第18話 恋人宣言しちゃいました
平日の放課後、俺たちは図書室に集まってテスト勉強をし、その時に朝日が寝ていれば頭にチョップをしたり足を踏んだりして優しく起こしてあげ、そして叫んで起きた朝日が図書委員に怒られて出禁になりかけたりなど騒がしく過ごしていた。
もちろん、朝日のやる気を下げないためにも帰りはファミレスに寄ったり、少し寄り道して帰ることも忘れずにしていたのでなんとか1週間頑張ってくれたようだ。
そしてやってきてしまった土曜日。
事前に友達が来るからと伝えてしまったばっかりに、こうしてリビングで待機している母さんと綾香をみて俺ははぁと溜息をついてしまう。
「今日は友達が来るって俺伝えてたはずだよなぁ……。てかなんで二人の方が俺よりもそわそわしてるんだよ。」
「だって、ねぇ。涼真のお友達がお家に来るのは初めてじゃない?朝日くんだって昔は会ったことあるけど今どんな風になってるのか知らないし。」
「ね、ね。お兄ちゃんこの服変じゃないかな?」
「はぁ…。いつも通り可愛いけどそんなおしゃれする必要ないって…」
どうしてこうなったんだ。
いや、完全に俺の失態なんだけれども。
昨日家に帰った俺は夕飯の時に明日、家に朝日達が来ることを家族へと伝えたんだが、その言い方が悪かった。
「あぁそうだ。突然で悪いんだけど明日朝日と他にも友達が二人家に来るからちょっと騒がしくなるかも。」
「あらあら、朝日君がくるの?会うのは久しぶりかも。他にはどんな子が来るのかしら?あ、まさか女の子だったり~?」
「あぁ、朝日の彼女と俺のk……友達だよ。」
やばい、いらんことを口走りそうになった。ただでさえ唯鈴さんにも唯奈と別れたことが伝わったあとだっていうのに。
それに小春は本当の彼女じゃないしくそ、気抜きすぎてた…。
「へぇ~~。そぉ~友達ねぇ。」
「……なんだよその言い方。ほんとにただの友達だからな。」
「はいはい。わかりましたよ~。」
といったようなやり取りが昨晩あったわけだ。
最近あまりにも小春といることが自然だったため、つい本当の恋人のように思いこんでしまっていたのかもしれないな。
ピンポーン
昨日のやらかしについて自己嫌悪に陥っていると、朝日たちがきたようなので、母さんたちには部屋から出てこないよう言い玄関を開けて迎え入れた。
「いらっしゃい。」
「いらっしゃいませ~!」
「あ、こら綾香。」
「おう、涼真おはよ~っす。お、綾香ちゃん久しぶり!」
「こんにちはー!中学の時に見かけたことあったけど妹ちゃんすっごいかわいいね~!」
「おはようございます涼真くん、その子が妹さんなんですね。初めまして、五十嵐小春といいます。こちら、手土産にケーキを買ってきましたのでよかったらどうぞ。ふふ、ここのイチゴのタルトは美味しいですよ。」
「どうもこんにちは~妹の綾香です!わぁ~ありがとうございますっ!ここのケーキ食べてみたかったんです~!」
いつの間にか俺の後ろで待機していた綾香が3人と挨拶を交わし、ケーキを受け取ってリビングへと戻っていった。
「はぁ。ったく出てくるなって言ったのに…。3人ともいらっしゃい騒がしい妹でごめんな。小春もケーキありがとう。」
「い、いえ!お邪魔させていただくのになにも持って行かないのは失礼かと思ったので!はぅ……やっぱり名前呼びはまだ慣れませんね……」
実は数日前から俺たちは名前で呼び合うようになっていた。
というのも勉強が終わった後ファミレスでご飯を食べていた時に朱莉ちゃんからいくら仮とはいえいつまでも苗字呼びはおかしいと指摘されたのだ。
「俺もまだ慣れないからさ、まぁ徐々に慣れていこう。こんなとこで話すのもなんだしあがって。」
3人を連れて2階の俺の部屋へと案内する。
「お〜……?ほとんど何もないな。」
「唯奈関連のもの捨てたらほとんどなんも無くなったんだよ。」
「こ、ここが涼真くんの部屋……。」
「さっきも言ったけどほとんどものはないよほら、皆座って。」
キョロキョロと落ち着かない様子の小春と二人を机のまわりに座るよう促して教科書を開いて勉強を始める。
朝日には俺、朱莉ちゃんには小春が教えながらテストに出るだろう場所を重点的に進めていく。
しばらく集中して解いていると部屋のドアがコンコンとノックされた。
「涼真~、飲み物とお菓子持ってきたわよ~。」
「あぁ、母さんありがとう。」
「「「ありがとうございます~。」」」
母さんからお盆を受け取り一旦教科書をどけて机に置くと、なぜか母さんも横に座って話し始めた。
「母さん。皆気まずいって。」
「え~いいじゃない。ねぇ、涼真。とってもかわいい子たちだけど、どっちが朝日くんの彼女なの?」
「あ、はいはーい!私です!新田朱莉っていいまーす!佐伯君のお母さんめちゃくちゃ美人ですね!」
「あら~ありがとう。てことはこっちの子が涼真のお友達なのね?」
「あぁ、そうだよ。もういいからほらリビングに戻ってよ。」
小春が答える前に先に俺が答えて、とっとと母さんを部屋から出そうとする。
「も~すぐ出ていくからそんな無理やり押さないで、ちょっと言いたいことがあっただけよ。……本当にただのお友達なのよね?」
母さんがさっきまでの朱莉ちゃんに対しての穏やかな表情から真剣な表情へと変わり小春へと問いかける。
「だからただの友達って……」
「いえ、涼真くんとお付き合いさせていただいている、五十嵐小春といいます。ご心配されている幼馴染の神崎さんとのことも涼真くんからしっかりと聞いてますので安心してください。……私は涼真くんが自分らしくいれるようこれから支えていくつもりですから。」
小春が俺の言葉を遮って母さんに恋人宣言をしてしまう。
「そう……。それなら安心したわ~、試すような言い方しちゃってごめんなさいね。これからも涼真をお願いね。小春ちゃん。」
その言葉を聞いて安心したのか、母さんはニコッと微笑みそのまま部屋を出ていった。
そしてそれと同時にやってしまったと顔に手を当てて座り込む小春と、興奮した様子の朱莉ちゃんを呆然と見ていると朝日が俺に耳打ちしてきた。
「……なぁ涼真。おばさんにあれだけ言ってくれた小春ちゃんの想いを優しいから誤魔化してくれたんだとか適当な理由で片づけるなよ。お前も薄々気づいてるんだろ、ちゃんと向き合えよな。」
「……あぁ。わかってる。」
俺が考えていたことを朝日には見透かされていたようで、釘を刺されてしまった。
(わかってるんだけど…な。まだ一歩踏み出せないんだよ。)
小春が落ち着いた後、勉強を再開し3時間ほど経った頃、外が暗くなってきたためこの日は解散となった。
そして迎えた中間試験当日、つい癖で解答欄をずらしかけるといったこともあったが問題なく全教科解けた。
朝日たちも俺と小春の予想した問題はほとんど解けたらしく来週のテスト返却を安心して迎えられそうだった。
☆あとがき☆
その日暮らしで話を書いてるので書き始めと書き終わりで話の展開が変わることがよくある作者です。
自分が納得いく話ができたなーと思ったら最終的に涼真が情けなくなってるんですよね…、なんでだろう。
最近返せていませんがコメントは全部読ませていただいてます!皆さんのコメントをみてひとりニヤニヤとしています!
たまに、(あっ忘れてたそれ)ってなるときもあって話に一言足すこともあります。
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