【番外編】神木さんちのお兄ちゃん!8周年記念
隆ちゃんと観察日記
皆様、いつも、ありがとうございます。
神木さんちのお兄ちゃん!
8周年記念の番外編です。
少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
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「隆臣。今から、華ちゃんと蓮君がくるからね!」
それは、7年前の夏休みでの出来事。
俺と飛鳥が、中学2年生で、双子が小学3年生の時の話。
朝8時、寝起き姿で朝食をとっていると、母から、突然そんなことを言われた。
なんでも、先ほど侑斗さんから、電話がかかってきたらしく、双子の子守りをお願いできないかと言われたらしい。
「華と蓮だけ? 飛鳥は?」
「飛鳥君は、飼育当番で学校に行かなきゃならないんですって。でも、侑斗さんが急に仕事になっちゃったみたいで、飛鳥君が、学校から戻ってくるまででいいから、二人を見ててくれないかって」
「あぁ、そういえば、飼育当番だって言ってたな」
俺たちが通っている桜聖中学校には、ウサギが二匹いる。
そして、そのウサギ小屋の掃除を、夏休みの間、生徒たちが、代わる代わる掃除をすることになっていた。
そして、その当番の日に、運悪く、侑斗さんが仕事になってしまったのだろう。
(華と蓮は、まだ小3だし、二人だけで残しとくのは、心配だよな?)
特に飛鳥は、双子を溺愛しているので、心配で仕方ないことだろう。
「わかった。華と蓮は、俺が見とくよ」
「あら、ありがとう。夏休みの宿題を持たせると言ってたから、宿題が終わって、飛鳥くんが帰ってきたら、みんなでデザートでも食べましょう~」
どうやら、張り切って作るらしい。
これは、かなりこったデザートが出てきそうだと、俺は母の表情から察した。
神木家は、みんなしてデザートを食べた時の反応がいい。
だから、母も作りがいがあるのだそうだ。
──ピンポーン!
それからしばらくして、飛鳥が、華と蓮を連れてやってきた。
飛鳥は、その後すぐに、学校に向かって、華と蓮は、俺の家で、一緒に勉強をすることになった。
番外編
隆ちゃんと観察日記
***
飛鳥が学校に行った後、隆臣は、双子を連れて、客間に向かった。
中央にテーブルを置いて、エアコンのきいた涼しい部屋で、三人で宿題をする。
そして、双子は、夏休みの自由研究で、観察日記を書いていた。
蓮は、アサガオだろうか?
それっぽい絵が、観察日記の上段に描かれたいた。
だが、華の方はなんだろう?
「華、一体、なんの観察をしてるんだ?」
「私? 私はね、お兄ちゃんだよ!」
「え??」
お兄ちゃん──そういった華の目は、全く曇りのない、きらきらした瞳をしていて、隆臣は改めて、華の観察日記を見つめた。
すると、華が言ったとおり、お兄ちゃんについて書かれていた。
つまり、神木 飛鳥についての観察日記だ。
「華。観察するものは、動物とか植物じゃなくていいのか?」
ふと気になったことを、問いかける。
すると華は
「先生が、人間も動物だって言ってた!」
「いや、そうなんだが……っ」
これは、いいのだろうか?
実の兄を観察し、日記つけるのは、とても斬新だが、観察されて、それを学校に提出される飛鳥にとっては、恥ずかしい以外の何物でもない!
でも、今日は、8月25日。
もう夏休みも終盤で、ここで『人間はダメ』とか『別のものを観察しろ』だなんて言ったら、華を泣かせてしまうのではないだろうか?
(華を泣かせたら、絶対、飛鳥に殴られる……!)
ダメだ。絶対ダメだ!
あいつの妹を泣かせたら、あの悪魔が黙ってはいない。
「ちょっと、見てもいいか? その日記」
「うん、いいよー」
とりあえず、内容次第で大丈夫だろうと、隆臣は、華の観察日記を確認することにした。
表紙は、ピンク色の画用紙で『お兄ちゃんの観察日記』と書かれていた。
いかにも、3年生らしい、かわいらしい字だ。
そして、内容はというと──
✤──────────────────✤
20××年7月25日
今日から、お兄ちゃんの観察をはじめることにしました。
どうして、お兄ちゃんの観察をするかというと、友達から「華ちゃんのお兄ちゃんは、いつか、天然記念物に認定されそうだね!」と言われたからです。
天然記念物とは、とても貴重な、動物や植物のことをいうそうです。
私のお兄ちゃんは、とても貴重な動物なのでしょうか?
今日から観察して、確かめてみたいと思います。
✤────────────────────✤
(て、天然記念物!?)
なにやら、壮大な観察記録のはじまりだった。
自分の兄は、将来、天然記念物に指定されほどの生き物なのかという研究していた。
ある意味、すごい。
そして、指定されてもおかしくないくらいの美貌を持っているのは確かなので、反論すらできない。
(この後は、どうなっているんだろう?)
ちょっと、見てはいけないものを見てしまうような、そんなドキドキとした感覚をやどしつつ、隆臣は、次のページに目を向ける。
すると、次のページには、兄の生態についてかかれていた。
✤────────────────────✤
20××年7月26日
まずは、私のお兄ちゃんについて説明します。
私のお兄ちゃんは『神木あすか』といいます。
飛ぶ鳥とかいて『
年齢は13歳で、中学二年生。
身長は148センチで、体重は43キロです。
かみの毛の色は、金色です。
お日まみたいなオレンジっぽい金色で、ストロベリーブロンドともいわれています。
目の色は、青色です。
とてもすきとおっていて、テレビで見た外国の海の色と、よくにていると思いました。
髪の色も目の色も、とてもキレイなので、私は、お兄ちゃんのかみと目が、うらやましいです。
✤──────────────────✤
しかも、身長や体重まで、セキララに!
そして、その後は、更に際どい内容になってくる。
飛鳥の私生活の関する日記が、永遠と続いていたからだ。
✤──────────────────✤
20××年7月29日
お兄ちゃんの朝は、とても早いです。
お兄ちゃんは、朝起きると、顔を洗ったあと、お父さんと一緒に、朝ごはんの準備をします。
お兄ちゃんのご飯と、とても美味しくて、私は、お兄ちゃんがつくったオムライスと、お好み焼きが大好きです。
ハンバーグも好きですが、ときどきこげた味がします。
それがなければ、ハンバーグが2位です。
✤────────────────────✤
20××年8月2日
お兄ちゃんは、最近、髪を伸ばし始めました。
私が『お姉ちゃんがいたら、髪の毛をいじって遊べたのに』と言ったからかもしれません。
でも、髪を伸ばしたお兄ちゃんは、絶対にきれいだとおもうので、これで天然記念物への道が、さらに近づくかもしれません。
それに、いつかお兄ちゃんのかみで、ポニーテールや三つあみができるのが楽しみです。
明日は、兄ちゃんと買い物に行くので、お出かけ中のお兄ちゃんも観察してみたいと思います。
✤────────────────────✤
20××年8月3日
今日は、お兄ちゃんと買い物に行きました。
お兄ちゃんは、商店がいのアイドルです。
おじさんにもおばさんにも、犬にも猫にも、かわいがられて、なつかれています。
お兄ちゃんが歩けば、猫がすりよってきて、犬はなでてほしいとお腹をみせてきます。
おじさんたちは、お兄ちゃんが笑うと、おかしをいっぱいくれます。
私達にもくれます。おかしがほしい時は、お兄ちゃんと一緒に買い物に行けば、かならずもらえるので、とてもラッキーです。
✤────────────────────✤
20××年8月8日
お兄ちゃんは、中学生になってから一人でお風呂に入っています。
昔は、一緒に入っていたのに、今はダメって言われます。
でも、今日は観察日記をつけたかったので『一緒に入りたい』とお願いしてみました。
でも、ダメでした。
弟と一緒に、だだをこねてみましたが、やっぱりダメでした。
華たちのお願いなら、お兄ちゃんはなんでも聞いてくれるのに、とても不思議です。
残念ながら、お風呂の中のお兄ちゃんは、観察できませんでした。また、一週間後に、挑せんしてみます。
✤─────────────────✤
「……くっ!」
おもわず、吹き出しそうになって、隆臣は必死にこらえた。
人の自由研究を見て、笑ってはいけない!!
だが、これは、どう見ても、めちゃくちゃ恥ずかしい内容だった!
何というか、神木家の、いや、飛鳥の日常が、こと細かに観察&描写されていて、隆臣は真っ赤になっていた。
(読めば読むほど、俺が見たことがない飛鳥が、たくさんいる……!)
学校の凛とした姿ではない、普段の飛鳥だ。
きっと、素の状態の飛鳥で、ちょっと抜けた部分があるのですら、可愛らしい。
だが、飛鳥は、これを知っているのだろうか?
いや、知らないから、ここまで観察を続けてこれたのだろう!
蓮は、アサガオという、可愛らしくシンプルな観察日記とつけているのに、華の方はとんでもなかった!
「なぁ、華。これ、飛鳥は知ってるのか?」
「うんん、知らないよ」
「そ、そうか」
「ねぇ、華」
すると今度は、蓮が口を挟んできた。
「お前、お兄ちゃんのの寝言のことは書いたのか?」
「あ、そうだった! せっかく夜中に二人で忍び込んだのに! でも、もう最後のまとめまで書いちゃった!」
「なにやってんだよ」
しかも蓮まで、観察日記に協力的だった!
というか、寝言!?
あいつ、どんな寝言を言うの!?
めちゃくちゃ気になりつつも、これ以上、踏み込んでいいのかと、隆臣は悩む。
飛鳥からしたら、クラスメイトに、自分の私生活を知られたくはないだろう。
(これは、もう見なかったことにした方がいいのか……?)
ここまで、観察日記を続けてきて、今さら別のことを研究しろなんて、華には言えない。
だが、このままでは飛鳥のあれやこれやが、白日の下にさらされてしまう!
(い、いったい、どうすれば……っ)
考えつつも、隆臣は、最後まで観察日記に目を通した。
家の中の飛鳥は、こんな感じなんだな……と、パラパラとめくりつつ、最後のまとめまで読み終わる。
すると、その瞬間、飛鳥が帰ってきた。
「あら、飛鳥君! お疲れ様ー」
「すみません、美里さん。今日は、ありがとうございました!」
玄関先から、美里と飛鳥との声が聞こえた。
ウサギ小屋の掃除を終えて、戻ってきたのだろう。
そして、ちょうど、蓮と華も宿題を終えたらしく、その後は、みんなでデザートを食べることになった。
***
「隆ちゃん、今日はありがとね」
それから、デザートを食べ、お昼をご馳走になり、夕方までたっぷり遊んだ神木兄妹弟は、やっと岐路に着いた。
玄関先で、飛鳥が綺麗に笑ってお礼をいえば、まさに天然記念物級の可愛さだなと隆臣は、しみじみ思った。
しかし隆臣は、華の観察日記のことを、ずっと飛鳥に伝えられずにいた。
正直、見なかったことにした方がいい気がした。
だけど、ちょっとだけ、飛鳥に読んでほしいと思った。
華が書いた、観察日記の内容を──…
「あのさ、飛鳥。ちょっと耳貸して?」
「ん? 何?」
双子に聞こえないように、隆臣は飛鳥に近づき、こっそり話しかける。
「華の自由研究、ちゃんと確認して、添削しといた方がいいぞ」
「添削? そんなひどい内容だったの? 蓮と一緒に、アサガオの観察してるって言ってたけど」
アサガオ!?
なるほど!華はアサガオの研究をしていると嘘をついついたらしい!
それじゃぁ、気づかないはずだ!
「まぁ、見てみればわかる。でも、怒るなよ。それと、公表したくない部分は上手く書きなおさせて、あとは覚悟は決めろ!」
「覚悟って、何の覚悟だよ。怖いんだけど?」
真剣な隆臣の顔に、飛鳥が困惑する。
いったい、なんの話をしているのか?
だが、その後、神木家は橘家から去って行って、にぎやかで愉快な一日は、終わりをつげた。
ちなみに、その後、あの観察日記がどうなったのか、隆臣は知らずにいる。
飛鳥が、嫌がって提出されなかったもしれないし、見事に恥をさらしたのかもしれない。
だけど、華が書いた観察日記は、兄である飛鳥の事が、たくさん記してあった。
大好きなお兄ちゃんのことが──
特に8月15日と、最後のまとめの部分は、飛鳥にも読んでほしいと思った。
(あいつ、あれ読んだら、どんな顔するんだろう?)
赤くなるのだろうか?
怒るのだろうか?
それとも、喜ぶ??
できるなら、その反応まで、観察日記で読みたかったな……と、隆臣は夕焼け空をみつながら、しみじみと思ったのだった。
*
*
*
お兄ちゃんの観察日記
✤───────────────────✤
20××年8月15日
今日は、お盆です。お盆になると、お母さんがお空から返ってくるそうです。
見えないけど、今日は家族5人一緒です。
お兄ちゃんは、毎日、お母さんの写真に手を合わせます。
私たちも一緒に手をあわせます。
お兄ちゃんは、お母さんが大好きです。
だぶん、家族の中で、いちばんお母さんのことが好きです。
お兄ちゃんは、たくさんお母さんの話をしてくれて、お母さんが、お兄ちゃんと同じくらい明るくて優しかったのを教えてくれます。
でも、時々、お兄ちゃんは、お母さんの話をしながら、さみしそうな顔をします。
お母さん。見えないし話せないけど、もし帰ってきているなら、お兄ちゃんを抱きしめてあげてほしいです。
✤──────────────────✤
20××年8月25日
《観察のまとめ》
7月25日から、一か月、お兄ちゃんを観察しました。
お兄ちゃんは、私の友達がいうとおり、天然記念物に認定されるくらいキレイな人だとおもいます。
これから、もっとキレイになって、特別にかっこいい人になっていくと思います。
でも、見た目はきれいだけど、中身は、普通のお兄ちゃんです。
ハンバーグをこがしちゃうこともあるし、怒るとめちゃくちゃ怖いし、完ぺきそうに見えて、ちょっとぬけてるところがある、普通のお兄ちゃんです。
だから、お兄ちゃんは、天然記念物にはないとおもいます。
むしろ、なってほしくありません。
これからも、私たちだけの特別なお兄ちゃんでいてほしいです。
これにて、お兄ちゃんの観察日記を終わりたいと思います。
桜聖第一小学校
3年2組 神木 はな。
〈おわり〉
********************
閲覧、ありがとうございました。
今回は、お兄ちゃんはちょっとしかでませんでしたが、たまにはこんな番外編もいいかな?と(笑)
また、季節感バグっててもうしわけないですが、本編も今、夏休み中なので、本編の季節に合わせてます。
ちょっとでも、ほっこりして頂けたら嬉しいです。
それでは、神木さんちのお兄ちゃん!
祝☆8周年!
ここまでお付き合くださり、ありがとうございます。
引き続き、がんばりますので、本編の方も、よろしくお願いします♡
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