの名折れですもの。今回ばかりは本気で行くぞ野郎共ぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「「「「「「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」
住民の皆がどんどん遠距離からモンスの体力を削ってくれる。というかカマーンさんまで来たんですね・・・・。いつもネコ撫で声なのに地声が結構カッコいい感じの渋い声だからビックリしちゃった。
戦闘のプロであるカマーンさんと親父の協力で住民も効率よく石を投げる事が出来ている。ダメージも結構良いのが入ったりしている、自警団の弓は大体雑魚を2発くらいで沈めてくれている。
これなら、これならいける!!
「咆哮『ヘイトは任せてどんどん攻撃してください!!』」
「さぁルドちゃんが盾をやってくれてるわ!!皆で彼の負担を減らすのよ!!」
「1番隊と2番隊は左右から攻撃しろ!!大物が出てきたらわしらに任せろ!!」
「怪我をした人はすぐに私の家に行ってください!!処置します!!」
少しずつ、だけど確実に数を減らすモンス達。特に親父とカマーンさんが凄い。ジャイアントラビットに例の謎光線を当てて動きを止めたと思ったら、カマーンさんが身長と同じくらい(大体2メートル程)ある大剣を使って首を一撃で切り落としてる!!
やっとイベントの時間経過を見る余裕が出来た所で確認すると、すでにイベント開始から2時間経っていた。
「咆哮『あと1時間です!!頑張りましょう!!』」
「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」
そこからは順調に防衛が進んで行った。数が減った事で圧力が減り、押し返す事に成功した。でもその時点ですでに手持ちの回復薬は2割を切った。途中スキルのレベルが上がる音がしたけど、そこまで確認する余裕も無い。
そして残り時間が30分になろうという時、森の奥から今まで聞いた事も無いような鳴き声が響き渡った。
「RUOOOOOOOOOOOOO!!」
「なんだ!?」
「あの声は・・・まさか!!」
「知っているのかカマーン!!」
「奴が・・・奴が来る!!森の主が!!」
ドゴーンッ!!メキメキメキィ!!
森の木々をなぎ倒しながら姿を現したのは、とても大きなラフレシアの様な花だった。その花弁は紫と黄色のまだら模様で、紫の蔓の様な触手にはモンス達が捉えられていた。そして次々にそれを花の中央に在る口に運んで食べている。
「RUUUUOOOOOOOOOON!!」
「やっぱりクイーンレイシア!!あれはまずいわよ!!」
「咆哮『どうまずいんですかカマーンさん!!』」
「あいつにヘイトスキルは効果がないの!!あれは本能のままに暴れる怪物よ!!」
確かにさっきから咆哮を入れているにも関わらずクイーンレイシアはお構いなしにモンス達を食べてる!!
「RUOOOOOOOOOOON!」
すぐそこまで、絶望が迫って来ていた。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
This work will be sent to you by kotosuke5, who is Japanese. Unauthorized reproduction prohibited
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます