第9話 変わり始める関係

朝日のとんでも発言を受けて、俺たち二人はつい立ち上がって叫んでしまう。

急に叫んだことで周りがなんだなんだとこちらに注目してきたので、手をぶんぶんと振ってなんでもないですと言いながら座り込む。


「お前いきなり何言ってんだよ!!お前のせいで恥かいたじゃねーか!」


俺は恥ずかしいのを誤魔化すために朝日の頭をしばく。


「いてーよ!いや、逆になんでそんなに焦ってるんだ?フリに決まってるだろ?付き合ってるフリだよ。はぁ…いつも以上に暴力的になりやがって……。」


「は?フリ?」


「もー今のは、朝日の言い方が悪いよ~?ちゃんと付き合ってるフリをして、唯奈ちゃんに諦めてもらおうっていわなきゃ。」


朱莉ちゃんが補足してくれたおかげでようやく朝日の言わんとしてることが理解できた。


「はぁ…そういうことかよ。朱莉ちゃんのおかげで納得はできたけど、それなら余計無理じゃないか?フリでも俺と付き合うのは嫌に決まってるだろ。」


俺は当然だろという風に朝日たちに言うが、二人はまたやれやれといった顔をしていて、俺の発言を聞いた五十嵐さんはなぜか肯定的な様子で朝日の案を受けいれようとしていた。


「あ、あの!私でよければ彼女のフリをお手伝いさせてくださいませんか!今の佐伯さんの話を聞いてみて見ぬふりなんてできません!」


「いや、でも…」


五十嵐さんからの提案は俺にとってはものすごくありがたいものだが、すぐにじゃぁお願いしますとは言えない。


「ほら、小春ちゃんもこう言ってることだしさ、フリだけでも頼んだらどうだ?それともなんだ、小春ちゃんに不満でもあるのか?」


「不満なんかあるわけないだろ。こんなかわいい子が嘘でも彼女なんて、誰だって喜ぶさ。」


「そ、そんなかわいいだなんて……。」


俺がかわいいって言っただけでそんな照れなくてもいいのに、きっと言われ慣れてるだろうにな。


「う〜ん俺としてはありがたいけど、でもほんとにいいのか?フリとはいえ、恋人になるから落ち着くまで俺と一緒にいることになるし、好きな人とかいたら誤解されるぞ?」


俺は懸念していたことを伝えるが、五十嵐さんは首をぶんぶん振って否定する。


「そ、そんな!好きな人なんていませんし今まで付き合ったこともありませんから!それに、こうして仲良くなるきっかけがあったんですから、これから一緒にいることになっても別に私は嫌ではないというか……。それとも、佐伯さんは私ではお嫌ですか?」


そういうと、うるうるとした顔になり俺を見つめてくる。


うっ…。そんな目で見られて断れるわけないだろ…。

あ~もう朝日にのせられたみたいで気に食わんけど、こんなにも五十嵐さんが協力的なんだから、ありがたくその案で行かせてもらうことにしよう。


「全然嫌じゃないし、むしろそれを聞いて安心したよ。じゃぁ五十嵐さん、少しの間だけど俺の彼女役として協力してくれるかな?」


「はい!精一杯頑張ります!」


頑張る必要が無いといいんだけど。


こうして俺は、幼馴染の彼女がいなくなってすぐに超絶美少女の彼女(仮)ができてしまった。


♦♢♦


昼食を食べ終えた俺たちは教室へと戻るのだが、やはり唯奈に絡まれてしまうことになる。


「ちょっと!なんで屋上に来なかったのよ!ご飯食べそこなうところだったでしょ!」


あぁうるさい。さっきまで五十嵐さんたちと話していたからか、やけにうるさく感じる。


「別に行くなんて一言も言ってないだろ。お前が勝手に来いって言って返事も待たずに席に戻ったんだろ。」


「んなっ!そんなの私が呼んだんだから来るのが当たり前でしょ!」


机をバンっと叩いて立ち上がったことで、一気に周りから注目される。


「何が当たり前なんだよ。俺がお前を優先する理由は何一つないぞ。」


「さっきからああ言えばこう言う…!もういいわ、じゃあ放課後は絶対に話をするから!わかったわね!?」


今回は俺がうんと言うまでここから逃がさないぞという圧を感じた。

めんどくさいがこれ以上関わりたくなかったので話に応じることにした。


「あぁ、もうわかったよ、めんどくせぇな。放課後な。俺もお前に言いたいことがあったし丁度いいわ。」


「ふん!わかればいいのよ!屋上まで連れて行くから逃げるんじゃないわよ!」


そう吐き捨てて唯奈がいつものグループに戻っていった。


「悪い、今日一緒に帰れないかもしれんわ。」


唯奈に捕まってしまったので、朝日には悪いが今日は帰れないと、朱莉ちゃんや五十嵐さんにも伝えてもらうことにする。


「いや、しょうがないって。こっちはなんとかするから、涼真もがんばれよ。」


俺はおう。と返事をして、席まで戻り、午後の授業を受けることにした。

休憩のたびに俺の席までやってきて、「放課後屋上だからね!」と言ってくる唯奈を適当に流して、放課後までにある程度何を言われても言い返す準備をしておくことにした。


「う~い。今日もよくがんばったな~ほいじゃぁ解散~とっとと帰れよ~。」


先生の適当な言葉のあと、皆帰り支度を始めている中唯奈が鞄も持たずに俺のところまでやってきた。


「早くいくわよ。着いてきなさい。」



屋上につくと唯奈がこちらを振り返り、今朝と同じようなことを言ってくる。


「今朝もいったけど明日からはいつもの格好で来なさいよ!!涼はダサい格好をしなければいけないって私の中で決まってるの!いい!?これはお願いじゃなくてだから!!!」


俺の予想していた通りの言葉を唯奈が言ってきたため、堪えきれずに笑ってしまう。


「ぷっ、ははははは!!!!」


「な、なによ!なに急に笑ってるのよ!」


「いやぁ〜思った通りのことしか言わねぇから、おもしろくってなぁ…。あ〜、お前の頭ほんとどうなってんだよ。はははは!!」


「はぁ!?ば、馬鹿にしないでよ、涼のくせに!!」


俺は一通り笑ったあとキッと睨みながらイライラしている唯奈に、さっきの命令に対しての答えを言ってやった。




「誰がお前の命令なんか聞くかよ。この浮気女が。」






☆あとがき☆

ついに涼真の反撃フェイズです。

今まで直接的なことを言ってこなかった涼真が、ついに唯奈に対してハッキリと言ってしまいました。


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