紗季視点

「今日はいろいろありがとうございました~!」


「お邪魔しました。綾ちゃんまた学校で。」


「またね~。」


私たち3人は綾ちゃんと涼真さんに手を振って、綾ちゃんのお家を後にする。


「~♪」


あたしはルンルンと鼻歌まじりに歩きながら今日一日の出来事を思い返す。


(涼真さん、か。あまりにも早すぎた再会だったけど、まさか綾ちゃんのお兄さんだったなんて。

コンビニで助けてくれて、私の我儘に付き合って勉強まで教えてくれて……しかも連絡先までゲットしちゃった。もしかしてこれって運命的な出会いってやつじゃない…!?)


きゃーっと涼真さんとのことを思い出しつつ歩いていると横からひよちゃんがニヤニヤとしながらはなしかけてきた。


「お~お~、さきちゃんご機嫌だねぇ~。」


「えへへ~、そりゃそうでしょ~!もう会えないと思ってたんだもん!」


「そっか、そっかぁ~。でもさきちゃんの言う通りの人だったねぇ~。朝は信じてなかったけど今日の涼真お兄ちゃんの行動とか見てると嘘じゃないってわかったよ~。あ~あ、わたしも佐伯家の子になりたぁ~い。」


「えぇ!?ひよちゃんも涼真さんのことを!?」


「うん~。あんな優しい手で撫でられちゃったらますますお兄ちゃんに欲しいよぉ~。まぁ、綾ちゃんの反応が面白いっていうのもあるんだけどねぇ~。」


なんだ、そっちかとひよちゃんの言葉にホッとしていると、みっちゃんがふふ、と笑いながら私が気にも留めていなかったことを口にした。


「でも、あれだけ勉強もできて綺麗なお顔をされているならすでにの一人でもいそうですね。」


「へ、彼女?……どっどどどどどういうことみっちゃん!?」


「え?いや、普通に考えて涼真さんには彼女くらいいてもおかしくないですよねと。」


か、かのじょ…そっか、そうじゃん!!

なんであたしってば気づかなかったんだろ……。

あれだけ優しくて背も高くてかっこいい人に彼女がいないわけないよね……。

あぁ…運命なんてなかったんだ……。


あたしが落ち込んでしょぼくれていると、ひよちゃんが不思議そうな顔をしてあたしに言ってくる。


「え~?なんで、さきちゃん落ち込んでるの~?まだ、涼真お兄ちゃんに彼女がいるって決まったわけじゃないのに~。」


「いやだってさ~あんなかっこいい人に彼女がいないわけないじゃん~……みっちゃんのいうとおりだ~…う~…」


当たり前でしょとひよちゃんに言うと、ひよちゃんは首をかしげると、近くのカフェを指さす。


「ん~?さきちゃんがなんでそんな落ち込んじゃったのかわかんないけど~。お、ちょっと喉乾いちゃったからあそこいってから話そっか~。」


正直そんな気分じゃなかったけど無理やりひよちゃんに引きずられてカフェの中に入る。


ドリンクを注文して席に座るとひよちゃんがさっきのことについて話し始める。


「あのね~?なんかおかしいきがするんだよね~。涼真お兄ちゃんはあんなにかっこいい人なのにどうして今までわたしたちは知らなかったんだろうって思ってさ~。綾ちゃんだって最近になってから、わたしたちにお兄ちゃんのことについて話してくれたでしょ~?しかもそのときに『やっと話せるようになった』って言ってたんだよね~。」


「??えっと?つまりどういうこと?」


ひよちゃんの言ってることがわからずにあたしが聞き返すと、みっちゃんも横からひよちゃんの言いたいことを簡単に説明してくれる。


「つまり日和が言いたいのは涼真さんには今まで何かしら事情があってそれが解決したから綾ちゃんが話してくれるようになったってこと?」


「そ~そ~さっすがはみっちゃーん。あのときの綾ちゃんの言い方になんか引っかかってたんだよね~。」


普段あんなにぽわぽわしているのにそんなことを覚えていたのかと感心しているとひよちゃんが続けて言う。


「それに涼真お兄ちゃんもわたしたちと同じ中学校だったはずでしょ~?ならわたしたちが知っててもおかしくないのに、今まで知らなかったってことは絶対なんかあるよ~。不登校とか、病気で休みがちだったとか~。……あとは目立たないようにしてたとか~?」


ひよちゃんの言葉をようやく理解したあたしはなるほどと頷く。


「なるほど、そ~いうこと。確かに2年は同じ学校だったはずなのに涼真さんの話なんて聞いたことなかったなぁ~。あんなにかっこいいんだから絶対モテてるはずなのに。どんな理由があったのかはまだわかんないけど、最後の目立たないようにってのはあたしにはよくわかんないかな~。」


「そうなんだよね~わたしもそーおもうの。あんなにすごいのにわざわざ隠す意味ないと思うから、これは違うかも~。」


もし仮に涼真さんが恋人なら絶対自慢したくなるし、涼真さんが変わらずモテてたってそんな人が自分のことを好きでいてくれるならそれでいいもんね。わざわざ目立たないようになんてさせるわけないって。


あたしは自分が涼真さんと付き合えた場合を想定していろいろと考え、ある結論に辿り着く。

そしてあはは~と笑うひよちゃんの手を取って席を立ちあがり宣言した。


「よしっ!そうと決まれば来週からいろいろと涼真さんのことについて調べるぞ~!そして彼女がいないかを確認する!やるぞー!!」


「お~~!」


あたしはこれから涼真さんと付き合うためまずは涼真さんのことを知ろうと宣言する。

すると、つい大きな声で立ち上がってしまっていたようで周りの人の視線がこちらを向いていた。恥ずかしくなったあたしはすみません!と頭を下げながら座りなおす。





「……直接聞いた方が早いんじゃないかしら…。」


そんな二人を見てアイスコーヒーをのみながらぽつりと美里はつぶやいた。

そんな呟きは作戦を考えることに夢中になっている二人には聞こえていなかった。




☆あとがき☆

GWフルでお休みいただきすみません('ω')

待っていてくれた方、新しくフォローしてくれた方、どうぞこれからも引き続きよろしくお願いします~

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