第17話 テストの時期
チリリリリリリリリ
ピッ
「ふぁ~あ。」
目覚ましの音で目が覚めた俺は昨日遅くまで起きていたからか、つい大きなあくびをしてしまった。
土曜は綾香たちと勉強会をしたことで、それに影響を受けて日曜のほとんどを中間テストの対策としてテスト勉強をしていたからだ。
着替えを終え洗面所に行きすっかり慣れた髪型へとセットし、リビングで朝食を食べる。
朝食を食べていると綾香がふらふらと起きてきた。
「お兄ちゃんおはよぉ~。土曜日はありがとね~」
「あぁおはよ。あれくらいなら大丈夫だ、ってか後ろハネてるぞ。直してやるから櫛持ってきな。」
綾香の寝ぐせを直してやっていると、キッチンの方から母さんがこちらを見てニコニコとしていた。
「母さん?どうしたの?」
俺は視線に気づいて母さんへと問いかける。
「ん~ん。前よりも二人の仲が一層よくなってくれたのが嬉しいなぁ~って。」
「そうかな?いつも通りだと思うんだけど…、ほいなおったぞ、しっかりしろよ~。」
「はぁ~い。ありがとっ」
綾香がくるりと振り返りお礼を言って朝食を食べ始めた。
すると、母さんがそういえばと話し始めた。
「そうそう涼真。昨日買い物行ったらたまたま
「あぁ。なんか想像できるかもなぁ。」
唯鈴さんは唯奈とは違って穏やかな人だからなぁ。というかあいつ、自分の母親にすら言ってなかったのか。
「今度涼真にも謝らないといけないって落ち込んじゃってたから、申し訳ないけどその時はお願いできるかしら?」
「あぁわかったよ。また改めて唯鈴さんと話してみるよ。」
唯鈴さんは信じてくれるだろうけど
俺はひとまず母さんにそう伝え、鞄を持って学校へと向かった。
♦♢♦
学校へと向かう坂の途中、なにやらそわそわとしながら立っている女の子がいた。
その子と目が合うと慌てた様子でこちらへと近づいてきたため、なんだと思っていると鞄から手紙を渡してきた。
「あの!さ、佐伯君!これ読んでください!!」
通学路で突然声をかけられ手紙を渡されたのは初めてで少し戸惑ってしまったが、それを表情に出さないよう軽く微笑みながら手紙を受け取りお礼を伝える。
「あぁ、ありがとう。ちゃんと読ませてもらうよ。」
「は、はい!!!!そ、それじゃ!!!」
すると女の子は顔を赤らめそのままびゅーんと走り去っていってしまった。
そんな後ろ姿を見送った後手紙を鞄にいれると、後ろから聞き覚えのある声で声をかけられた。
「おはようございます、佐伯さん。…本日もモテモテですね。」
振り返るとそこにはどこか不機嫌そうに見える五十嵐さんが立っていた。だが俺と目が合うとパッといつもの表情へと戻る。
「おはよう五十嵐さん。からかうのはよしてよ、俺だってこういうことは初めてだって。」
苦笑交じりに五十嵐さんに答えると五十嵐さんは口に手を当てながら微笑んだあと、俺の隣へと並んで歩きだす。
「ふふ、ごめんなさい。佐伯さんが他の女の子から手紙をもらっているのをみてしまったのでついからかってしまいました。」
「はは、五十嵐さんにまでからかわれるなんてね。一応言い訳をしておくと、前に朱莉ちゃんにちゃんと読むようにって言われたから受け取るようにしてるんだよ。」
「ふふ、そうだったんですか。菊池さんと同じように佐伯さんも朱莉ちゃんには逆らえないんですね。」
ふふふと笑いながら朱莉ちゃんのことを話す五十嵐さんだったが、先ほどからずっと俺の鞄を見つめていたままだった。俺はそれに気づき五十嵐さんだけに聞こえる声で口にする。
「…大丈夫だよ、ちゃんと彼女がいるって断るから。」
「っ!え、あ。」
「ほら、早く行かないと遅刻しちゃうよ。」
顔を赤くして口をパクパクとしている五十嵐さんをみて、さっきの仕返しができたと満足した俺は早く早くと急かして学校へと向かった。
五十嵐さんをクラスへと送り、自分の教室に入ると俺が入ってきたことに気づき挨拶をしてくれるクラスメイトと相も変わらず睨んでくる唯奈たちとの2グループで主に別れていた。
俺はそんなクラスメイトに挨拶を返して唯奈たちの方には見向きもせず席へと座り、なんだか落ち着かない様子の朝日とHRまで適当に話していた。
朝日から唯奈が何か言いたそうな様子でこちらをみていると教えてもらったが、気にするなと言っておいた。
お昼休みになり中庭でいつも通り4人でご飯を食べていると、朝日と朱莉ちゃんが突然俺たちに向かって頭を下げてきた。
「頼む!二人とも!俺たちに勉強教えてくれ!」
「おねがいしまぁす!!」
一瞬ポカーンとしてしまったが、朝から朝日がそわそわしているなと思っていたらそういうことだったのか。
俺は朝日のおかしい態度に一人でに納得したが、一緒に朱莉ちゃんも頭を下げているのを見てそんなに頭が悪かったか?と疑問に思い五十嵐さんの方を見てみる。
すると俺が何を言いたいか察したのか、あははと苦笑いをして目をそらされたためそちらについても納得してはぁ、と溜息をつき、しかたないなと教えることにした。
「わかったよ、そんなに頭下げて言うことでもないだろうに。まぁでもテストまであまり日もないからとりあえず赤点回避できるくらいには教えるよ。五十嵐さんも手伝ってくれる?」
「はい。私も自分の復習できるのでぜひ協力しますよ。」
「サンキュー涼真、小春ちゃん!!!」
「ありがとー!!これでお小遣い減らされずに済む~!」
俺の言葉に二人がやったやったと喜んでいるが、これからテストなのにもうお小遣い減額が決定しているのかと俺と五十嵐さんは呆れて互いに笑ってしまう。
小躍りしている二人を呼び戻してテスト勉強の場所と時間を提案した。
「じゃぁ早速今日から放課後に図書室でするか。」
「え~ファミレスにしようぜ~」
落ち着けそうな場所ということで図書室を提案したのだが、それに対して朝日がブーブーと文句を垂れだしたので俺は朝日の頭にチョップする。
「ダメだ。そんなとこで勉強することになっても、お前が集中してするわけないだろ。」
「いてーしひでーって!だってせっかくの放課後に図書室とかやる気でねぇじゃんか!」
「はぁもうほんとに仕方ないなお前は。別に行かないとは言ってないんだから、終わってから行けばいいだろ。」
「まじで!?なんだよ~それならそうと言ってくれよな~!おっしゃ!そうと決まれば今日からテスト勉強だー!」
「お~!」
「お、お~!」
「はぁ。」
なんとも現金なやつだな。まぁそれだけでやる気出してくれるならそれでもいいか。
そしてこれからテストまでの放課後の時間は4人で勉強会をすることになった。
さすがに毎日とはいかないがとりあえず平日は週3で集まり休みの日は誰かの家で勉強をするということで落ち着いたが、結局3人とも俺の家がいいということで週末はまた俺の家で勉強会をすることになった。
そして俺は五十嵐さんとの関係を家族にまだ説明してないことに前日まで気づくことはなかった。
☆あとがき☆
おべんきょうきらい。
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