第4話 僕としての最後

ピピピピ…


もう朝か。こんなに寝たのも久しぶりだな。

今までは夜遅くまであいつに付き合っていたからあまり眠れてなかったんだよなぁ。

いかんいかんどうしてもあいつのことが出てくるな。顔でも洗ってすっきりするか。


洗面所で顔を洗い鏡を見るとそこにはぼさぼさ頭の男の顔が映っている。


「今日でおまえとはさよならだな。」


そんなことを呟いても誰も返事はしない。だがスッと気弱な僕がいなくなっていくのを感じた。


「さてと、荷物は全部カバンにいれたけど…美容院の後は綾香と出かけるから酷い服装はできないんだよなぁ。」


クローゼットから、ましな服装を適当に見繕って着替える。今まで着たことはなかった服が数着入っていたのでおそらくは母さんが買ってきてくれていたものだろう。

家を出る時間が近づいてきたので、綾香にも一声かけておくか、と隣の部屋をノックした。


「綾香~?俺は先に美容院行ってるから、時間までに起きて準備しとくんだぞ~?」


「起きてるよ~!あ、ちょっと待ってお兄ちゃん今開けるから!」


パタパタと音がしてドアが開くと綾香は俺にネックレスを渡してきた。


「なんでネックレス?」


「ほんとは入学祝いで渡したかったんだけど、あの人にバレたら捨てられちゃうと思って渡せなかったんだよね。だから今日お出かけの時につけてほしいなって。えへへ。」


なぜいきなりネックレスを渡してきたんだろうと思ったが、そういうことか。確かにあいつなら綾香からって言っても信じてくれなさそうだしな。

ありがたくもらうことにしよう。


「ちょっとしゃがむから今つけてくれないか?」


俺は綾香にネックレスをつけてもらい、お礼を言ってから部屋を後にした。


とりあえず今はこのネックレスに見合うくらいには綺麗に変わりますか。


「いってきま~す」




♦♢♦





家を出て美容院へ向かうため歩いていると駅が近くなってきて人通りも多くなってきた。

すると、俺を見ながら「なに、あの格好」「陰キャくんががんばって服買ったんだ」「鏡見たことあるのかな(笑)」と笑っている声が聞こえた。


まぁ想定内だけど、人に馬鹿にされるのって結構イライラするんだな。今まで周りの声を気にしてなかったけど毎日のように笑われてたのによく気にしないでいれたな。と以前の自分のメンタルに関心してしまう。


周りの評価を改めて感じて少しナイーブになりながら歩いていると、そうこうしてるうちに目的地である美容院に辿り着いた。


「すいません。予約してた佐伯です。」


「はいはい。いらっしゃいませ~、えーっと佐伯涼真さんですね。本日担当させていただく、橘 といいます~ではこちらの席にどーぞ~」


えらくほわほわとしたお姉さんが出迎えてくれて、席まで案内してくれる。今まではあいつ以外見ないようにしてたけど、めちゃくちゃ綺麗な人もいるんだなぁ。


「ふふ。本日はどのようにしましょうか~。なかなか伸びてるので私としては思いきってイメチェンしちゃった方がいい気がするんですけど、どうですか~?」


「そうですね~。そのつもりで来たんで思いきってみようかな~ってちょうど思ってたんです。全部お任せでお姉さんの好きに切ってください。あ、坊主とかはやめてくださいね。」


はぁ~いと返事をした橘さんにカットを始めてもらった。前髪を挙げられたときに、「めちゃくちゃ素材いいじゃないですか~」とお褒めのお言葉をもらい、そのままカットしていってもらう。


無事にカットは終わりアイロンで軽く巻いて、ゆるふわパーマ風のセンター分けでセットをしてもらった。


「いや~やっぱり素材がよかったね~。久しぶりにこんなイケメンみたよ~それともお姉さんの腕がよかったのかな?ふふふ。これなら明日から超モテモテかもよ~?なんなら私とお付き合いしちゃう?」


カット中にいろんな話をして盛り上がっていたため、終わる頃にはだいぶフランクな感じで話せるようになっていた。


「ありがとうございます。本気にしちゃったらどうするんすか~。ははは、それじゃぁお金払いますのでレジお願いします。」


ふふふ~と笑いながらレジまで移動してお金を払い、橘さんにお礼を言ってから店を後にして駅の待ち合わせ場所まで移動する。



綾香と待ち合わせていた時間よりも、ちょっと早く着いてしまったのでスマホを見ながら時間をつぶすことにした。



すると俺の前に3人組の女子が現れて声をかけてきた。


「ねぇ~君、今一人だよね?ならさ私たちと遊ばない?」




それは今朝美容院に行く途中に俺を馬鹿にして笑っていた女たちだった。



☆あとがき☆

変わるってなったら美容院は必須ですよね。

あんま掘り下げていませんが。

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