第16話目 お手数ですが再発行お願いいたします
真っ白の世界に制服姿のミチルが立っていた。振り向いても歩いても、真っ白。前も後ろも、すべて、すべてが真っ白だ。ここには建物はおろか木の一本も見えない。真っ白い世界だけ。
「もしかして死んじゃった?」
『死にました』
「え゛!」
『こっちが「え」ですよ!
あなたは この世界で獣人医になるはずだったんですよ!それでこの世界の医学に貢献する運命だったんです!奴隷売買および薬の密輸組織の解体、インフラ設備まで貢献したでしょう?あんなことがもっと起こる予定だったんです!
少なくともあの獣人の世界の科学と文明が進化するはずだったんです!
なのになに勝手に死んでくれてるんですか!』
「あ、はい……」
すごい。同情はおろか慰めてもくれない。
『まぁ、前回のような自暴自棄な人助けよりは百倍は成長したといえますが』
「そぉお?♡」
『それでも死んだんですよ。バカですか』
「じゃあなに!?グリンを見捨てるべきだったの!?これから医学試験を受ける人間に獣人殺しになれって!?」
『そうです』
「なぁ!?」
『自利他利、という言葉をご存じない?自分の命を最優先できる者が他人を救えるという言葉があなたのいた世界にはあったんですが。「いただきます」という言葉もご存じない?』
「でもそれじゃああたし試験どころじゃなかったかもしれない!もしかしたら一生のトラウマになってた!!」
『そうです。それこそあなたにとっての試練だったのですからね』
「はぁ!?」
『試験と同時に恐怖と闘い、国家資格を取った後も自分を責めたでしょう。ヒトはそれでも生きなければなりません。それこそあなたにとって必要な経験だったんですよ。それなのに試験前に死ぬとか!自分の命をなんだと思ってるんです』
見えないため息が聞こえる。神様も大変だ(デジャブ)。
『ま、死んだというのは嘘ですよ。正確に言えば仮死状態なんです』
「え」
『あなたはあの国に必要な存在として呼ばれました。ですから今は眠ってもらっています。ほんの一ヶ月程度で済むことを感謝していただきたいものですね』
「えぇ!?あたし!生きられるの!?またベルクに会えるの!???」
『今回はあなたが死ぬと困る事案の方が多いですから。あなた自身よりもあなたが関わる人物が非常に重要なわけです。よってあなたに死なれたら困ると言っているんです』
「あたしの命が尊く素晴らしいから生きなさい、とかそーゆー優しい言葉が降ってこないんですけど?」
『当たり前ですよ。こっちは怒ってるんですから。自分の命を大切にするのは己自身です。クレクレ星人が他人への施しなど求めないでください。っとに』
「う゛」
『シロはあなたに会うために、この国の王子として生まれました。彼はまだ私との契約を果たせていません。その運命をあなたに変えられたら困るんですよ。ったく』
「え!?は!?なにそれ!?ちょっと!!そこんとこくわしkーーーひゃああああああああ!!」
ぐるん!ぐるん!
足元から世界が回りだす!!二度目だけど、こんなの慣れっこない!気持ち悪い!!
ビックリハウスに乗っているような、ボウルの中で泡立て器で攪拌されているような、さながらハンドブレンダーで作られるスムージーって、あああああ!!!
ぐるんぐるんぐるんぐるぐるん!!!!!!
「だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!」
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