第7話 意味不明

ちょうどクラス中が俺たちの話題で持ちっきりのところで唯奈がやってきた。

なんともいいタイミングでやってきたものだなと、俺は思い唯奈が来た方に軽く目をやる。

すると、唯奈と仲のいいクラスメイトの女子が恐る恐る俺と本当に別れたのか聞いていた。


「おはよー。あーえっと、唯奈ちゃんさ、ほんとに陰キャ…佐伯くんと別れたの?」


「え?なんでそのこと知ってるの?」


「その、さっき佐伯くん本人が振られたって言ってたから…」


「ふーん。そうなんだ、涼はもうきてたんだ。うん、ほんとだよ~金曜日に別れて、なんと!健司くんと付き合うことになったんだ〜!」


あはは〜と健司と付き合うことになったことを報告している唯奈に対して、周りの女の子達はどこか微妙な顔をしていた。


「皆も健司くんとの方がお似合いって言ってくれてたし、涼と別れて正解だったかも!今朝も一緒に来ちゃったし♪」


「そ、そうなんだねぇ~…。うん、お、おめでとう…」


「ありがとー!そういや、涼は今どこにいるの?」


「え、あ~その…」


どうやら唯奈は俺を探しているようだが、クラスメイトの子は言いづらそうにどもってしまっている。

すると、朝日を見つけた唯奈が俺たちの方へと近づいてきて、俺がどこにいったのかを訪ねてきた。


「あ、ねぇ菊池君!涼がどこにいるか知らない?ちょっと言いたいことがあったんだけど見当たらなくて。そうだ、あなたも涼知らない?佐伯涼真っていうんだけど。」


朝日は俺と唯奈の顔を交互に見た後気まずそうに口を開いた。


「えっと、その唯奈ちゃんほんとに言ってる?」


「え?なにが?」


「いや、だからそのここにいるこいつが「もしかして、俺の顔を忘れたのか?まったく酷いやつだな。お前が探してたやつはずっとここにいるだろ。」


俺は朝日に被せるようにそう言った。

すると、俺が何を言ってるのかわからない様子の唯奈はポカーンと固まってしまったので、仕方なく唯奈にもわかるように説明をしてやることにした。


「だから、佐伯涼真だよ。お前の幼馴染で金曜日に電話で振られた佐伯涼真。俺を探してたみたいだけどなんか用か?俺はお前になんにも用はないんだけど。」


「は?あなたがりょ、涼なの…?」


「それ以外誰に見えるんだよ?」


朝日がボソッと「いや、ぱっと見涼真ではないよな~」と言ってきたので机の下で足を蹴っておいた。

「うぉおお」と痛みに耐えている朝日を横目に、唯奈は信じられない様子でブツブツと呟いていた。


「嘘よ…だって涼は不潔でだらしなくて、口調だってそんな強気じゃないし、ダサい奴で…。」


俺にその恰好をさせてたのはどいつだよと、思わずツッコみたくなったがまだその事実を言うのは控えておく。


「おいおい、どうしたんだよ。俺がこんな格好してるからって別にお前にはもう関係ないよな?」


「それは…そうだけど…でも…」


「でも?なんだよ?」


唯奈は手をいじいじとしながら言い淀んでいたが、ハッと思いついたのか変なことを口走りはじめた。


「いいや、関係あるわ!!!お、幼馴染じゃない!!」


「はぁ?」


「そうよ!幼馴染なんだから関係あるわよ!まったく、なんで私に何も言わないでそんな恰好をしちゃうのよ!いい?明日から私の言う通り前の格好で来なさいよ!」


本当に訳の分からないことを言い始めた唯奈に対して、俺は呆れ果てて朝日のことをみてみる。

だが、朝日も唯奈が何を言ってるのか理解できない様子でポカーンと口を開けていた。


「何言ってんだお前。幼馴染だからってなんでお前に許可撮らなきゃいけないんだよ。それにお前の言う通りにしなきゃいけない理由なんかあるわけないだろ。」


「な、なによ。今まで口答えなんかしなかったくせに…」


キーンコーンカーンコーン


ガララッ

「おーしHR始めるぞ〜ってなんだお前ら。そんなとこで集まってないでとっとと席座れよー。」


先生が入ってきたことで、みんな席へと戻っていった。

席に戻る途中唯奈が何度も振り向いて何か言いたそうにしていたが、どうせろくでもないことなのだろうと無視しておく。


点呼をとっているとき、あまりにも変わりすぎた俺を先生が何度も佐伯!と呼んでいたが、俺はずっと返事してるんだから現実逃避しないでほしかった。

5回目くらいでようやく認識してくれたのだが、そのあとのHRはいつも以上にぐだぐだになってしまう。


いつも以上にゆるっとしたHRが終わり、先生が教室から出ていくと同時くらいに、唯奈がすぐ俺の席までやってきてまためんどくさそうなことを言ってくる。


「私はその姿の涼のこと納得してないから!!話さなきゃいけないことがあるから昼休みに屋上に来なさいよ!いいわね!」


それだけ言うといつものクラスメイトの元まで戻っていってしまった。


はぁ…。まためんどくせぇことを…。

自分勝手な唯奈に対して呆れ果てて机に突っ伏してしまう。

だが、いつまでも自分の思った通り俺が動くと思ったら大間違いだぞと、心の中で呟きひとまず授業の準備をすることにした。





☆あとがき☆

ひとまず用意していたストックがなくなったのでこれからは、不定期投稿になります。

はやく真ヒロインを出したいので、早めに書きたいとは思ってますが、週に3,4回は投稿できればいいなって感じなので気長に待っててください。

引き続きよろしくお願いいたします。

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