第16話 勉強会

昼飯を食べ終え、ゴロゴロしながらスマホを見ていると、ピンポーンとチャイムが鳴った。どうやらもう約束の時間になっていたようで、綾香の友達がきたらしい。


俺はベッドから起き上がり、スマホのカメラアプリを起動して軽く髪型を整えておく。


そして、綾香がトタトタと二階に上がってきて俺の部屋をノックした。


「お兄ちゃん~今大丈夫?お友達が早く会わせてってきかなくって。」


「あぁ、大丈夫。今出るわ。」


ガチャリと扉を開けて綾香に変なところがないかみてもらってから、リビングへと移動する。


そしてリビングに入り、座っている子達に向けて綾香がえっへんと俺のことを自慢しながら紹介しだした。


「来てもらったよ~、ね?嘘じゃないでしょ?めちゃくちゃかっこいいお兄ちゃんです!」


「その紹介の仕方は恥ずかしいからやめような、どうも綾香の兄の涼真です。いつも綾香が世話になってるね。迷惑かけてない?」


とりあえず軽く挨拶をすると、一人の女の子が立ち上がって俺に向けて指をさしてくる。


「あーーーー!!!さっきのコンビニのお兄さん!!!」


よく見てみると、先ほどコンビニでお財布を忘れていた女の子だった。


「あれ?ついさっきのお財布忘れてた子か?綾香の友達だったんだな。」


「え?お兄ちゃん紗季ちゃんと知り合いなの?」


綾香に答えようとするが、興奮している様子の紗季という子に遮られてしまう。


「ね、ね!二人とも!さっき言ってたおにいさんだよ!まさか綾ちゃんのお兄さんだったとか、まじでやばくない!?」


「お~、まさかまさかだねぇ~。」


「さきちゃん。わかったからちょっと落ち着いて。お兄さんが困ってるでしょう?ひとまず自己紹介してからにしましょう。」


そういって興奮した様子の紗季と呼ばれた子を落ち着かせてくれた子から順に自己紹介をしてくれる。


「初めまして、さきちゃんと日和のせいで本日はお時間をいただきすみません。私霧島美里きりしまみさとといいます。綾香ちゃんにはいつも助けられてばかりで、迷惑をかけられたことなんて一度もありませんのでご安心ください。」


霧島さんは綺麗な黒髪が腰まで伸びており、眼鏡をかけているからか、学級委員長のようなしっかりとした印象の子だ。


「さっきはありがとうございました!!あたし、沖守紗季おきもりさきっていいます!お金は今度絶対返すんで、ほんと、あの、ありがとうございました!」


コンビニで出会った子は紗季という子で、綺麗な金髪で毛先は軽く巻いており、ピアスやネイルなど中学生にしてはなかなかに派手な子だ。


「どうもぉ~、楯無日和たてなしひよりっていいまぁ~す。あのぉ~あたしのお兄さんになってくれますか~?なんか、すごく甘やかしてくれそうな感じするんですよねぇ~。」


ぽわぽわした話し方で自己紹介をしながら唐突にお兄さんになってほしいといった日和ちゃんは、背が他の子達よりひと回り小さく、まだ幼さが残る子だ。常に眠そうにしているがこれが平常運転らしい。


「だ、だめだよひよちゃん!お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから!」


「え〜今日くらいいいじゃんか〜。ねぇ〜涼真お兄ちゃ〜ん。」


綾香の反応をみて面白がっているのか、日和ちゃんが俺のことをお兄ちゃん呼ばわりしてくる。

それを聞いた綾香が更に反応して俺の腕に抱きついてきて、それをみてニヤニヤとしていた。

なかなか癖のある子たちばかりだなと思いつつもみんなから好かれている綾香を見れたのはなんだか安心した。


未だに日和ちゃんに威嚇しながらくっついてきている綾香の腕を外して、挨拶も済んだことだしそろそろこの場から退場することにした。


「まぁ、とりあえずゆっくりしてってよ。それじゃぁ俺は買い物に出かけてくるから。」


顔合わせも済んだことだしどこか適当に遊びに行こうかと思い出ようとしたところで、紗季ちゃんに止められてしまう。


「あ、あの涼真さん!あたしたち今日勉強会するんですけど、よかったらあたしに勉強教えてくれませんか!?あたしほんと成績やばくて、だからおねがいします!」


「ちょ、ちょっとさきちゃん。私たちが教えてあげますからこれ以上お兄さんに迷惑かけちゃダメでしょう!お呼び止めしてしまいすみません。気にせずお買い物へ行っていただいて大丈夫ですから。」


霧島さんはそういいながら紗季ちゃんを止めている。


「ん~。いや、俺でよければ勉強みてあげるよ。別に大した用事じゃないから。」


捨てられた子犬のような目でこちらをみてくる紗季ちゃんを放っておけず、俺は彼女の勉強を見ることにした。


「ほ、ほんとです!?やったー!!」


大喜びする紗季ちゃんを呆れながらも微笑ましくみている霧島さんをみて、断らなくてよかったなと改めて思う。


一旦自分用の筆記用具を取りに戻り、スペースを開けてもらって勉強会を始めることにした。


♦♢♦


勉強を始めてから1時間ほど経ったが意外とみんな集中して取り組んでいた。特に意外だったのが日和ちゃんだ。

なんとこの中で一番成績がいいらしい。


紗季ちゃんはよくある、自分が何が分からないのかがわからないという典型的なパターンらしく勉強が苦手だという。


だが、いざ始めてみると地頭が悪いわけではなく、教えた通りにスラスラと解き進めていた。


「成績が悪いっていう割にはスラスラ解けてるね。あ、ここ計算間違いしやすいから気を付けて。」


「そ、そうですかね…えへへ。でも、涼真さんの教え方めちゃくちゃわかりやすいからですって!」


そう言われてこれまで勉強をしてきて良かったなと思った。

まさかあいつのためにやっていたことで誰かの助けになれるなんてな。


そのあとも紗季ちゃんの勉強を見てあげながら、途中で他の3人にも都度教えてあげたり、綾香が作ってくれたクッキーを食べたりしているとあっという間に時刻は17時を回っていた。


「そろそろ暗くなりそうだから、この辺で終わりにしようか。皆おつかれさま。」


「もう~ねむ~い。日和がんばった~涼真お兄ちゃん褒めて~。」


はいはいといいながら日和ちゃんの頭を撫でてあげる。

むぅ〜っとしながらこっちをみてくる綾香がおもしろくてつい俺も悪ノリしてしまっていた。


皆が帰り支度をして玄関まで見送ると、紗季ちゃんが改まって俺に聞いてくる。


「あ、あの連絡先!交換してくれませんか!」


それくらいならと俺はスマホを出して紗季ちゃんと連絡先を交換した。


「今日やったこと以外にもわからないとこがでてきたら、いつでも連絡してきていいから。」


「は、はい!!!今日はいろいろありがとうございました~!」


3人に手を振り家へと戻ろうとすると綾香がむすっとした顔をしてぺちぺちと俺の腰を叩いてきた。


「お兄ちゃんの天然たらし…」


「なんだそれ…」


最後になんだか嫌なレッテルを綾香から貼られ、その日の勉強会を終えるのだった。



☆あとがき☆

勉強嫌いすぎて教える描写めっちゃ省きました…。

次話は紗季ちゃん視点を投稿予定です。

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