③ 恐怖の書けない病


あらすじが決まって、いざ執筆開始!


……と行きたいところでしたが、実はこの時点でちょっと、嫌な予感がしてました。


なぜなら、私が今まで書いてきた作品と、今回考えた作品は、何から何まで真逆だったんです。


私は、これまで『男性主人公で、三人称メインの群像劇』ばかり書いてきました。


それなのに、今回は『女の子主人公で、一人称メインの児童向け』を書かなきゃいけない。


ね、真逆なんです。

だから、この時点で、既に弱気モード。


船に乗る前に、船長が船酔いしてるんですよ。

もう、頼りないったら、ありゃしない!


でも、今回は、とにかく『子供たちに楽しんでもらいたい』これが、私の一番の目標でした。


だから、終盤に入るまでは、ずっと恋のワクワクやドキドキを、提供出来るような構成にしていたんです、実は。難しいテーマは、最後にちょろっと添えるくらいでいいかな?と思って。


そして、小学生女子を楽しませたいなら、女子の一人称は、欠かせない要素。


なら、必ずマスターしないといけません。


それに、私自身のステップアップにも繋がる気がしました。書いたことがないからと食わず嫌いしていたら、ずっと書けないままだし。


恋愛ものも、執事を書いたおかげで、前よりマシになってきた気がするし。


そんなわけで、子供たちを楽しませたいという気持ちと、自分のステップアップも兼ねて、前向きに執筆開始(時間もないしね←本音)


で、逃げ防止のために、早々に、カクヨムに公開しました(これ大事。誰かに監視されないと、絶対逃げる)


で、公開したら、一気にフォローや星を頂きました。


めちゃくちゃ嬉しかったです。もともと、児童向けは、カクヨムでは読まれないんです。だから、PVがついて、弱気な気持ちも大分回復しました。


よし、読んでくださる方のためにも、絶対に完結させよう!そんなふうに、自分を奮い立たせる!


でも、やはり、なれないのもあり、児童文庫特有の文体には、かなり悩まされました。


これは、勉強したが故に、悩んだのかもしれない。

しらなければ、こんなに苦しまなかったと思う。


まず、児童文庫は、日頃、本を読まない子達に向けた入門書のようなものだと、私は考えています。


だから、あまり長い文章は、読むのがつかれちゃうかもと思い、一文が、長くならないように注意しました(できてない部分もあるよ)


あとは、明るくポップな雰囲気になるよう、軽めの文体を意識したり。


でも、アリサのあのハイテンションな一人称は、私にはかなり難しくて、序盤から苦戦を強いられました。


そしてね、だんだん疲れてきたんです。

文体を維持するのが苦しくなってきた。


で。12話を書いた直後、突然、筆が止まりました。


私は、スランプに陥っても、書けなくなることは一切ない作者でした。


書いても気に入らず、書き直すことは、よくありますが、も書けなくなる、まさに筆が止まることは、これまで一度もなかった。


びっくりしました。

もう、スマホをタップすらできない。


指が固まって、完全に身体が『もう児童文庫の文体は書きたくない』と言ってる。


焦りました。その頃8月上旬。


締切が迫ってるのに、四日ほど一文字も書けない日が続きました。


もう、怖くて仕方ありませんでした。

このまま書けなくなるんじゃないかと。


魔女宅のキキが、飛べなくなった時の気持ちが、今やっと分かった。めっちゃ辛い!


でも、飛べないけど、今の私は、飛ぶしかないわけです。もう、背中に爆弾しょって、その爆風使ってでも、飛ぶしかないわけです。


だって、書かないと、締切に間に合わなくなるから!

その後は、死にものぐるいで書いていました。


自分の文体をねじ曲げて書くのが、こんなに苦しいとは思わなかった。でも、それでも必死に、児童文庫の文体を維持しようと頑張りました。


だけど、書きながら思うわけです。


『私、こんなに苦しい世界に行くために、今、頑張ってるの?』と。


入賞するために頑張ってるはずなのに、入賞したら、またこの苦しみを味わうことになる。


今の私は、苦しむために小説書いてる。


どんだけ、ドMなんだよ!!って!


……もうね。よく分からん精神世界に迷い込んでいた気がします。ドMをきわめないと、児童文庫の世界ではややっていけない気がした。


もはや、文体だけじゃなくて、気持ちも迷子。


でも、子供たちを楽しませたいって気持ちは、まだしっかり残っていて、だから、苦しくても投げ出さずに、なんとか書けていました。


しかし、こうも思うわけです。


『こんなに苦しんで書いてる作者が、子供たちを楽しませることなんてできるのか?』と。


色々、感情は、ぐちゃぐちゃでした。


辛いとか、苦しいとか。

書きたいとか、楽しませたいとか。


でも、そんなヤバい精神状態でも、締切は容赦なく迫るわけです。


おかげで、終盤は、文体ぐちゃぐちゃだし、ページ数カツカツだし、いろいろグダグダのダメダメで、ボロ雑巾みたいになってました(笑)


それでもね。優しい読者さまから、温かい応援メッセージがとどくわけです。


頑張れ!と。

挫けそうな私を、何度も励ましてくださる!!


もう、泣きましたね。

苦しかったけど、得るものもいっぱいありました。


おかげで、ラフラフになりながらも、何とか未来のシーンまでかけて、ラスト一話になりました。


やった、あと一話だ!

完結出来そう!!


……と思ったら、また、ここで筆がとまったんです。




次回は『終わらない最終話』

書いても書いても、最終話が終わらなかった話…

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