FREEDOM

水月美都(Mizuki_mito)

第1話

 何処までも続く草原に、一人の少女が立っている。その髪は草原の民らしく淡い緑色で、瞳は夕焼けの黄色みがかった茜色だ。

 その日は少女の十四歳の誕生日で、草原の民である彼女は一生の伴侶を決めなければならなかった。

 実際の処、草原の民の女達は自分で決める事など滅多になく、両親や村の長老達が相談して決めるのが通例だったが、でも少女は人に決められた縁談も将来自分が歩む道も、強制されるなど真っ平ゴメンだった。

 だから誕生日であるこの日を、私が旅立つ日と決め、秘かに準備していたのだった。


「キャロリーン、何してる? こんな所で」

 声を掛けて来た少年も、少女と同じ髪の色だったが瞳は琥珀色だ。ファンというこの幼馴染みが幾ら呼んでも、少女は身じろぎもせず茜色に染まる空をただ、見つめているだけだった。


「長老様達が待ってるよ」

「分かってるわ! さっきから、ちゃんと聴こえてるわよ」

 如何にも気が強そうな瞳は、ジッと少年を睨み、ソッポを向いたと思ったら村落に向かってズンズン歩いて行く。

「あっ、 キャロリーン待って!」

 慌てて後を付いて行く少年は、少女に話し掛ける。

「キャロリーン。今日は君の誕生日だね。もしも……」

「もしもって? 何が、もしもなのよ。アンタに私の気持ちなんか一生、分からないでしょうよ!」

『そうよ、自分の意思で相手を選べるアンタなんかに』

 少女は唇をグッと引き結び、力を入れて噛み締める。途端に口の中に鉄臭い味が満ちる。

『そうよ、こんな時代錯誤の頭の堅い村から、出て行くんだ!』

 キャロリーンは強い決意を胸に刻み、長老達と対峙するべく後ろを振り返らずに歩いて行く。自分の運命を変えるべく――







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