唯奈視点 3
次の日、昨日泣きじゃくった私の目元はメイクでは隠し切れないほど腫れてしまっていたため仲のいい子たちに心配されてしまった。
私は自分がしてしまったことを知られたくなかったので、心配してくれる皆に対して昨日あったことをぼかして、涼から幼馴染としても二度と関わるなと言われてしまったと皆に答えた。
涼が登校してきたとき、他のクラスの子たちが涼の元へ集まっていくのをただ見ていることしかできなかった。その中には、私たちと一緒に以前の格好の涼を馬鹿にしていたこともあったクラスメイトもいたのに。
放課後、健司くんたちに気晴らしにと駅前で遊ぼうといわれた私は、少しでもこの気持ちをなくしたかったから遊ぶことにした。しばらく遊んでいると仲良さそうにクレープを食べている目立つ集団を見つけた。
その中には涼がいた。学年でも人気の高い菊池くん。そしてその彼女の朱莉ちゃん。そしてその二人と仲のいい涼。さらにもう一人涼と仲良さげに話している女の子。
私は昨日さんざん涼に突き放されたのに、偶然を装って話しかけに行ってしまう。
「あ、りょ、涼!」
涼は返事をしてくれない。
「ちょっと!無視しないでよ!」
なんで無視するの?
「ねぇったら!涼!!!」
「…チッ。なんだよ。」
3回目でようやく返事をしてくれたと思ったらすごく不機嫌そうな顔をしながらこっちを見てきた。
「あ、あの佐伯さん。もしかしてこの方が?」
「あぁ、それであってるよ。」
すると、私たちの会話に学年一の美少女と言われる五十嵐さんが入ってきた。さっき見えた女の子がまさか五十嵐さんだとは思わなかった。
「は?なによ、なんで五十嵐さんとそんな仲良さそうに喋ってるのよ……。」
「はぁ…。別に俺が誰と仲良くしゃべってようがお前には関係ねーだろ。いいから、とっととどっかいけよ。」
「な!何よその態度!!……ま、まさか涼が付き合ってる相手って…」
昨日新しい相手と言っていたのがまさか五十嵐さんなの?信じられなかった私は涼に聞いた。
そして、涼が口を開こうとしたそのとき健司くんや、皆が私に言ってくる。
「おいおい、何言ってんだよ唯奈。陰キャ野郎が学年1の美少女の五十嵐さんと付き合えるわけねぇだろ?」
「そうだぜ、五十嵐さんに告白したやつは既に20人以上振られてるんだし、こいつが付き合えるわけねぇって!妄想も大概にしとけってな!ぎゃははは!!」
「まぁ、今は良くても元があれだしねぇ。天狗になっちゃうのもわかるけどそれはさすがに無理でしょ!」
皆がそういってるってことは、昨日のも嘘ってこと?なんだぁ私ったら騙されてただけなんだ。
「なんだぁ、そっかそっかそうだよね。涼真なんかが五十嵐さんと付き合えるわけないもんね!やっぱり、昨日は私に見栄を張ってただけだったんだぁ!なになに~?私に嫉妬でもしてほしかったのかなぁ?でも、見栄を張るにしても五十嵐さんはさすがに無理があったんじゃない?あはは!まぁでも面白い冗談に免じて、今なら謝れば許してあげてもいいけど??」
「っ……!」
なんだ、言い返さないってことはやっぱり見栄を張ってたんだ!
私はそんな涼の様子を見て気分がよくなり五十嵐さんに近づいて涼のことについて教えてあげた。
「ねぇ五十嵐さん。涼のくだらない嘘に付き合わされちゃってかわいそうだったね~?そもそも涼なんて勉強も運動もできないし、見た目だって前と比べたら今は良くなってるっていっても、元々あんなダサい格好してたんだよ?これからどんどんと元に戻って行っちゃうと思うなぁ~。ね、悪いことは言わないからもう涼と関わらない方がいいよ?なんならこれからは私たちと一緒に遊ばない?丁度、今から皆でカラオケ行こうと思ってたから五十嵐さんも一緒に行こうよ!ほら!」
私は涼に巻き込まれてしまった五十嵐さんを私たちのグループに引き込もうと手を引いた、すると私の手は振り払われたと思った次の瞬間。パンっ!という音とともに私を睨んでいる五十嵐さんの姿がみえた。
「へ…?」
何が起きたのかわからなかった私はじわじわと痛む頬に手を当てる。
「いい加減にしてください!!涼真くんのことを一番知っているあなたが、どうして、どうしてそんな酷いことを言えるんですか!!!」
なぜ私は五十嵐さんにぶたれてこんなにも怒鳴られているの?そんなことを考えている余裕もなく続けて言われる。
「涼真くんは今までずっと、ずっと、あなたの我儘に耐えて耐えて、耐えてきていたんです!それなのにそんな涼真くんのことを貴女は裏切ったんでしょう!?あなたから手放した癖になんでまだ涼真くんを縛りつけようとするんですか!!」
「そ、そんなのあんたに関係ないじゃない!」
「関係あります!私と涼真くんは恋人同士なんです!!周りがなんと言おうと、私は不釣り合いだなんて思うことはありません!!だって、涼真くんはとっても素敵な人なんです!!!」
なんでそんなに自信満々に言えるの?涼が素敵なことなんて知ってた。すごいことも知ってた。だからわたしは隠してきたのに、あなたはそんな涼がいたら取られると思わないの?なんで?
「だって涼真くんはわたしの…」
「五十嵐さん、もう大丈夫だから。」
涼が優しい声で五十嵐さんと私の間に入りこみ落ち着かせていた。
その様子を妬ましくみていると、五十嵐さんが謝ってきた。
「……それと神崎さん、頬を叩いてしまってすみませんでした。もし痛むようでしたらこちらのお金で湿布を買ってください。」
私に1000円札を渡した五十嵐さんは、涼の手を引いてその場から離れていってしまった。
五十嵐さんにぶたれて座り込んだままの私を心配して皆駆け寄ってきてくれるが、男の子たちはまだ菊池くんたちが残っているのに涼のことを悪く言っている。
それを止める気もなかった。私の中でずっと五十嵐さんの言った言葉が残り続けている。
『涼真くんは今までずっと、ずっと、あなたの我儘に耐えて耐えて、耐えてきていたんです!それなのにそんな涼真くんのことを貴女は裏切ったんでしょう!?あなたから手放した癖になんでまだ涼真くんを縛りつけようとするんですか!!』
私がずっと涼に我儘を言っていた?
ちがう。
私が涼を裏切った?
ちがう。
私が涼を縛り付けている?
ちがう!!!
『私と涼真くんは恋人同士なんです!!』
ちがう!!!!!!!!
そんなの私は認めない。二人が付き合っているなんて絶対に認めない!
でも…今すぐに何かできるわけでもないよね。
きっと何を言っても今の涼は五十嵐さんから離れることはないだろうし。
私は一人、これからのことを考えて計画を立てる。実行に移すのはやはりイベント事のときだろう。
「そうよ、涼は何もできないんだから恥をかかせてやるわ…。私に縋りついて謝ってくるのが楽しみね…」
☆あとがき☆
唯奈視点2,3を同時投稿しました。
学ばない唯奈。涼の本当の実力を隠していたことなど忘れて…
正直唯奈視点は皆様のヘイトがすごいんだろうなぁと思ってますが、まぁ私が書きたくなったので許してください!
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