交換日記

第1話

交換日記なんて、人生初かも。

男ってこういうの、彼女が言いださない限り一生無縁かもね。

ああ、今は男とか女とか言うと、やっかいなことになるんだろうけど。

最近、悩んでる？日記読んで、俺にできることはないか考えたんだけど、仕事のことって同じ職種じゃないと状況もつかめないし、アドバイスが難しい…。きっと笑うんだろうな。「いつもそうだよね」って。

俺、無責任なこと言えないタイプなんだよ笑。でもさ、新しいプロジェクトのリーダーなんて、すごいよ。

沙織は人によって態度を変えたりしないから、後輩からの信頼も厚い。せっかくなら、迷わずチャレンジしてほしいな。自信がないみたいだけど、最初からあるやつなんていないんだからさ。

自信…俺に言われたくないかもな。沙織にさ早く結婚を申し込んでおけばよかった。まだ若いし、もっと経験積んでからなんて思ってたから。古いよな。

結婚してたら、遠距離で車を飛ばして会いに行くって日々じゃなかったよね。

転勤になる前に結婚申し込んで、沙織と一緒に住んで。そしたら俺も交通事故で死なない未来があったかもしれないって思ってしまうよ。

沙織もそのことで自分を責めてたよね。沙織のせいなんかじゃない。

日記に「死にたい」って毎日のように書き込んでいたけど、少しずつ変化が起きて、俺の3回忌ぐらいからかな。ちょっと前を見るようになったのは。

話がそれたね。俺の反省を生かしてアドバイスするなら、沙織はまず飛び込んでみてもいいかもしれない。新しい仕事や、好きな人のもとに。飛び込んでみてから考えてみるのも全然アリだよ。自信なんて後からついてくる。

沙織の日記を読むのも今日で最後にする。交換日記だと思ってたのは俺だけで、俺の日記は沙織は読むことができない。だって、死んでんだもん俺。

もしかしたら、今日がこの世界最後の日だから、俺の文字、読めたりしねえかな。しねえよな。

ひよってんじゃねーぞ沙織。

人生は。思ったより短いかもしれねえんだから。