第29話 球技大会で①

「涼真!」


「おう!」


シュッ


パスンッ


「すっげぇー!!またスリー決めたよあの4番!!」

「これで何点目だ!?」


汗をぬぐい反対側まで戻り、速攻を仕掛けてきた相手と1on1の状態になる。


「くっ!佐伯。お前、バスケ部のレギュラー相手よりも動けんじゃねぇか!今日からでもいいから俺らと全国行こうぜ!!」


「生憎と部活に時間をかけてられるほど余裕がないんでね。」


一瞬のスキをついてボールをカットする。


「まじかよっ!!!」


「朝日!!」


ゴール手前に待機していた朝日へと片手でボールをぶん投げた。


バチィン!!!!


「っ~!!!おらぁっ!」


ピッピー!!!!

「ゲームセット!92対64で1-Aの勝利!!!」


わぁ~!!!!


「っし!」

俺は小春のいる応援席の方を見上げて勝ったぞと笑って腕を上げた。


キャー!!!!!!


「佐伯君の笑顔きたー!!!」

「五十嵐さんに向けてっていうのはわかってるけどむりー!!すきー!!!」

「救護班!!!女子生徒2名失神!!!」

「こるぁ!佐伯ぃ!笑うなぁ!!!」


「えぇ…。」


保健委員男子に理不尽にキレられてしまったが、もう一度小春の方へと向き直るとえへへと微笑んでくれた。

もう少し癒されたかったが、そこで整列がかかってしまったためコートまで戻ると、先ほどのバスケ部男子から握手を求められる。


「手も足も出なかったぜ。やっぱりお前は俺たちと全国に行くしかねぇよ。俺は、お前を諦めねーからな!」


「いや、部活はやらないって…。」


その後も勝ち上がってきた2年、3年と試合をしたが参加していたバスケ部員には同じように部活勧誘を受けた。


「俺とお前ならどんな奴にも負けねぇ!頼む!!」

「僕が君の影になる。光の君は僕と一緒にいるべきだ。」

「バスケ部に入らなければそこで君の学生生活終了ですよ。」


最後の奴はほとんど脅し文句だったが全員丁重にお断りしておいた。

そうして迎えた決勝戦。

相手はもちろん3年でバスケ部員でキャプテンを務める先輩がいるらしい。


「さすがに厳しいかな~。なぁ涼真。」


「ん~やってみなきゃわからんだろ。あのキャプテンさえ止めれば何とかなりそうだし。」


「さ、佐伯!ここまでこれたんだし俺たちもがんばるから!!」

「が、がんばるっす!」


クラスメイトの二人も気合十分なようだった。


「おう。中西に今原。決められそうならシュート打ってくれていいからな。それと次期バスケ部エースの笹島もいるんだ。笹島、俺と朝日で抑えるから得点は任せたぞ。」


「おっ!ようやくかぁ!国松さんとはガチでやりあいたくなかったから助かるぜ!!ただ、俺スリーは苦手だからいけそうなら佐伯に回すからな!」


笹島から自分はあまりスタミナがないから最後以外はディフェンスメインで行くといわれていたため、今まで俺たちで点を決めていたが決勝では思う存分彼に暴れてもらうことにしよう。



次の準備をしていると、俺たちのベンチの方へ先輩が歩いてきてこえをかけらられる。


「君っ☆さっきまでの戦い素晴らしかったよ♪」


「それはどうもありがとうございます。」


「うんうん。君最近よく名前を聞く佐伯涼真くんだろ?と付き合ってる。」


先輩の言い方に嫌な感じを覚えたが俺は頷く。


「…えぇそうですが。」


「ほぅ、やはりそうなんだねぇ♪……そんな君にお願いがあるんだよぉ♪」


「お願いですか?」


俺がもう一度聞くと先輩が口角を吊り上げながら提案してきた。


「あぁ。この試合に勝ったら彼女を僕にくれないか?」


「は?」


ふざけた提案にイラっとした俺は先輩であることなど関係なく睨みつけてしまう。


「おっと。そんな怖い顔をしないでくれよ~。いきなり言われたらそりゃぁ怒るのはわかるさ。でもねぇ僕は入学式の時から彼女に目をつけてたんだ。部活さえなければもっと早くアピールしていたんだが大会も近くてねぇ、そうやって我慢していたのに君がそれをとったんだよ?だから僕が欲しいとお願いするのもおかしなことじゃないだろ?なんならお願いしてるだけありがたいと思ってほしいものさ。それに……」


「先輩だからってベラベラベラベラとよく口が回りますね。」


あまりにも自分勝手な先輩の言い分に我慢できず俺はつい口を挟んでしまう。

俺が素直にうなずくと思っていたのか先輩は驚いた表情をしていた。だが、俺は我慢できずに先輩に向かって煽るように言った。


「そんなに好きなら告白してみればいいじゃないですか。選ぶのは彼女ですから。まぁ負ける気はしませんけど。」


俺がそういうと、先ほどまでの爽やかな笑顔が一転して不機嫌そうな顔へと変わっていった。


「なんだと…?」


「てか、そもそもとられたもなにも先輩が行動しなかったからでしょ?小春は先輩の彼女でもないのにとられただなんて、言いがかりはやめてくださいよ。」


「っこのガキが…!おいお前こっちが下手に出てりゃぁ調子乗りやがって!」


「あれ、二人称は君じゃなかったんですか?」


今にも殴り掛かってきそうな先輩に近づき最初の先輩の真似をしつつ耳元でささやく。


「……女の子をもの扱いすんじゃねぇぞ、クソ野郎が♪あぁ、それと賭けは乗りませんから俺にメリットも何もないし。…ではもう試合始まるので早く戻ってください。せ・ん・ぱ・い。」


「っ~!!!後悔させてやるからな!!」


イライラした様子を隠せない様子の先輩はコチラへ来た時の爽やかさの欠片もなくドンドンっと足を鳴らして戻っていった。


「ひゅぅ~、いうねぇ。国松さんにあんだけ啖呵きるたぁ…おまえおもしれぇなぁ。……っし涼真!3年だろうが関係ねぇ。ぜってぇ勝つぞ!」


先輩に対する対応に腹を立てるどころか俺の下の名前を呼びながら肩を組んでくる笹島に俺も同じように応える。


「そのつもりだよ浩平。3人も行くぞ。」


「「「おう!」」」


全員でコートに整列した俺は先輩の正面に並びニコッと笑いかける。


「よろしくお願いしますね。」


「あぁ、ボコボコにしてやるよ!」




☆あとがき☆

ラブ、コメ…?

唯奈以外だとかなり強気に出れる涼真さん。

でも多分勝てるってわかってる相手にはこんな感じで煽ることってあると思います。


国松先輩は鼻につくキザなやつです。

よくいる爽やか系を装ってるが裏では後輩いじめたり女の子を襲ってるようなそういう奴です。呪〇〇〇の順平くんのときにでてきた先輩みたいな。

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