『!』が『♡』になる力を授かったのでツンデレ幼馴染で遊ぶ
にゃー
♡って良いですよね。
夢っていうのは、あ、夜寝るときに見るヤツね、まー大体の場合は抽象的でなんかボンヤリしてて、そんで朝起きた瞬間からもう忘れ始めちゃってて、朝ご飯食べ終わるころには記憶の彼方ー、みたいな感じだと思うんだけど。
今朝見た夢は、けっこー鮮明に覚えてる。たった今、徒歩通学の最中でも思い起こせるくらいには。
んで、じゃあそれがどんな内容だったかって言うと。
「わたくしは女神です」
「めがみ」
「ええ」
「何用にございましょう」
「あなたに力を授けに参りました」
「ちから」
「ええ」
「如何様なものにございましょう」
「『!』が『♡』になる力です」
「よく分からないので具体例を提示頂けますでしょうか」
「『
「なるほど」
「如何でしょう」
「最高」
「ちなみに、『!?』も状況に応じて臨機応変に『♡』になったりならなかったりします」
「ありがたい」
「何なら、『!』に満たない『っ』などにも反応したりしなかったりします」
「粋な計らい」
「勿論、『……!』や『……っ』もまとめて『♡』になります」
「至れり尽くせり」
大体こんな感じ。
私の頭がおかしくなったか、神様が実在するかのどっちかだと思うんだけど、せっかくだしここは神様の存在を信じてみたい所存。
つまりどうするかって言うと、気が高ぶると語気が強くなる幼馴染をハートまみれにしてみようと思う。
ほら、丁度そこで私のこと待ち構えてるし。
「おはよーさん」
「ん」
彼女の家の前でご挨拶。
「
「……おはよ」
今日も今日とて、我が幼馴染はツンと澄ました美人さんだなぁ。
花も恥じらう女子高生としてはもうちょっと愛想良くしてもイイんじゃないかって思うけど、夏芽は愛想悪くても花も恥じらうくらい美人だから問題なかったや。
「ねぇねぇ夏芽ぇ」
「何」
「今日も美人さんだねぇ」
ナンパじゃないよ。いつものやり取りだよ。
「っ!……はいはい、ありがとっ」
ほら、言われた夏芽も慣れたもんで、ちょっと顔を赤くする程度でしょ?
んで、いつもと違うのはここから。
「それに、美人なだけじゃなくて可愛いし」
「は、はぁ!?」
今だ、えい。
「急になに言いだすのよ♡」
見たかニーチェ、神は生きてたぞ。
「え、ちょ♡何よこれ♡」
おー、本人にも何となく分かるっぽい。
「ちょっと♡どうなってるのよこれぇ♡」
困惑しておる困惑しておる。愛いヤツめ。
メチャクチャ可愛いからもっと弄くりまわしてあげたい。
あげたいけど、今はいわゆるお試しってやつだから、ここまでにしとこ。
えい。
「もう!……あれ、直った!?」
「どしたの夏芽?」
「あ、あんたが変なこと言うから!」
「私は事実を述べただけだよ」
「~~!!」
頬は真っ赤で、でもちょっと不思議そうな顔してる。これはなかなかレアな表情だねぇ。
ま、具体的に言葉に出来るような感覚じゃないし、私に変なこと言われてちょっと変になってたってことで、自己解決したっぽい。
「ほらほら、ぼーっとしてると遅刻しちゃうよ」
「誰のせいだと思ってるのよ!」
登校時間は短く、限られているのだ。
お楽しみは時間がたっぷりある放課後まで取っておくべき、そうすべき。
◆ ◆ ◆
放課後じゃい。
授業風景?割愛。夏芽とクラス違うし。
幼馴染同士が同じクラスになれないなんて、世の中間違ってると思う。
「夏芽もそう思うよね?」
「思わないわよ」
毎日、お昼は一緒に食べてるし、放課後になったら二人でどっか遊びに行くか、今みたいに空き教室で駄弁ってるけども。それはそれ、これはこれ。
「ホントは?」
「思わない」
「ホントのホントは?」
「思わないってば」
「とか言いつつホントは~?」
「…………はぁ」
呆れたと言わんばかりのため息。
でも無駄無駄、そんなのじゃ隠し切れないぞ。
なんたって私は夏芽の幼馴染。嘘付いてるときは耳がぴくぴく動くことぐらい、小学生の頃から知ってるんだよねぇ。
「……ホントに思わない?」
くらえ必殺、しゅんとした上目遣いっ。
普段ダルそうにしてる私がこれをやると、十人に一人ぐらいは落ちるっ。多分っ。十人も相手にやったことないから分かんないっ。
「……お、思わないことも、ない……」
夏芽に効くのは、これまでの経験上よーく分かってるけどね。
「夏芽ぇ……しゅき」
「んな!?」
今だ、えい。
「ななな何よしゅきって♡せめて好きにしなさいよっ♡」
女神様ありがとう。本当にありがとう。
「ってまた♡なんなのよこれ♡」
「どうしたの夏芽」
我ながら白々しさマックス。
でもどうか許して欲しい。少なくとも神様の許しは得てるし。
「いやっちがっ♡これはっ♡」
「今日の夏芽、なんか情熱的だね……」
「違うってば♡あんたが変なこと言うから♡」
顔どころか耳どころか何なら身体中真っ赤にしておるわい。
普段は肌白くて綺麗だから、なおさらギャップが凄い。すんごい。
「変なことって……好きってやつ?」
「そう、それ♡びっくりするからやめてよねっ♡」
「でも私、けっこー普段から言ってない?」
流石に毎時とか毎分とか毎秒ではないと思うけど。なんだかんだ日に一回くらいは言ってるんじゃなかろうか。意識して数えたことはないけど。
「そうだけど、そうじゃなくてっ」
む、
「……もしかして、さっきの?」
「そ、そうよ、あんな変な言い方するからっ」
「しゅき」
「あ♡」
「ってやつ?」
「それ♡それやめなさいよっ♡」
そんな言い方されると、やめられないとまらないって感じになっちゃうよね。
「夏芽、しゅき」
「やめなさいってばっ♡」
「なんで?」
「なんでって、それはっ」
「夏芽はしゅきって言われただけでその気になっちゃう人なの?」
「そそそそそそそその気って♡♡」
あ、二個付いた。
「ひひ人をちょろい女みたいに言わないでくれるっ♡」
「じゃあ別に言ってもいいよね」
「いや、それはその……」
「駄目なの?そっかぁ、夏芽はしゅきに負けちゃうような人なんだぁ……」
「はぁ♡だ、誰が負けるですって♡」
ふふふ、夏芽は負けるって言葉に弱い。特に、自分よりもちっこい私に負けるのは我慢ならないのだ。
「負けないの?だったら、言うのも私の勝手だよね?」
「っ、……すー、はー……」
お、冷静になろうとしてる、えらいえらい。
「い、いいわよっ。好きなだけ言いなさいよっ。あたしはしゅきなんかに絶対負けないんだからっ」
ふーん、言ったな?
「夏芽しゅき」
「っ」
「しゅきしゅき」
「っ、っっ」
「だいしゅき」
「ん♡」
「しゅきぃ」
「あ♡」
「しゅーきっ」
「ちょ、だめ♡」
「駄目じゃないよ、だってしゅきだもん」
「やぁ♡」
「夏芽は?私のコトしゅき?」
「そんなの♡」
「しゅき?しゅきじゃない?」
「そんなのっ、言えない♡」
「なんで?私はしゅきなのに?」
「ち、千秋♡あたしぃ♡」
「しゅきしゅきしゅきしゅきしゅき」
「あ♡まって♡千秋♡だめだめだめっ♡」
「夏芽ぇ、しゅー……きっ」
「っ♡♡♡♡」
冷静になった結果がこれじゃい。
どーだ思い知ったか、これが神の威光よ。もしくは意向。
よくよく考えたら、高校生にもなってしゅきしゅき言いまくるのはどうなんだって気もしないでもないけど。
ま、これも神様の望み給うた事なんだからしょーがない。
ただ一つ残念なのは、しゅきしゅき言われ過ぎて机に突っ伏してしまったせいで、夏芽の顔がよく見えないってことかなぁ。
向かい合って座ってる私に見えるのは、ぴくぴく動く真っ赤な耳くらい……ん、ぴくぴく動く?
「夏芽」
「っ、な、なによぉ……」
「だめだめ言ってたけど、ホントは?」
「はっ、はぁっ?」
「ホントのホントは?」
「だめに、きまってるでしょっ」
「とか言いつつホントは~?」
「う、うぅぅぅっ」
素直になーれ、えい。
「しゅきしゅき言われて、キモチ良かった?」
「!?!?!?!?!?!?!?!?」
あ、顔上げた。目が合った。
まっかっかのうるうる涙目ですねこれは。
「キモチ良かったんだ?」
もっと素直になーれ、えい。
「ちがっ♡」
「キモチ良かったんでしょ?」
「ちがうってばぁ♡そんなんじゃないっ♡」
じーっと目を合わせ続ける。
「ふーん。夏芽はしゅきしゅき言われてキモチ良くなっちゃう人だったんだぁ」
「やぁっ♡千秋っ、見ないでぇ♡」
顔を近づける。
「……へんたいさん」
「あっ♡あっ♡あっ♡」
視線を切って。
「でも安心して。夏芽がそんなへんたいさんでも」
そのまま耳元まで。
「……大好きだよ♡」
「♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡――っ」
はい、夏芽の負け。
『!』が『♡』になる力を授かったのでツンデレ幼馴染で遊ぶ にゃー @nyannnyannnyann
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