22
凛の運転する軽自動車はくねくねとした道を走っていく。懐かしい景色。僕たちがどこに向かっているのかもわかっている。凛は何も言わなかったけれど。
木々に囲まれた駐車場に着く。この駐車場の下、なだらかな斜面に墓地が広がっている。墓地の向こうにはキラキラ輝く海が見えた。僕と凛は細い道を海に向かって歩いていく。すれ違った何人かの人と挨拶をかわした。
「お姉ちゃん、よろこぶと思う」凛が言う。
「いつから」
「こっちに戻ったころかな」
「教えてもらった家を探して歩いてたら女の人に呼び止められて」
「生き返ったのかと思って驚いてた」
「事故だったみたい。詳しくは聞かなかったけれど」
事故に遭ったのは、ミナヅキをみかけなくなった頃なのだろう。そのことを知らなかったことが何気に悔しかった。
「共通の友だちはいなかったから」
「何となくいつでも会えると思ってた」
僕と凛は墓の前で手を合わせた。
「花とかいいのかな」
「あとであたしが供えておくよ」
「阿紋君のこと聞かされたときはびっくりしちゃった」
「同級生で東京に行った変な名前の子がいたって」
「付き合ってたの」
「そんなわけじゃ」
多分高校の頃の男友達って僕ぐらいだったのかな。本当のところ、ミナヅキのことはよくわからないんだ。電車に乗った僕は、そんなことを考えながらほとんど見えない外の景色を見ていた。
「これからどうするの」駅のカフェで凛が言う。
「温泉。宿は予約してあるんだ」
「ねえ、もうそこは海だよね」
「そうだよ。暗いからわからないよね」
「あたしも、そのうち東京に行く」
「置いてきちゃったものがあるから。あなたを見て思い出した」
「帰り気をつけてね」
「大丈夫。この駅にはよく来てるから」凛と笑顔で別れた。
改装された駅に昔の面影は残っていなかった。これから僕は電車に乗って北に向かう。
ミナヅキからカンナヅキまで 阿紋 @amon-1968
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