第3話 家族は優しい
ずっと玄関にいたことに気づいた俺は綾香を追いかけてリビングへと入ることにした。
そして未だ顔の赤い綾香を心配しつつとあるお願いをする。
「なぁ綾香。明日暇か?」
「うん。特に用事はないけど。」
「じゃぁ明日ちょっと買い物に付き合ってくれ。って言ってもまず美容院行きたいからその後になるけ」「いく!!!絶対行くから!!えへへ~久々にお兄ちゃんとお出かけだね!!」
食い気味でOKしてきた綾香に一瞬驚いたが、確かにそう言われると2人で出かけるのは久しぶりだなと思った。
今まで唯奈を優先してきたからどこかに遊びに行くのは何年ぶりだろうか。
無事、明日の約束を取り付けた俺は、綾香と午後から駅で待ち合わせすることを決めて部屋へと戻ることにした。
しばらくして両親が帰ってきたので、晩飯を食べてるときに唯奈と別れたことを伝えた。
最初は驚いていたが、他のやつとキスしてるところを見てそのあと電話で振られたと一通り説明すると父さんは残念そうにしていたが、母さんはなんだかほっとした様子だった。
母さんは、ずっと唯奈のせいで俺が本来の自分を押し殺しているのではないかと心配していたようだった。
「心配かけてごめん母さん、父さんも。明日からはもうこんな格好もしないからさ。ひとまず明日美容院に行って、そのあと綾香と買い物に行くつもりなんだ。だから預けてた通帳とカード借りてもいい?」
俺は物欲がほとんどなく、毎月のお小遣いも使わない分は母さんに渡して貯めていたのだ。
幸いにも唯奈はもともとインドア派だったため、あまりお金を使うことがなかったのは今思うとありがたかったのかもしれない。
「そう…それはよかったわ。あら、私もその恰好をする必要がなくなったなら美容院に行くように言おうと思ってたの。ちょっと待ってなさい。お父さんもいいわよね?」
父さんは「あぁ」と頷くと母さんは一旦部屋を出ていき、封筒をもって戻ってきた。
「はい、これ。明日買い物に出るならこれを使いなさい。」
封筒を受け取るとその中には5万円入っていた。
「これ多すぎじゃない?…こんなにもらえないよ。」
「いいのよ。美容院代と他にも服とかいろいろと必要でしょう?残った分は今月のお小遣いにしたらいいわ。だから通帳の中のお金は将来のために使いなさい。今まで我儘言わなかったんだからこれくらいはさせてちょうだいな。」
俺は、母さんと父さんの好意をありがたく受け取ることにした。これからは絶対に心配をかけないようにしようと誓い、綾香の頭を撫でながらにかっと笑う。
「わかった、ほんとにありがとう大事に使うよ。よーし、明日はちょっと贅沢できるぞ綾香!楽しみにしとけな!」
俺はいい家族に恵まれたなぁとしみじみと感じた。
ご飯を食べ終えた俺は、部屋に戻り明日の美容院の予約をネットで済ませて、ベッドに寝転がった。
(俺は変わるんだ。もう気弱で唯奈の言うことに全て従うような僕はいらない。そんな僕を作った唯奈も、もう俺には必要ない。)
☆あとがき☆
どうも、今回はちょっと文字数少なめです。場面転換的な意味で。
前の話などでコメントいただいたことについて、近況ノートに補足としていろいろ書いてみました、興味のある方は是非ご覧ください。
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