第20話 小春のやきもち
Side.小春
「うぅ……。」
また新しい女の子が涼真くんのことを好きになってしまいました…。生徒会長さんまでも虜にしてしまうなんて聞いてないですよ…。
私のクラスまで響いていた生徒会長さんの涼真くんを手に入れる宣言を聞いてモヤモヤを抱えたままお昼を食べるため中庭へと移動していく。
「はぁ……。」
「またため息ついてるよ~はるちゃん~。幸せが逃げちゃうぞ~?」
「うぅ~朱莉ちゃ~ん。だって生徒会長さんまで涼真くんのことを……。」
「いやぁ〜あれは恋愛感情とかそういうのとは違う気が…。まぁでも佐伯くんが他の人と付き合うとは考えにくいけどな〜。」
「そうかなぁ…?でも私は仮の恋人なんだから他に好きな人ができたら別れて当然だと思うし…。」
私はついついネガティブになってしまう。
神崎さんに啖呵を切ったあの日、朱莉ちゃんには昔涼真くんと会ったことがあること。今本当に好きになってしまったことを話していた。
「も~そんなこと言って、佐伯くんに好きな人ができちゃったらどうするの?はるちゃんは本当にそれでいいの?」
「だ、ダメ!!」
私は涼真くんの隣に誰かほかの女の子がいることを想像して絶対に嫌だと強く思ってしまった。
「じゃぁ、はるちゃんからもっとアピールしなきゃ!テストも終わったことだし二人でデートしようってお誘いしよう!」
「えぇ!?そ、そんなの好きって言ってるようなものじゃないですか!」
「実際そうなんだし問題なーし!そもそもこんなことで恥ずかしがってたら、なんも変わらないでしょ~!佐伯くんがきたらはるちゃんから誘うこと!あ、ほらほら二人がきたよ!」
「え、えぇ!?ちょっと朱莉ちゃん!?」
side.涼真
「二人ともおまたせ……小春?そんな慌ててどうしたんだ?」
「な、な、ななんでもないですよ!」
なんか俺たちが来た途端すごいあたふたとしてたんだけど何かあったんだろうか?
「そう?なんかあるなら遠慮なく言ってくれよ。」
「あ、ありがとうございます…。その、あとでお願いします…。」
「りょーかい。さ、時間もないしさっさと食べよっか。」
生徒会長に捕まったせいでだいぶ時間を使ってしまっていたため、急いで食べ始めたが結局昼休みが終わるギリギリになってしまったので小春の話は放課後聞くことになった。
朝日と朱莉ちゃんがニヤニヤとしていたことから、なにかよからぬことを小春に吹き込んだのではないかと勘繰ってしまうが、小春だから大丈夫だろう。
午後の授業を受けHRが終わった後、朝日に声をかけ校門まで行こうと思ったが、珍しく断られてしまう。
「悪いな、今日は朱莉と二人で帰ることにしたんだよ。」
「そうか、最近俺たちに付きっきりだったもんな。気が回らなくて悪かった。」
俺がこの格好になってから1ヶ月。
まともに二人の時間を作ってやれなかったことに申し訳なく思っていると朝日が俺の肩を叩いてニカット笑う。
「いいんだよ。涼真と遊べる時間が増えて俺も楽しいからよ!まぁ今日は小春ちゃんと二人で帰ってくれ。そんじゃぁな~。」
「あぁ、また明日。」
(……ったく。いい奴すぎるなあいつは。)
朝日の気遣いに感謝し教室を出て校門で待っていると、前髪を弄りながら歩いてくる小春を見かけたので軽く手を振る。
すると、恥ずかしそうにはにかみながら速足でこちらまでやってきた。
「お待たせしてすみません。日直の仕事が長引いてしまいまして…。」
「俺もさっきまで朝日と話してたから大丈夫だよ。聞いてると思うけど今日は二人はデートらしいから俺だけだけど許してな。」
「で、ででーと…!?あ、いえはい……その、朱莉ちゃんから聞きました。あ、あの!私は涼真くんと二人で帰れるのもうれしいですから!!」
「っぷは!ははは!!ありがとう、俺も小春と二人で帰れてうれしいよ。」
一瞬で百面相になって慌てていた小春に思わず吹き出してしまうが、一緒に帰れて嬉しいと言われて悪い気になるわけもなかった。
「む~…。笑われた後に言われてもなんだか複雑です。」
「ごめんごめん、もうからかわないから。さ、帰ろうか。」
そしてそのまま小春と共に学校を出て昼休みに聞けなかった小春の話を聞くためカフェに寄ることにした。
席に座り飲み物が届いたところで小春がすぅと深呼吸したあとに話し始めた。
「えーっとですね、その……。今週の日曜日ふ、二人でどこか遊びに行きませんか?丁度テストも終わったことですし……。あ、あと恋人っぽい雰囲気を作るためにも二人で出かけてみた方がいいんじゃないのかな~って思いまして……。」
デートのお誘いかと思ったけどそういうことか…。何を期待してるんだ俺は。
まぁでも確かに学校では一緒でも休日に会っていなかったりすると、恋人っぽく見られないかもってのは一理あるのかもしれないな。
「もちろんいいよ。じゃぁどこに行こうか。っていっても俺もどこがいいのか分かんないから一緒に考えない?」
「は、はい!二人で楽しめる場所に行きましょう!」
どこかやってしまったという表情をしていたが、俺の提案を聞いてぱあっと明るい表情になり、その後二人でどこに行くかスマホで探しながら寛ぐことにした。
日曜日の場所も決まり、カフェを出て小春の家の方向へと歩き出そうとしたその時、突然俺の腹辺りになにかが突っ込んできた。
「うぐっ…。」
「ぅあ〜す、すみませんです!!ってあーー!!!お前は佐伯!!!」
「せ、生徒会長か……。」
サイズ的にちょうど俺の鳩尾にクリティカルヒットしてしまったようで俺はそのまましゃがみこんでしまう。
「りょ、涼真くん大丈夫ですか!?」
「あっ…。す、すまない!私が小さいばっかりにお前の腹に…。」
生徒会長があわあわとしているとその後ろから袋を持った女性が駆け寄ってきた。
「ちょっときょうちゃん〜、いきなり走って行っちゃダメでしょ〜って。あれれ?佐伯さん?」
「え?あ、あぁ橘さんじゃないですか…。」
俺が変わるきっかけを作ってくれた橘さんがなぜこんなところに?ん?ってか橘ってもしかして。
「もしかして、生徒会長のお姉さんですか?」
「せいか〜い!それよりもきょうちゃん?佐伯さんになにかしたんじゃないでしょーねー??」
「うぐっ…。ぶ、ぶつかってしまいました…。」
「あーもう。これで佐伯さんが美容院来てくれなくなったらきょうちゃんのせいだからね〜。ほーら、お邪魔しちゃ悪いし帰るよ〜。」
「あぁ~!!!離してください姉さん!!まだ佐伯の口から生徒会に入ると聞いてないんです!」
「ダーメ。佐伯さんにこれ以上迷惑かけないの。それじゃあお邪魔してごめんね。この子は連れて帰るから、また美容院にもいらしてくださいね〜」
「あああああああ!!!佐伯ぃ!私はまだ諦めないからなあああああ……!!」
嵐の如く現れた生徒会長だったがそのままお姉さんに引きずられてどこかへいってしまった。
だがあの美容師のお姉さんが生徒会長の実のお姉さんだったとはなんとも世間は狭いな。
また1か月後くらいに美容院に顔を出しに行くかなどと考えていると、小春が橘さんたちが去っていった方ををじとーっと見ていた。
「あぁ、ごめん。置いてけぼりにしちゃって。さっきの人は俺がこの前行った美容院の人で………小春?」
「い、いえ!そ、そうだったんですね!!……よかった…。」
「よかった?」
「な、なんでもないですー!!」
そういうと歩いて先に行ってしまったので、急いで追いかける。
最近ますます勘違いしそうな事ばかり言う小春に俺は朝日から言われたことを思い出した。
『お前も薄々気づいてるんだろ、ちゃんと向き合えよな。』
(……そういう事なんだろうな。)
その後、家に帰った俺は日曜日のための服装を考えるのに頭を悩ませることになってしまい、結局土曜日に朝日に何着か見繕って貰うことにして眠りについた。
☆あとがき☆
察していた方もいましたが、あの美容院のお姉さんは生徒会長のお姉さんでした。
次回はデートだドンドコドン
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