第3話
気が付くと俺はプレイヤーが最初にログインすると来ることが出来る広場に居た。サイズ補正は・・・・効いてるね。ちゃんと普通の人サイズだ。今日はサービス初日、俺と似たような服装で様々な武装を装備した人々がひしめき合う様に広間に降り立ち、同じようにキョロキョロと周りを見回していた。
「すげぇ!!本当に土の匂いがする!!」
「風が気持ち良い・・・。」
「お疲れ!!今日入れたんだな!!」
「おぉお疲れ!!仮病使っちまったw」
「えっとこれでフレコの交換が・・・出来た!!ってあいつ別の所に居るのかよ!!合流まで遠いじゃねぇか!!」
「お兄ちゃん早く行こ!!」
「待ってよウィズ!!」
「速くフィールドに行こうぜ!!速攻レベル上げて攻略組一番乗りだ!!」
「俺達がそんな事出来るわけねぇだろwwまぁ目指すのも悪くないがな!!」
「なぁ漫画や小説みたいにシークレットクエストあると思うか?」
「公式は肯定も否定もしてなかったからな。あるんじゃねぇか?」
「だったら探しに行こうぜ!!そして強スキルゲットだ!!」
さすがサービス初日、多くの人々がこの『Another Life Online』の世界を楽しんでいるみたいだ。
「さてと、俺も街を巡ってシークレットクエスト探しだ!!」
漫画や小説なんかじゃ、最初の街には普通に受注できないシークレットクエストが隠れていて先着一名に超強いスキルが貰えるのが相場だもんな!! 誰かに取られる前に俺が手に入れてやるぜ!!
御親切な事にHPとMPの他にミニマップが視界に映っているから道に迷う心配もない!!さっそく最初の街をくまなく探索だ!! レッツゴー!!
数時間後、俺は賑わうフィールドの前で1人黄昏ていた。
「はぁ~。街じゃなくて村だったんかい・・・。シークレットクエストも何もないし、村人も30人しかいないとか・・・・。出来たばかりで名前も無いって解っただけましか・・・・。」
この街もとい村はプレイヤーがスタート地点に出来る数多くある村の1つで、プレイヤーは「亜空の旅人」を略して旅人と呼ばれている。住民はNPCと呼ぶと認識されない仕様になっていて。住人達には神託がもたらされているらしい。プレイヤーを受けいれる為の村を作るよう指示が出されていたんだって。
ここに住んでいる人達は主にプレイヤーの補助を任命された人らしく。最低限の施設しかないって村長から聞いた。
村に在るのは宿と雑貨屋、そして冒険者ギルドだけであとは各店で働く人たちの住居と食料確保用の畑や牧場があるだけだった。
だから1時間もあれば一回り+住民全員に挨拶も出来てしまう。あぁ回ったさ、すべてのお宅にお邪魔してお世話になるって挨拶も添えてな!!
他にも同じ考えの奴が居たのかまた来たのかって顔をされた時には心が折れそうになったよ・・・。まぁ称号で<礼儀正しい者><村の仲間>を貰えたけどな!!なおこの称号に特殊な効果はない!!唯の文字の羅列である!!どうなっているのだ。
その情報が開始2時間くらいで出回っていたのか、大半のプレイヤーはすでにフィールドに出てレベル上げに励んでいる。
俺も村を全部回り最後に冒険者ギルドで登録した時、「村人と仲良くなってくださってありがとうございます。これからフィールドに出られますよね?活躍をご期待しております。」と受付してくれた人(男)に固い笑顔で送り出されたよ。あれは早くフィールドに行けと言う圧力だったね。間違いない。
念には念を入れて3時間も村をうろうろしていたのに何も無くってガックリよ。ハァ・・・・・。
しかもかなり遅れてフィールド入ったもんだから戦える場所なんてない。ほぼリスキル状態で自由に動いている敵が一匹も居ない状態だった。それをみてさらにガックリ来て黄昏てるってわけだ。
「うーん、どうすっかなぁ。」
レベルを上げて抜けていく人も居るだろうけれど待っている時間がもったいない。時間が経てば今ログインしていない人も入って来るだろうからしばらく同じ状況が続くだろうし・・・・。本当にどうすっかなぁ。
どうするか頭を悩ませていると俺の足元が光を放ち、このフィールドの雑魚モンスター筆頭のスライムが生まれた。
ぽよんっ!
「ラッキー!!」
誰かに取られる前に早く攻撃しないと。俺は急いで装備していた盾をスライムに向かって振り下ろした。そして表示されたダメージ量は“0”
「はっ?」
何かの間違いだと思って何回もスライムに攻撃を繰り返す。だが結果は変わらずスライムは1ミリもHPを減らすことなく跳ね続けている。
ぽよんっ!ぽよんっ!
「えっ!?一体どうして!?」
混乱する俺は周りに居たプレイヤーに聞こえる程大きな声を出していたらしい。他のプレイヤー達が狩りを中断して俺の事を見ていた。そしてスライムにダメージが入って無いのを見て笑った。
「だっせぇ!!あんなに大きな体してスライムにもダメージ入れられないのかよ!!」
「ATK1の俺でも5ダメージは入るぜ!!その筋肉は見せかけかよ。」
「武器を使わなくても1ダメは確実に入るのにな。見た目詐欺だぜ!」
「倒せないんだから貰ってもいいよな?タゲも取って無いし横殴りとか言うなよ!!」
そう言って目の前のスライムは別のプレイヤーに倒されてしまった。呆然とする俺を置き去りに他のプレイヤーは狩りに戻って行く。
「何がどうなっているんだ?バグか?」
そこで俺はステータスの確認をしていなかったことに気が付き、自分のステータスを確認する事にした。
名前 ルド
種族 半巨人(セミジャイアント)
職業 双盾使い Lv1(0/100)
HP 400
MP 10
ATK 0
DEF 40(+10)
SPD 10
MGK 0
DEX 40
LUK 20
スキル
<双盾術Lv1><体力自動回復Lv2><状態異常耐性Lv2><魔法耐性Lv2><サイズ補正><咆哮Lv2>
EXスキル
<守護者>
SP 0 (ランダムボーナスSP+10)
装備
頭 ―――
体 始まりの服
右手 双盾使いの盾(初)
左手 双盾使いの盾(初)
腰 始まりのズボン
足 始まりの靴
アクセサリー
頭 初心の羽飾り
体 ―――
指1 ―――
指2 ―――
腕1 ―――
腕2 ―――
脚1 ―――
脚2 ―――
称号
<礼儀正しい者><村の仲間>
所持金 1000マネ
「はぁ!?」
そのステータスに俺は驚愕した。ATKとMGKが0、つまり攻撃力となる数値が軒並み無かった。
「これがランダムで言っていた弊害か?」
確か深刻な状態に陥る場合があるって書いてあったな。それならば武器を買おう。ATKが1でもあればダメージは入るとさっきの奴らが言っていたのなら剣を持てばいい。
そう思い立った俺は早速村に速足で戻り、唯一の商店に飛び込む。
「らっしゃい。」
不愛想な店主が営むこの店は回復薬から装備、果ては生活雑貨に至るまであらゆるものを扱っている。まぁその能力は最初の村らしくお察しだけど。
クエストフラグが無いかと商品について聞きまくったのはついさっきの事で、戻って来た俺に対して店主の対応は冷たい。(と感じる。)まぁ普通に考えたら1時間近く商品について根掘り葉掘り聞いてきたら誰でもそうなるわなぁ。
「武器を見せて欲しいんだけど。」
「あんっ?お前さん武器は持てねぇぞ?」
「ん?なんでだ?」
「お前さん双盾使いだろ?武器なんか使えるわけねぇじゃねぇか。盾を使う職業なんだから無理だ。」
店主の言葉に驚いて固まる俺。それなら転職はと聞くと、店主は首を横に振り俺を絶望に陥れる言葉を放つ。
「転職しようたって無理だからな?この村にまず教会がまだない。それと転職するにはLvを15まで上げないと転職できない。まぁ本当ならこれは街に行ってから聞く事だけどな。兄ちゃんは熱心に商品について聞いて来たからサービスだ。」
どうやら店主の好感度は上がっていたらしい。だがそんな事を気にしている余裕は無く。俺は今後どうするかと頭を悩ませていた。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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