第5話 やり返す

声をかけてきたのが今朝俺の見た目を馬鹿にしていた女たちだと気づき、めんどくさいと思いつつもとりあえずは定番のお断りの言葉を言うことにする。


「すみませんが、人を待ってるので。」

「え~その待ってる子って女の子でしょ?」

「そうですけど。なにか。」


3人組はニヤーっとした表情に切り替わる。


「じゃあいいじゃん、私たちより可愛い人なんていないよ〜?ほら今から楽しいことしようよ。」


「いや、だから連れがいるって。」


「いいからいいから~ほら、行こ!」


無理やり手をつかまれ連れていかれそうになるが、このまま連れていかれる訳には行かない。

特にこいつらは外見だけで人を馬鹿にしてくるような奴らだ。

俺はこれ以上こいつらに付き合う義理はないと、手を振り払って、ついでにお返しをしてやることにした。


「おい、いいかげんにしろよ。人を待ってるって言ってるだろ。てか、お前らこそ。」


俺がそう言った途端3人はぽかーんとしてから、顔を真っ赤にして怒鳴ってくる。


「なにそれ、鏡みてからナンパしろっていいたいの?」

「はぁ!?ちょっと顔がいいからって調子乗らないでよ!」

「せっかくあたしたちが遊んであげるって言ってんのに!!」


キャンキャン喚いているのを鬱陶しく思いつつも、俺は淡々と告げる。


「お前らは朝の記憶すらないのかよ。俺の服装見てなんとも思わないのか?」


「なにいって…」

「は?別に普通の服じゃん…」

「…ちょっと待って、こいつ朝に駅の近く歩いてたあのボサボサ頭の陰キャじゃない!?」


3人組のうちの1人が俺の服装をみて、朝すれ違ったことに気づいたが、他の2人は認めようとはしなかった。


「はぁ!?んなわけないでしょ!あいつがこんなイケメンなわけないじゃん!!」


はぁ。やっぱこいつら男を外見でしか判断してないのな。そりゃ知らないやつを通り際に馬鹿にしてるような連中だし当然か。

呆れつつもう一度言い返してやろうと思ったタイミングで後ろから声をかけられる。


「ばぁ!お待たせっ」


ここにきての救世主の登場に俺は安堵し、綾香に微笑みつつデートのような雰囲気を出すことにした。


「あぁ、全然待ってないよ。今日の服はいつもよりも一段と似合ってて可愛いな。」


いつもよりオシャレをしていた綾香を褒めると、えへへと嬉しそうな顔をして「ありがとっ」とお礼を言ってきた。


そんな俺たちの様子をみていた3人組はバツの悪そうな顔をして、無言でこちらを睨んでくる。


「で?何が私たちよりかわいいやつなんていない、だっけ?まさか、俺の彼女より自分たちの方が可愛いとでも思ってるのか?」


「へぁっ?ちょ、ちょっとおn…」


そう言うと、俺は綾香の肩を抱いて歩き出す。


「それじゃぁ、もう相手も来たことだしいいよな?あぁ、あと1個アドバイスしてやるよ。ナンパするなら見た目だけで判断しないことだな。お前らの馬鹿にした陰キャに声かけちまうかもしれねーぞ?じゃあな。」


俺は、綾香を連れて離れていく。

後ろでキャンキャン何か言っていたが気にせずに歩き続け、奴らの声が聞こえなくなったところで足を止め、綾香を巻き込んでしまったことを謝罪する。


「悪い!なんかしつこくナンパされてたからつい俺の彼女なんていっちまった。…ってどうした?顔真っ赤だぞ?」


俺が先ほどのことを謝ると、なぜか顔を真っ赤にしながらポカポカと叩いてきた。


「っ〜!!!もう!お兄ちゃんがいきなり肩抱いて、俺の、その綾香が一番かわいいだなんて、言ってきたりするからでしょ!」


そこまでは言ってないんだけどな。

何とかご機嫌を直してもらうために、何か好きなの買ってやるからと約束すると、まだぷりぷりしていたが少しは機嫌が直ったようだった。


「よし、気取り直して早く買い物行こうぜ。」


こうして俺たちは本来の目的の買い物へと向かった。



そのあとは自分の服を数着、綾香に見繕ってもらった。やはり女の子というべきか俺では思いつかないコーデばかりだった。


そのあとは綾香の服を買ったり、身だしなみ用のワックスや化粧品やらを買い込んで、最後に母さんたちへのお土産としてケーキを買って帰ることにした。



ちなみに綾香にはクレープを奢ってあげた。もっと高いものでもいいと言ったら、これがいいとのことだったのでそれならと二人でクレープを食べることにした。




♦♢♦



「「ただいま~」」


「おかえり~。あら、ほんとに涼真?ちゃんとすればいい感じじゃない!似合ってるわよ!」


「ありがとう母さん。前髪も鬱陶しかったからすげーすっきりしたよ。あと、これお土産のケーキ買ってきたからご飯の後にでも食べて。」


「あら、ありがと〜!でも唯奈ちゃんもいくら涼真が好きだからって、あんな格好させてなければよかったのにねぇ。これだと月曜日驚くんじゃない?」


「たぶんどっかで引っ込みつかなくなったんじゃない?俺のほんとの顔がどんな顔かももう思い出せなかったんだろ。もう別れたし関係ないでしょ。さ、あいつのことはいいから、ご飯にしょうよ。」


母さんははいは~いといってご飯の準備を進めてくれる。


途中で父さんが帰ってきて俺の顔を見たときに、「なんだお前、綾香の彼氏か?」と聞いてきたのは面白かった。実の息子の顔忘れんなよな。




そして日曜日は午前中の間、唯奈との思い出を整理していた。部屋にあった唯奈から強いられていた、服装や付け髭などもう必要のないものはすべて捨てておいた。


そのあとは、日課の筋トレと授業の復習だけは忘れないようにする。

今までずっと手を抜いているよう演じていたが、手を抜くのにもある程度実力がないと調整が上手くいかないから俺は必要以上に努力していたのだ。

上にも下にもならないためには、すべて理解していないとうまく調整できないからだ。


これからはその力を完璧に発揮するため、引き続きトレーニングは抜かりなく行っておく。


全て終わらせ、明日を楽しみにしつつ布団に潜り俺は眠りにつく。



感謝するよ唯奈。

お前が捨ててくれたおかげで俺は本気を出すことができるんだから。

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