唯奈視点4

「あなたたちには涼が通りかかったときに私をナンパしてるふりをしてくれたらいいわ。こっちに見向きもしないようならちょっと大きめの声を出して、壁際に寄せて私の腕を掴んで無理やり連れて行こうとしてちょうだい。」


「作戦っていうから大掛かりなもんかと思ったが、案外普通だな。まぁ確かにお人好しそうな感じだったからいけるか?でもよぉもしそれでも助けようとしなかったらどうすんだよ。」


「それはないわ。一緒にいるのがあの子なら助けてあげてって言うだろうし。」


なるほどと男たちは頷いた。

その後は、涼たちがいつ帰るかわからなかったためひとまず17時頃に決行することにした。


私は彼らとこれ以上いてもどうしようも無いと思い、この場所から移動しようとしたところで振り返ると、私のことを睨む彼の姿がそこにはあった。


「おい、唯奈。そいつら誰だよ。」


「え?健司くん?な、なんでここに……?」


それは私の彼氏、つい先程までメッセージアプリで連絡を取りあっていた健司くんだった。


「俺の事なんて今はどうでもいいだろ。なんでこんな路地裏で男二人と一緒にいるんだって聞いてんだよ!!」


「いや、この2人はその……」


(まずいまずい…。この状況は想定してなかった。なんて答えればいいの。私から声をかけたなんて言ったら誤解されるに決まっている。)


私はどうすればいいのかどう伝えるのがいいのかを必死で考えていると横から金髪の男が健司くんに対してこの場を更にかき乱すようなことを口にする。


「はぁ?なにお前。この子はなぁこの後俺らとお楽しみなんだからよぉ、邪魔すんじゃねぇよ。今なら見逃してやっから早くどっかいけや。」


「ちょ、ちょっとそんなこと言ってない……!」


「あぁ?てめぇには言ってねぇんだよ。髪の毛染めたくらいでイキってんじゃねぇぞ?……おい、唯奈とっととこっから離れんぞ。」


健司くんが私の手を引いて離れようとする。


「んだと、このガキが!!!」


このままだと二人が喧嘩を始めてしまう……いや、待てよこれは好都合かもしれないじゃない。

別にこの人たちとやましいことをしていた訳でもないんだから正直に話せばいいんだ。勘違いさせたのは私が悪いんだもんね。

それに、この前のことがあるんだから健司くんだってきっと話に乗ってくれるはず。


「待って、健司くん!こんなところで男の人といて勘違いさせてしまったのはごめん!でも、この人たちは涼に復讐するために手伝ってもらうだけなのよ!」


「涼…?佐伯の名前がなんででてくんだよ。」


私は二人の間に立ちこの状況を説明してこの後のことを健司くんにも手伝って貰おうと話し始めた。


「なるほどなぁ……。」


健司くんは私の話をすべて聞くと腕を組み黙り込んでしまった。


「そういうことなの!健司くんも涼に一泡吹かせたいでしょ?もちろん協力してくれるよね??」


「……。」


目を開きコチラを見ているのにずっと黙っている健司くんから、協力するという言葉を待っていた。


「はぁ……断る。」


「え……?」


今、健司くんは断るっていったの?なんで?


「見損なったぜ唯奈。俺は佐伯が気に入らねぇけどな、そんなことであいつに復讐してぇわけじゃねぇんだよ。それに、五十嵐さんがそのあとどうなるかなんてだいたい想像できるだろうが!!お前のしょうもない妄想にあの子を巻き込んでんじゃねぇ!!!」


「なっ……!別にあの子がどうなったってどうでもいいじゃない!!だってあの子は……!!」


私から涼を奪って……。


「佐伯をとられたってか??お前が佐伯と別れて俺と付き合ったんだろ?捨てたのはお前じゃねぇか!それになぁ、佐伯がだせぇかっこをやめてから毎日のようにずっと佐伯佐伯って……お前の彼氏は俺じゃねぇのかよ!!!」


「いや、だって……涼は…、健司くんがそんなことを……」


初めて聞かされた健司くんの本音に私は頭がこんがらがってしまう。そんな風に思っていたなんて知らなかった。なら、今までの私の行動って……?


「はぁはぁ……。今のお前とこれ以上話したくねぇ。ちょっと頭冷やして自分のやろうとしたこと考えてみろ。」


「ま、待ってよ健司くん!健司くん!!!!!」


健司くんは私の言葉に耳を貸そうとせず二人の男に言い聞かせる。


「……それとそこの二人。さっきの件実行に移したら俺はお前らの写真を警察に届けて全部話すからな。これ以上そいつにも関わんな。」

「チッ。」「ほっ……」


いつの間にか撮っていた写真を見せられた男たちは健司くんから距離をとる。


そして健司くんは去っていってしまった。

私はただそれを眺めることしか出来ずにその場に座り込んでしまう。


「あ〜あ。興醒めだわ。よくよく考えりゃ未成年の子に手出すとか犯罪じゃねぇか。あぶねぇとこだったぜ。じゃあなお嬢ちゃん。俺らもう行くわ。」

「はぁ、よかった。なんも起こんなくって……。おい待てよ!」


そして二人の男もどこかへ行ってしまい私は一人取り残されてしまう。


しばらく座り込んでいたが私は立ち上がりふらふらと歩きだす。

さっき健司くんに言われた言葉が頭から離れず、ずっと考える。


……何が間違っていたの?


私は、何を間違えてしまったの?


皆私から離れていく。どうして…?


そこからどうやって家に帰ったのか覚えていなかった。気づけば自分の部屋にいたような気がする。





「どうした唯奈?箸が止まっているぞ。」


「え?う、ううん。なんでもないのパパ。」


パパに話しかけられてはっとしたわたしはご飯を食べ進める。


「そうか…。そういえば最近朝迎えに来ている彼とはうまくいってるのか?涼真くんと別れたと唯鈴からきいたときは何かされたのではないかと思ったんだが、唯奈から振ったと聞いてな。」


「…っ。え、えぇ。涼なんかよりも素敵な彼だから安心して!!」


ママがパパに言っていたなんて……。唐突に聞かれて誤魔化してしまった。その彼とはついさっき喧嘩したばかりだというのに。


「ならいいんだ。涼真くんには悪いがあんな格好で唯奈の横にいてほしくなかったからな。唯奈もせいせいしているだろう。はっはっは!!」


「ちょっと、あなた。それは…」


「なんだ?……すまん、会社からの連絡だ少し席を外す。」


「もうっ……。唯奈?本当にこのままでいいの?今まで涼真くんの人生を大きく縛ってきていたのに、これ以上迷惑をかけようとして…。止めなかった私にも責任はあるけれど、でも……。」


ママから痛いところを突かれた私はバンっと机をたたき立ち上がる。


「ごちそうさま!!もうお風呂入って寝るから、部屋はいってこないでよ!!!」


「あっ…ちょっと唯奈!」


うるさいうるさいうるさい。ママも健司くんも涼とあの子の味方みたいにしちゃってさ……。

なんで私が涼にかかわると迷惑になるのよ。今までいちどもそんなことなかったじゃない。


そのあといくら考えても健司くんの言いたかったことも、今こんなにもモヤモヤとしているのかもわからなくなってしまい、ついポツリと言葉を発する。


「……私はなんでこんなにも涼に執着しているの?」


当然、返答など返ってくるわけもなかった。そしてそう呟いた私はスッと意識が遠くなっていくのを感じ眠りについた。





そしてしばらくたったある日、健司くんから今日は一緒に行けないと連絡があり、一人で学校へと向かい教室に入るとまさかの人物から話しかけられた。


「おい唯奈、今日話がある。放課後、皆が帰ったあとにこの教室でだ。」




☆あとがき☆

これにて第2章完結です。

第4章で本作の完結を予定しておりますのであと2章分お付き合いいただけますと幸いです。


本当は唯奈をしつこくナンパしているように見える所を涼真に助けさせようとして失敗するっていう流れとか、実際に小春が二人に攫われたりなど、他にも何パターンかあったんですがコメントにもあったように犯罪行為を犯した結果唯奈だけが助かってしまう、みたいな結末になりそうだったので結局この形に落ち着きました。

コメントしてくださった方々ありがとうございました。



♦お知らせ♦

この作品のタイトルを変更します。

思いつきと語感でタイトルを決めるものですから、内容と合わなくなってきてしまいまして…。コメントでも本気って??みたいに言われることがあって、う~ん確かになぁと私自身思ったのもあって変更を決心しました。


変更後のタイトルはこちらになります。

「僕は幼馴染に裏切られた。俺はもう自分を偽らない。」


今後とも本作をよろしくお願いします。

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