第6話 登校日
そして月曜日を迎え、いつもとは違う朝の準備を済ませて、リビングへと向かう。
「おはよ。」
「あら、おはよ~」
「お兄ちゃんおはよっ!」
「おう、おはよう。なんか小綺麗な涼真はまだ慣れんな。」
揃っていた家族から挨拶を返され、父さんは未だ変わった俺に慣れないらしく、眉を八の字にしていた。
「土日あったんだから慣れてくれよ。それに本来の俺はこっちなんだから。」
「そうよ、貴方の学生時代そっくりじゃないの。」
「いやぁ、俺でもここまでではなかったなぁ。…もしかしたらお前明日から下駄箱大変なことになるかもな~?」
「へ?どういうことだよ。」
唐突にニヤニヤと意味不明なことを父さんから言われ意味が分からなくて変な声が出てしまう。
「俺の経験だよ。俺も中学までは身だしなみとか気にしてなかったんだが、高校に入って髪切っただけで、次の日からラブレターやら呼び出しやらで大変だったからな。そんなことがあった俺よりイケメンになってんだから、さぞモテるだろうよ。」
父さんそんなモテてたのか。まぁ今でも40代には見えないしバレンタインでも大量にチョコ持って帰ってくるもんなぁ。
母さんを見ると、確かにと頷いていた。
そういや、2人は高校の時からずっと付き合ってたんだっけな。
「いや、そんなことになるわけないじゃん。いくら、変わったって言っても父さんよりはモテないだろうし、っとそろそろ出るわ。」
「はいはい。これお弁当ね~、いってらっしゃい。」
「ありがと、いってきまーす!」
♦♢♦
登校していると周囲からの視線がいつもと違うものになっていた。
いつもは男女ともに馬鹿にしたような視線がほとんで、唯奈が隣にいるのに普通に早く別れろよと言ってくる奴なんかもいた。
それが一転して、変化した俺に対しては周りの女子からは驚きと好意的な視線。男子からは困惑と嫉妬の視線が向けられていた。
だが、俺が佐伯涼真だと気づいた奴はひとりもいなかった。
そんな視線を受けながら、いつも通り下駄箱で靴を履き替え教室へと向かう。
俺の所属する1-A組に着いてドアをガラッと開けると今まで談笑していたやつらがチラッとこちらを見たと思ったら、二度見してザワザワと騒ぎ出す。
俺の顔を見たクラスの反応は様々だった。
「なにあのイケメン」
「なんでこの教室に?」
「転入生とかじゃないの?」
「おいおい、あんなやついたか?」
「てか菊池よりもイケメンじゃね?」
俺は騒がしくなったクラスメイトを無視して自分の席へと座りに行き、俺の席の前に座っていたやつに声をかけた。
「よぉ。朝日。おはよ」
「お、涼真か。ちょっと待ってな、朱莉からメッセ来たから…うしっ。なんかクラスが急に騒がしくなったんだけど、お前なんかしってr………は??おいおい、どうしたんだよその見た目!?」
髪を切って登校してきた俺に驚いているのは、小学校からの友人の
朝日はなかなかチャラチャラとした見た目をしているが、真面目で成績も良く女子にも優しいモテ男だ。
中学の時から付き合っている彼女がおり、前の俺たちと違って仲が良く美男美女でお似合いなカップルだ。
今まで、こいつが俺と一緒にいてくれたおかげで、俺は酷いいじめに遭うことはなかったのだ。
「あぁ。まぁいろいろとあって唯奈と別れたんだけど、髪切ってみた。どうだ?」
「そのいろいろがめちゃくちゃ気になるんだけど…、いやくそイケメンだぞ??そういやお前そんな顔してたな〜。はぁ〜、ここまで変わっちまうのか。」
「そうか、似合ってるならいいや。」
「お、おう。ん!?てか唯奈ちゃんと別れた!?お前が振った…わけないよな。てことは唯奈ちゃんが…なんでまた。」
「まぁ来たらわかるから、朱莉ちゃんもいるときに詳しく話すわ。昼とかどうだ?」
「あぁ、それなら朱莉にも言っとくけどよ…」
そんな感じで朝日と昼飯の約束をしていると、周りが余計に騒がしくなってきた。
「はぁ!?あれが佐伯!?別人すぎでしょ…」
「冴えない佐伯くんじゃなかったのか?」
「てか、うちめっちゃタイプ…♡」
「ちょっと聞こえたんだけど神崎さんと別れたって…」
俺は、はぁ。とため息をつくと朝日がケラケラと笑っていた。
「なんだよ朝日。なにがおかしい」
「いやぁ〜朝学校に来たらイケメンになった親友がモテモテに!?ってなんかラノベみたいな展開が起きててまじおもろくて。てか、髪切ったこと唯奈ちゃん知ってんのか?前のお前だって元はと言えば唯奈ちゃんが原因じゃん?」
「あぁ、知らないだろ、言ってないし言う必要もないしな。」
「まぁそらそうか。」
などと話していると勢いよくドアが開き、先ほどから話題に上がっていた人物が教室にやってきてしまった。
「おっはよ〜!なんか騒がしいけどどうしたの〜??」
なんとも能天気な声でこの騒ぎについて触れている唯奈がついに登校してきたのだ。
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