第14話 その後
五十嵐さんに手を引かれながらしばらく歩いていると、駅から離れた公園に着いたところで五十嵐さんが足を止めて、こちらを向いた途端勢いよく頭を下げてなぜか謝ってきた。
「先ほどは勝手なことをしてしまいすみません!!それに、神崎さんのことや今までの苦労のことを知った風に話してしまって…自分を抑えられずにあんな……うぅ…」
まさか謝られると思っていなかった俺は戸惑ってしまうが、先ほどのことについてはむしろ感謝していた。
「え……あ、いやいや!五十嵐さんは悪くないって!唯奈に付き合ってるわけないって言われたときに、俺が何も言い返せなかったからだし…。むしろ五十嵐さんにあれだけ言ってもらえてすごく嬉しかったよ。ありがとうな。」
「い、いえそんな感謝されるようなことは…。えへへ。でも、佐伯さんの助けになれたのならよかったです。」
俺を助けられたと、嬉しそうに笑ってくれる五十嵐さんに先ほどから気になっていたことを聞いてみることにした。
「でもどうしてあそこまで俺のために怒ってくれたんだ?俺たちはまだ知り合って2,3日のはずなのに…。もちろん五十嵐さんがそういう性格なのかもしれないけど、なんかそれだけじゃない気がするんだが。…なぁ、もしかして俺たちどこかで会ったことがあるのか?」
踏み込みすぎた質問かもしれないが俺は先ほどから感じていた違和感をハッキリとさせておきたかった。
だが、五十嵐さんは一瞬嬉しそうな顔をしたと思ったらすぐに、作ったような笑顔で答えてくる。
「な、なに言ってるんですか。私と佐伯さんはついこの間会ったばかりですよ~。さっきの神崎さんに対していったことも、菊池さんと朱莉ちゃんから聞いてたからですし…。」
「それだけにしては感情が籠りすぎていたような気もするんだけど…。」
「き、気のせいですって!!あ、そうです!あのですね、恋人の関係が仮だとしても初めてだったので、つい感情がのりすぎてしまっただけだと思います!!そもそも、どこかで会っていたのならお互いに最初の段階で気づくはずじゃないですか?なので気のせいですよ!」
やっぱりただの気のせいなんだろうか。いや、でもどこかで会ったことがある気がする。ただ確信が持てない。
何とか思い出そうとしていると、公園の入口の方から二人が走ってくるのが見えた。
「はぁ~~やっと追いついた~~!あのまんま先に行っちゃうんだもん!あのあと朝日を止めるの大変だったんだからね!朝日ももうそんな顔しないの!」
「だってよぉ朱莉!!あいつらあのあとも涼真のことを散々馬鹿にして…くそっ、まだイライラする!」
どうやらあいつらは、置いて行ってしまった二人の前でもまだ俺のことを馬鹿にしていたらしい。
「朝日、もう大丈夫だって。五十嵐さんがあんだけ言ってくれたんだし、俺はもう気にしてないから。それに、お前がそんだけ怒ってくれてるだけで俺は充分だよ。今までも俺のことを助けてくれてありがとうな。」
「な、なんだよ。そんなの友達なんだから当たり前だろ!!急に照れくさいこと言うなよ!恥ずかしいだろ!」
少し感極まって泣きそうになっている朝日に俺も照れ臭くなり、なんだか気まずい空気が流れ出したところで、その音は鳴ってしまった。
くぅ~~。
なんともかわいらしい音がしたと思ったら、朱莉ちゃんが恥ずかしそうに手を挙げていた。
「え、えへへ…お腹すいちゃったみたい……。」
朱莉ちゃんのお腹の音でなんとか平静を取り戻した俺たちは、そのあとファミレスへと移動し少し腹ごしらえをしながら、再び4人でのゆるやかな時間を過ごすことになった。
結局五十嵐さんには何も聞けなかったが、俺が思い出したらもう一度聞いてもらうことにしよう。
Side.小春
ファミレスに着いてから少し御手洗で抜けた私は個室に入り、頭を悩ませていた。
(うぅ~私のバカバカ!せっかく涼真くんが気づいてくれたかもしれないのに、なんで誤魔化してしまったんでしょう…。あの時のお礼ができるチャンスだったのに。)
昔、家族で旅行した時に親切にしてくれたあの時のことを思い出す。
(あぁ、でも涼真くんは本当にあの頃と変わらない、優しい人でした。ゲームセンターではぬいぐるみをとってくれましたし、私が暴走してしまったのにそんな私に対してありがとう。なんて…。ますます好きになってしまいます……。よしっ!決めました!今はまだ仮の恋人ですが、いずれ本当の恋人になれるようこれからもっとアピールして告白します!がんばれ私!)
「おーっ!」
決意を胸に、お手洗いから出たところで待っていた方とバッチリ目が合ってしまい、さっきのを聞かれていたことに恥ずかしくなった私は「すみません!」と言ってその場を離れたのでした。
うぅ…恥ずかしい……。
☆あとがき☆
まだまだ、引っ張ります。
過去についても、恋人関係についてもはっきりとさせませんよ~
コメントで涼真が情けないなどありましたが、まぁ彼が本気を出すというのは、今までの抑えていた運動やら勉強やら、見た目の話なのでたまにはガツンと言いますが、唯奈サイドにはそりゃ馬鹿にされますわな~。
ってな感じです。いちいち全部に本気出してたら暴力的で厭味ったらしい男になってしまいそうなのでその辺は調整しています。
たまには投稿しない日があるかもしれませんが、まぁほぼ毎日投稿みたいなもんなんで気長に通知オンににてお待ちください~
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