母の日・SS

母の日と猫


 こんばんは。


 本日、5月12日は、母の日で、同時に、ゆりの誕生日でもあるので、神木さんちのSSをお届けします。


 落書きレベルですが、ちょっとでも、楽しんで頂けたら嬉しいです!




 ♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



 それは、飛鳥が、まだ6歳の頃の話。


 その頃の神木家は、今暮らしている桜聖市ではなく、星ケ峯という穏やかな町で5人で暮らしていた。


 そして、小学1年生になり、星ケ峯小学校に入学した飛鳥は、相も変わらず目立っていた。


 陶器のようにきめ細やかな肌と、キラキラと輝く金色の髪。


 まぁ、簡単にいうなら、宝石のように美しい子だ。


 そして、そんな美しい子にも、母親がいた。


 父親が、再婚してできた新しい母の名は、神木 ゆり。


 まだ20歳と若いゆりは、一年前に双子の姉弟を出産し、この若さで、既に三児の母だ。


 そして、その母のことで、飛鳥は今、真剣に悩んでいた!


「ねぇ、お父さん。母の日のプレゼント、何がいいと思う?」


 父の侑斗と一緒に入浴する中、飛鳥は、真面目な顔で問いかけた。


 すると、風呂にゆったりと浸かり、腑抜けた顔をする侑斗は、その顔を更に緩めながら


(相変わらず飛鳥は、ゆりのことが、大好きだぁ~)


 ここまで真剣に母の日のことを考えているとは!

 侑斗としては、嬉しいことでもあった。


 ゆりは飛鳥にとっては、血の繋がらない母だが、飛鳥は、とても懐いていた。


 まぁ、実のに懐いているのは、ちょっと考えものでもあるが……


「そうだなー。似顔絵とか、描いてあげればいいんじゃないか?」

 

 すると、侑斗が、ニコニコ笑いながら、飛鳥に言葉を返した。


 似顔絵は、母の日の定番だ!

 特に飛鳥くらいの子供たちが、よくするプレゼント。


 だが、飛鳥は──


「嫌だよ。そんな子供っぽいの!」


「いや、お前、子供だろーが!? 2ヶ月前まで、幼稚園通ってただろ!?」


 たかだか、小学一年生になったくらいで、もう子供は卒業ですか!?


 いきなり、大人びたことを言う飛鳥に、侑斗は盛大に突っ込んだ。


「あのなぁ、飛鳥! お前は、まだ子供だ! あと、似顔絵は、母の日の定番だろ!」


「でも、似顔絵は昨年あげたし。だから、今年は、もっと、ちゃんとしたのがいい」

(ちゃんとした?)


 いやいや、似顔絵も、ちゃんとしたプレゼントでは?


 俺、飛鳥が描いてくれた絵、全部とってるよ!


 父の日にくれた手紙なんて、免許証の中にいれて、肌身離さず持ってるよ?!


 それなのき、ちゃんとしてないだと!?


(いやいや、落ち着け。これも、ひとつの成長だよな?)


 まさか、似顔絵を、子供っぽいといわれる日が、こんなに早くくるとは?

 

 ちょっと寂しくはあるが、息子がそう言うなら、ちゃんとしたプレゼントを考えてやるのが、父の役目というもの!!


「わかった。じゃぁ、お花とか、どうだ?」


「お花?」


「あぁ、母の日なら、カーネーションとか!」


「うーん、お母さんの好きなお花は、蓮華草でしょ? 花を贈るなら、蓮華草がいい」


「え?」


 どうやら、ゆりの好きな花をプレゼントしたいらしい。だが、侑斗は


(蓮華草って、花屋で売ってたっけ?)


 いや、花屋では、見たことないぞ!?


 というか、蓮華草って、田んぼとかで咲いてる花じゃなかった!?


「えーと……蓮華草がいいのか?」


「うん! お花屋さんにあるかな?」


「いやー。花屋では、見た事ないかな」


「え? じゃぁ、どこにあるの?」


「多分、田んぼ」


「田んぼ? って、どこにあるの?」


「この辺には、ないぞ」


「えー!!」


 瞬間、飛鳥が、残念そうな顔をする。


 だが、ないものはないのだ!!

 

 そして、田んぼがないなら、蓮華草を手に入れることは、ほぼほぼ不可能!!


「諦めろ。田舎じゃなきゃ、田んぼはない」


「えー! じゃぁ、何をあげればいいの?」


「うーん、別の花にするとか? あとは、ゆりの好きなものをプレゼントするとかかな?」


「好きな物って?」


「うーん、そうだなぁ、ゆりの好きな物は……あ!」


 すると、侑斗は、ふと思い出したらしい。


「あるぞ、飛鳥! ゆりが大好きで、俺たちでも簡単に手に入れられそうなものが──」



 ♡


 ♡


 ♡



「お母さん、いつもありがとう!」


 そして、母の日──ゆりの前にたった飛鳥は、元気よくプレゼントを差し出していた。


 可愛いリボンが着いた、赤い袋は、いかにも母の日らしいラッピングだ。


 そして、そのプレゼントを、ゆりは、驚いた表情で受け取っていた。


「うそ! プレゼントなんて用意してたの!」


「うん」


「もう、ありがとう、飛鳥! 感激だよ~」


 キュッと我が子を抱き締め、ゆりが、大袈裟なくらい喜ぶ。


 だが、可愛い息子が、わざわざプレゼントを用意してくれたのだ!


 これで、喜ばないわけがない!!


「開けてもいい?」

「うん」


 そして、中身は、なんだろうか?と、ゆりは、胸を躍らせながら、ラッピングのリボンを解いた。


 すると、その中には、チョコレートが入っていた。

 箱に入った可愛らしいチョコレートが


「可愛い。これ、飛鳥が選んだの?」


「うん。でも、お金は、お父さんが出してくれた」


「そうなんだ」


 あとで、侑斗さんにもお礼を言おう。


 そんなことを考えながら、ゆりはプレゼントされたチョコを、一つ手に取った。


 キュートな猫の形をしたチョコだ。


 ミルクチョコレートだからか、なんだか黒猫っぽく見える。


「可愛い~」


「お母さん、猫が好きなんでしょ?」


「うん、侑斗さんから聞いたの?」


「うん。あと、猫とチョコレートが好きだって!」


「そうだよー。私のお父さんとお母さんも、チョコが好きでね。だから私も、自然とチョコが大好きになっちゃった! あと、私の前世って、なんとなく猫だった気がするんだよね~」


「前世?」


「うん。生まれ変わる前? 多分、黒猫かな?」


「そんなのわかるの?」


「あはは、わかんないよー。なんとなくの話!」


 おちゃめに冗談を言うゆりは、その後、飛鳥から貰ったチョコを口に含んだ。


 すると、その瞬間、とろけるような甘さが口の中に広がった。


 それは、とても優しい味だった。


 優しくて、幸せな味。


 両親と一緒に、食べていた頃のような──



「ありがとう、飛鳥。とっても美味しい」



 すると、ゆりは、また飛鳥を抱きしめた。



 何度もお礼を言って、幸せそうに笑う。




 そして、その時の姿は




 今もずっと




 胸の奥に、焼きついていた。




 ♡


 ♡


 ♡



「「ただいま~!」」


 それから、数年が経ち、15年程の時が流れた頃、飛鳥は大学3年生になっていた。


 そして、それは、とある日曜日の午後のこと。

 

 出かけていた華と蓮が、賑やかな声をあげながら、帰宅したかと思えば

 

「これ、お兄ちゃんにあげる!」


「?」


 そう言って、華に差し出されたのは、チョコレートのようだった。


「なにこれ?」

 

「さっき、商店街で母の日の催し物しててね! 可愛いチョコレート見つけたから、おもわず買ってきちゃった♡」


 華が、ニコニコ笑いながら差し出してきたのは、猫の形をしたチョコだった。


 色味のせいか、なんだか黒猫みたいな?

 そして、そのチョコを、強引に兄に手渡した双子は

 

「頑張ってる兄貴への、母の日だよ」


「いつも、ありがとう!」


「いや、俺は、お兄ちゃんであって、お前たちのママではないけど?」


「えー、ママみたいなもんだよ!」


「そうだよ。口うるさいところとか、完全にママだって」


「口うるさいとか言うな。というか、あげる相手間違ってるだろ。お前たちの母親は、あっち!」


 そう言って、リビングの隅をみつめれば、卓上型の仏壇の前には、双子の母であるゆりの写真があった。


 すると、華と蓮は──


「わかってますよー。ちゃんとお母さんの分も買ってきたし」


「まぁ、最終的に、俺たちが食べるんだけどね」


 そう言って、蓮が用意した、もう一つのチョコを、ゆりの前にお供えすると、双子は、揃って手を合わせた。


 いつものように、母のことを思いながら、目を閉じる。

 すると、しばらくして──


「じゃぁ、私たち着替えてくるね~!」


 と、嵐のようにやってきた双子は、足早にリビングから出ていって、飛鳥は、その後、ゆっくりと、母の前に歩み寄った。


「相変わらず、賑やかだね。神木家うちは」


 あきれたように、飛鳥が、ゆりに話しかける。

 そして、チョコレートを手にした飛鳥は

 

「母さん……俺は、ちゃんと母さんの代わりができてるかな?」


 ママみたい──その言葉を否定しつつも、不思議と嬉しいと感じてしまったのは『ゆりさんのようになれたら?』そんな想いが根底にあるからなのかもしれない。


 あの頃、ゆりさんが、心から俺を愛してくれたように


 俺も、あの子たちに


 愛を与えられているだろうか?


 双子から渡されたチョコみつめながら、飛鳥は嬉しそうに微笑む。


 だが──


「でも、ごめん。まさか、こうなるとは思わなかった」


 華と蓮が供えたチョコの横に、飛鳥は、全く同じチョコを、もう一つ置いた。


 それは、飛鳥が、用意した母へのチョコだった。

 商店街で、事前に買っていたもの。

 

 だが、まさか兄妹弟で、同じチョコを買ってくるなんて思ってなかった。


「なんでこうなるかな? 同じもので、ごめんね。でも、母さんなら、喜んでくれるかな? 猫もチョコも大好きだし」


 あの温くて、優しい母なら、きっと何をプレゼントしても喜んでくれるだろう。


 むしろ、この光景を見て、笑っているかもしれない。



「いつもありがとう、母さん」



 もう傍にはいないけど



 それでも、母の日には



 毎回、感謝を伝えたいと思う。




 今の神木家があるのは




 この幸せがあるのは




 母さんが、いてくれたおかげだから──


 

 

「天国で、たくさんチョコ食べてね♡」


 

 二つ並んだチョコを目にし、飛鳥がにっこりと微笑むと、写真の中のゆりも、飛鳥を見つめながら、幸せそうに笑った気がした。


 


 END.



♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡



最後まで閲覧頂き、ありがとうございました!


今日の夕方くらいに、ゆりの誕生日だったことを思い出して、勢いで書いたSSです。


できたてホヤホヤです(笑)


ただ、簡単なSSと言っていたのに、気づいたら、4000文字近くなりまして、あまり簡単なものではなくなってしまった(笑)


とはいえ、大したオチはなく、落書きレベルな番外編です。


お見苦しい作品で、申し訳ありませんが、ちょっとでも楽しんで頂けたら嬉しいです。


それでは、母の日➕誕生日記念のSSでした。

ゆりちゃん、おめでとう~🌷


それでは、また。

(本編の続きは、明日、更新できると思います)

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