絞首
俺はふと考える。
これ程の霊力が溢れているのならば、術式として形成する事も可能では無いのだろうか?と。
と言うか、俺が死に際で時間逆行を発現させたから、俺が術儀を所持しているのは確定しているから、これをどうにか調理すれば使い勝手の良い能力として使役する事が出来るのではないのだろうか?
「少し練習してみるか…」
術儀の開発に勤しむ事にしたのだが、基本的に術儀ってどうやって発動するのだろうか?
普通に霊力を体外に出す。この要領で行う事はまず分かるが、問題はこの霊力をどうやって術儀として発動させるか、だ。
「(難しい…存外に難しいぞこれ…いや、でも出来る、だって俺死ぬ寸前で出来たし、死ぬ寸前で出来たのなら生きる合間で出来てもなんら不思議ではないだろ)」
両手を前に突き出して何かを放出する様なイメージで霊力を放つ。
しかし出て来るのは白い靄の様な霊力のみで、其処には術式など付加されていない。
「(難っ…どうすれば出て来るんだ?…俺が死ぬ前、あの時は何があったのか…)」
こういう時は自分が術儀を発動出来た原因を脳内で探る。
あの時は確か、焦燥に駆られていた。呪血皇である老神紅姫と戦い、そして死ぬと言う葛藤に悩まされていた。恐怖や畏怖、死に対する絶望、抗うと言う希望、様々な感情が入り乱れていた。
「(待てよ、俺が発動したのは、確か喉に突き刺さったその後だ…だとすれば、能力を発動したのは自分が死ぬ寸前、死に直面した時…だったらそれを再現すれば)」
そう考えていた矢先、背後から蹴りが飛んでくる。
俺は吹き飛ばされて地面に転がった。
後ろを振り向くと、俺を生前殺した相手が目の前に居た。
老神紅姫様だった。
「何たそがれてんのよ」
相変わらずゴミを見るかの様な眼で俺の方を見ている。
嫌われているのだろうか、だとしたら何故俺を買ったのか、そんな疑問しか残らないが丁度良い所に来た。
これも良い反復練習になるだろう。
丁度、俺の能力を発揮する事が出来た材料がやって来たのだ。
俺はベルトを外して、それを彼女に向ける。
急にベルトを差し出されて、何をして欲しいのか首を傾げている老神様。
「どうかこれで首を絞めて下さい」
俺はそう懇願した。
老神様は急に頼まれて混乱していた。
「は?え、何、急に」
「首を絞めて、死ぬ寸前まで窒息させて下さい、お願いします」
無理矢理彼女にベルトを渡して首を絞める様に強要する。
これで能力が開眼する可能性が上昇する、彼女も俺をイジめたいだろうし、一石二鳥、まさにwin-winな関係だ。
ベルトを握る老神様は、じっと俺の事を見ながら近寄って来て…そして肩に手を置いた。
「ごめん、少しキツかったかしら?…幾らあたしの所有物だからと言って、やり過ぎた様ね…」
なんだか反省しているぞ、あの老神紅姫が。
「いや、首を絞めてくれるだけで良いんです、それ以外は何も」
「少し休みなさい、あんたとの関係も改善する様に努力するわ…ごめんなさい」
いや、其処まで深刻な表情をしないで下さい、俺はただ…首を絞めて欲しかっただけなのに……。
遡りから始める現代戦国物語、モブ的存在が過去に戻ってヒロインたちと成り上がるまで 三流木青二斎無一門 @itisyou
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