第3話

「さあ、どっちに行こうかな?」

 キャロリーンは元気良く歩いていたが、2つに分かれた道でハタと止まり悩んでいた。

 道の入口ににはいずれも看板が立ってあり、どちらを選んでも楽には町に出れそうにない。


 右には【猛獣の森】と書いてあるし。


 左には【絶壁の山】と書いてある。


 キャロリーンは運試しにコインを投げた。クルクルと回転しながら落ちて来たコインが指し示した場所は【猛獣の森】だった。

『猛獣と言っても、大した動物じゃないわよ……きっと」

 自分を励ましてキャロリーンは猛獣の森へと足を踏み入れる。


 中に入って直ぐに不気味な鳴き声が聴こえ、何かを粗齣する様なバリバリと云う音が……

 キャロリーンはどんな猛獣が襲ってきても言いように、いつも持ち歩いている羊を追うための棒を握りしめ目を閉じて呪文を唱えだした。


《イフ…セフト…ナラマカ…ヒャンラル…タッソート》

 最初はそよ風程度だった風が段々と、つむじ風になり遂には、目も開けられない程の旋風になる。

 キャロリーンは、その中心に居てグングンと風に乗り上昇して行った。

 大きなブッペの丈夫な枝の上に足を着けると、キャロリーンは呪文を唱えるのを止めた。

 徐々に風は威力を弱め、遂には収まるとキャロリーンは閉じた両目を開け下の様子を探る。


 すると、一人の剣士が傷ついた体で、猛獣と睨み合いジリジリと間合いを取って、今にも跳び掛ろうとしていた。

『1つ目サイホーンだわ! 私が風を起こしたせいで、あの人怪我を……』


《セルテグ…レヒャ…メナラーサ…ケステナーム!》

 突然風は一筋の矢の様になり、1つ目サイホーンに向かい飛んで行き、形のない矢は猛獣に深ぶかと刺さった。

 グオーンとひと声哭いて1つ目サイホーンは、周りの細い木を薙ぎ倒して倒れた。


 風に乗りゆっくり下に降りたキャロリーンは、ホッとしてガクッと膝を付いた剣士に駆け寄り声を掛けた。

「ごめんなさい! 私のせいで怪我をさせてしまって」


 苦しげなうめき声を上げていた剣士は、若い娘の声を聞いた時、遂に自分の命運もこれまでかと思った。天からの迎えだと……

 だから、娘が返事をしないで無視をしたと怒り出した時は心底ホッとした。

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