第2話
少女は村に着き、中でも一番立派なテントにズカズカと入って行った。中には年寄りが三人と少女の両親が真剣な顔で話している。
「ですから私はフィンの兄のフックが良いと、申しているじゃありませんの」
母が言えば長老の一人が渋い顔で言い出す。
「あやつは駄目じゃ、まだまだ羊の世話も満足に出来ん! まだ、あやつの弟のファンの方がなんぼかましじゃわい」
隣に追い付いたファンが真っ赤な顔で耳打ちする。
「ねえ、長老達もああ言ってるし……」
少女は煩い蝿を追い払うかの様に手を振り、長老達と両親に声を掛けた。
「私は自分の相手ぐらい決められます! 余計なお世話よ!」
スパッと言い放ち、来た時と同じ様に出て行った。
「まあ、何て事言うんでしょう! ねえ、あなた」
少女の父は、出来るなら彼女の好きな様にさせてあげたかったので妻の云う事に賛成はしなかった。
「兎に角、早く決めねばなるまいな……」
心の中では娘の幸せを願いながら。
「なあ、荷物なんかまとめて何処に行く積もりなんだ?」
ファンは聞くが、キャロリーンは勢いよく身の回りの物を大きなバッグに詰めていく。
「さあ、準備は出来た! いざ、出発よ!」
ファンは何とか思い止まって貰おうとキャロリーンの周りをぐるぐる回るが、当のキャロリーンは鼠がその辺を回ってる程にしか思っていない。
そして村外れ迄来ると、ファンに見送りは良いから。と言って足取りも軽やかに歩き始めた。
ファンはキャロリーンを止める事など出来ないと、ようやく悟りキャロリーンの両親の元へ。
「何ですって? キャロリーンが逃げ出したと云うの?」
両親は慌てて長老達の助言を聞きに行き、話し合いの末、ファンに連れ戻して来る様に命じた。
「兎に角、わしら一族の中でも力の強いあやつを一刻も早く、連れ戻さなくてはならん!」
長老の一人が命じれば、もう一人が、ファンに耳打ちした。
「連れて帰ればファンよ……あの娘を嫁に貰っても良いぞ」
その言葉にファンは決意をした。何がなんでもキャロリーンを連れて帰る事を。
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