緩・閑話 【茶・茶・茶!】
「おなクラおめー!」
王宮の庭の東屋ではテーブルの上にたっぷりのお菓子が用意され、ミチルとマロンがプチピクニックもといお茶会もとい進級しても同じクラス★おめでとう会★を開催していた。新学期は来週からだが、春休み中に新学年のクラス発表の封書が届く。今日はミチルとマロンが同時に開封し、同じクラスだった奇跡にお祝いをしてたってワケ。ま、お喋りする口実があることは良いことだ♪
マロンの持ってきてくれた甘いケーキ、前もって用意していたしょっぱめのサンドウィッチの永久運動が止まらない。男子禁制の食べまくり大会は女子だけの特権で、親友とも同じクラスでいられる幸せがさらにケーキを甘くさせる♪
「やぁマロン」
「ベルクさま!」
東屋でのお茶会にベルクが一口サイズのケーキの盛り合わせをもってやってきた。同席するつもりはないが、ミチルの送迎にほぼ一年間毎日マロンと顔を合わせてきたのだ。恋人面で「今年も頼むよ」なんて微笑んでみせる。
「ベルクさまは今年で最高学年です。いろいろと変化の年だと思います。やはりミチルさまの送迎はおやめに――?」
「やめると思う?僕が?」
堂々の王子様スマイルで返事をすれば、マロンが「きゃあ♡」なんて胸の前で腕を組み喜んでいる。
「今年もベルクさまの愛でが拝見できますのね♡♡♡」
「ねぇ、マロン、楽しんでない?てかマロンもベルクが好きならあたしは――」
「なにをおっしゃるのです!私が好きなのはミチルさま!そのミチルさまがベルクさまに恋しているゆえにベルクさまを推すわけです!これはいうなればカプ推しであり、ベルクさま単体では真の魅力は輝かないと言っても過言ではなく――!」
(あぁ、これ、知ってる!)
「僕の目の届かないことも多いと思うからさ?その時はマロンが護ってくれる?」
「もちろんです!外様はおとといきやがれですわ!」
今にもガシイイイン!と音が聞こえそうな握手。穏やかな太陽がギラギラと熱い。どうしてだろう。マロンは背が高くて美人で頭も良くて、ミチルよりもずっとベルクの隣に立つのににふさわしいのに。この二人から男女の匂いがしない……。
「ミチルさま、こちらフォルさまからです」
「ミチルさま、こちらはローズさまより――」
「ミチルさま、こちらはルーンさまからーー」
「はわわわわ」
ミチルがぼぉっとする暇もなく、女中たちがやんややんやとお菓子だの花だのを運んでくる!どうやら兄弟たちはマロンとのおしゃべり会に男子禁制と言ったのを律儀に守ってくれたらしい。
ピンク色の薔薇の花束、バラのジャム、バラのマカロン!ピンク祭りは送り主が誰かなんて聞かなくってもわかる。どう考えても女子二人で食べるサイズじゃないシンプルどっしりのリンゴのパイはおそらくフォルが取り寄せたものだし、プチサイズのケーキにチーズと甘いしょっぱいの合理的な盛り合わせはルーンだろう。
「こんなの食べられるわけ……」
あるんだけどさ?
「愛されてますわね♡」
「そんなおもしろいのかな?あたしが沢山食べるの」
「……ミチルさま」
「ミチル」
「ふ?」
あーん、に見せかけて、バク!ッとベルクが一口ずつ、ケーキやパイを摘んでいる。
「あたしのぶん、なくなっちゃう!」
マロンはニコニコと二人を見てるだけ。止めてくれそうに、ない。
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